タイ企業動向

第61回 「新型コロナ感染タイ国内の記録⑨」

総感染者6500万人、死者150万人を超えた新型コロナウイルスは、今なお世界各地で猛威を振るっているもののタイにおいては5月以降、半年以上もコントロール下に置かれており、生活はほぼ平常に戻りつつある。国民の意識の高さもあるだろうが、抑制の最大のカギとなっているのが、国境での水際対策だ。空路で入国する人に対しては国籍を問わず14日間の隔離を義務付け、2回以上の陰性反応が出て初めて移動の自由を与えている。陸路国境については原則閉鎖をし、生活物資の移動などに限って例外的に交通を認めるものの、PCR検査を条件としている。こうした中、11月下旬にミャンマー国境北部チェンライ県で見つかった非正規ルートを使った入国は政府を震撼させた。入国者は計10人。隔離を受けずに国内を自由に移動していたのだ。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀 晋一)

第1報は11月27日、チェンマイ県の病院から保健当局に寄せられた。3日前にミャンマー東部シャン州タチレクからチェンライ県に入国したというタイ人女性(29)から、新型コロナの陽性反応が出たというのだ。さらに担当者が驚いたのは、正規の国境ではない非正規ルートを使って入国したということ。女性はチェンマイ県にタクシーで移動後、商業施設セントラル・フェスティバル・チェンマイを訪れ、映画鑑賞や買い物、食事をしていた。このため同施設は閉鎖され、大規模な消毒を実施。これをきっかけに同県内のホテルでは予約のキャンセルが相次ぐ事態となった。  それだけに止まらなかった。タチレクから非正規入国したタイ人は30日に2人、12月2日には6人と増え、最終的には計10人に上ることが発覚した。20歳代から30歳代の女性ばかりで、全員がタチレクにあるホテル「1G1 Hotel」内にある接客を伴う飲食店で働いていた。  最初に陽性反応があった女性はミャンマー滞在中から発熱と下痢の症状があったが、事実を申告せずに非正規ルートを越境した。2日に判明した6人の中には入国後、隔離を受けないまま空路を使ってバンコクに移動。さらに乗り継ぐなどして北部ピチット県や西部ラーチャブリー県などに向かった人たちもいた。  保健当局は全ての陽性患者と接触のあった人を追跡調査。計699人をリストアップしている。このうち濃厚接触者175人をPCR検査。数人から陽性反応が出て、全員を14日間の隔離下に置いた。感染のリスクが低いとされた500人強についても隔離への協力を取り付けた。  10人以外にも数十人規模の非正規入国者がいるとの情報もあり、さらに100人を超えるタイ人女性らが、なおタチレクに滞在しているもようだ。  ミャンマーでは新型コロナの感染が広がっている。8月末にはわずか700人台だった感染者は11月末時点で約9万人と激増している。ミャンマー政府は夜間外出禁止令を出して対応に当たっているが、対策が追いついていない。女性ら10人が働いていた施設は同禁止令によって営業ができなくなり、帰国したものと見られている。タイ北部ターク県では8000人を超える密入国のミャンマー人が逮捕されている。(数値などは12月3日時点。つづく)

2021年1月1日掲載

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