タイ版 会計・税務・法務

第125回「外資企業における関連会社向け事務所賃貸」について

Q: 今般の外国人事業法の改正に伴い、関連会社向けに事務所等の賃貸が可能になったと聞きましたが、具体的に賃貸を行う際に注意をすること はあるでしょうか?

 

A: 今回の事業法の改正により、外資企業であっても関連会社向けに事務所等の賃貸サーピスを行うことができるようになったことは、工場等で進出した外資企業が関連する販売現地法人等に場所の賃貸サーピスを行うことができるようになった点において、投資環境の改善にあたると思います。一方で、そうした新しい事業を行う場合には、若干の注意点もありますので、以下、貸主となる場合における主だったものをあ げさせていただきたいと思います。

 

まず、法務上の留意点としては、豊記上の事業 目的、801等の優遇処.との関係、契約書の整備といった点が挙げられます

 

登記上の事業目的は設立時に広く業務を力バーしている場合もありますが、新しい事業を行われる際には、必す一度内容をこ確認ください。またBOI等の優遇処置を受けていたりした場合には、新しい事業を行うにあたっての条件等にも留意が必要です。なお、関連会社とはいえ、賃貸においては契約書をきちんと締結することが当然必要となります。

 

税務面では、税務豊録(VAT豊録)事業、源泉徴収税への対応があります。

多くの企業では会社設立時に税務登録が行われていると思いますが、その際に主要事業(売上内容)について登録する項目があります(税務登録証には、この内容の表記がありません)。新しい事業による売上が発生する場合には、新しい事業内容を追加する必要があります。また、賃貸収入からは5%の源泉徴収税が差し引かれて入 金されますので、源泉徴収票の管理・税の納付といった経理事務の対応も必要になってきます。

なお、これまでですと賃貸用不動産に関する土地家屋税に留意することが必要でしたが、 2020年からは固定資産税として全体に課税されることになります。また、賃貸料がそれなりの金額となる場合には、賃貸料率は地域の市場価格で決定することが求められます。

 

会計面では、これまで一つの「建物」として記帳してきたものについて、「建物(事業用)」と「建物(投資用)」に分割をして記帳を行うかの検討する必要があります。

非上場企業向けタイ会計基準によりますと、収益獲得を目的とした不動産は投資用不動産 (Investment Property)として、自社の事業に使用されることを目的とした不動産とは別表記とすることが求められています。ただし、賃貸対象となる部分が、建物等と 体で分離することができす、全体に占める割合が大きくない場合には、別表記とする必要は特にはありません。

 

その意味でも、賃貸契約害においては賃貸の対象となる場所について明確な表記をすることにこ留意ください。

今回の外国人事業法の緩和にともない、外資企業でも関連会社向けにできるサービスが増えますが、一方で具体的に実行する場合には、上述のように色々な面からの検討が必要になります。

 

なお、本文書は 般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合

には、多くの場合関連法規の検討や専門家の アドバイスが必要となります。そのため、本

文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤

情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

小出 達也 (Tatsuya Koide)

Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th

ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk

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