タイ版 会計・税務・法務

第126回 外国人事業法許可と資本金」についてです。

Q:弊社は、100%外国資本出資で製造業に従事しているのですが、今般、別途サービス関連業務を行うことになり、商務省に認可申請を行おうと考えています。その際、資本金の増資が必要と聞きましたが、それについて教えてください。

 

A:タイにおいては、一般的に外国人がサービス関連事業を行うことについては制限があること、およびその規制の方法がやや難解でかつ関連する法規の規定や解釈が時に変更されることから、その対応については注意が必要な項目の一つです。  まず、外国人がタイで事業を行う際には①当該事業が外国人事業法で規制されている事業に該当しないか。特に日本における事業分類とタイにおける解釈の差には十分に注意をして検討するとともに、外国人事業法における例外規定の利用が可能かどうかを検討、②BOIやJTEPA等の特別法による優遇処置により認可を得ることは可能か、③商務省で外国事業許可(Foreign Business License: FBL)という特別認可を取得する、といった形で事業を行うことについて検討をする必要があります。  また、①、②、③の検討においては、多くの場合資本金の額が検討の要素となることがあり、(加えて、ビザ・ワークパーミットの観点からも)“資本金をいくらにすれば良いか”という課題は事業拡大に際には常に問題となります。  規制されていることが明確な事業を行う場合には、②の方法、一般的にはBOI認可を取得できるか、③のFBL取得を行うかということになります。そうした認可に際しては通常は資本金要件が課せられており、新しい事業を行うにあたっては原則としてその新しい事業に必要な資本金を準備しなければいけないというのがタイにおける考え方です。つまり、以前の事業で必要な最低資本金がXバーツであり、新しい事業で要求される最低資本金がYバーツであると、原則としては、X+Yの合計が最低資本金として必要とされます。  この最低資本金要件を満たすためには、増資の検討が必要となるのですが、今回の場合にはすでに事業を行われていることから、「十分な留保利益があれば、その留保利益を新しい事業の資本金に充当することが可能」であり、増資を行うことが必ずしも必要ではありません。  BOIの新規事業申請においては、新規事業の計画を提出する際に、そうした過去の利益蓄積から充当するという選択肢があります。  また、商務省におけるFBL取得に関しても、同省は解釈通達において、以下のとおりコメントをしております。  - 留保利益(正確には使用予定のない留保利益;Unappropriated Retained Earnings)が新しい事業認可に必要な最低資本金の額を上回っていること。  - 留保利益は、認可に関係のない他の事業より稼得されたものであり、認可の対象となっている過去の事業から得たものではないこと(*これは、内資企業として事業を行っていた会社が、株主の変更により外資企業になる場合を想定したものだと考えられます)。  なお、留意点として、この留保利益利用の考え方はFBL取得の場合にのみ当てはまり、外国人事業法の例外規定(例;小売業実施における1億バーツ資本金)には、適用されません。
なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

小出 達也 (Tatsuya Koide)

Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th

ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk

2019年11月1日掲載

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