泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第99回 『コロナ禍の渡航』

今回も、コロナ禍の私個人の対応です。予期せぬ日本滞在は6カ月を超え、このタイに戻る試みは成功例とは言い難く、タイ入国試行錯誤の記録です。コロナ非常時なので、環境と余裕を見て日本にとどまる友人もおり、その方が賢明かも知れません。  反省は、自分の感染症について危機意識不足、というよりなかったことが第1ですが、第2は社会・政府にも新型コロナの影響と対応経験が少なく、試行錯誤的な行動が多かったと思います。第3に日本・タイ両国のコロナ抑え込みと経済アプローチの差、そしてタイの政治経済情勢が大きく影響しているようです。  ワークパミットはあっても、旅券の有効期限切り替えでビザも更新する必要に迫られ、その更新が、これまで9年間同様の書類で問題なかったのが、ノンイミグラント(非移民)・ビジネスでも教職者は新規則が加わり、非常時に手間・暇・カネ(約3カ月と50枚以上の書類、40万円以上の費用)をかける状況になりました。タイへの渡航は、本号執筆時点でも通常便はなく、一刻も早く状況が改善されることを願っています。

タイ入国許可証(COE)を求めて3回の「迷路」挑戦と振り返り

●2020年3月26日タイでCovid-19 非常事態宣言発令のとき日本に一時帰国、ちょうど大学は夏休みの時期で、4月のソンクラーン休日が終わるころには戻れると考えていました。
●ソンクラーン休暇は延期され、日本でも緊急事態宣言が発令され、5月になっても依然として飛行機はなく、6月になり、感染が抑えられている国同士の「トラベルバブル」が検討され始め、外交官・政府機関職員など、やっと日タイの行き来が開始されました。
●新学期も6月半ばに始まり、何とかしなければと、在京タイ王国大使館工業部に相談しました。日本からタイへの大使館斡旋特別便は上記が優先され、ビジネス関係者は8月以降とのことでした。
●2020年8月17日(月)は暑い日で、目黒駅から徒歩7分の大使館では、額(おでこ)照射の体温計は38℃を超えていると言われ、20分ぐらい門前で待ってからの入館になりました。ビザ更新で、大学で揃えてもらった書類27枚と自分の申請書などで、これまで9年間も同じだったので問題なく8月27日の大使館による特別便に乗れると信じていました。
●しかし今回は非常時で、同じノンイミグラント・ビジネスでも教職が加わり、①日本の居住地の警察本部から無犯罪証明書と②タイの大学から申請し、所轄教育委員会-MHESI(高等教育科学研究イノベーション省)-外務省経由で許可通知が大使館に連絡、それを基に大学から渡航希望日入りの招聘状をもらう手続きが必要になりました。
●助言いただいていた大使館工業部の方に相談し、9月4日の渡航日には何とかなると思い、保険契約、事前PCR予約や渡航後15泊の隔離ホテルの再予約などをして、COE書類の再申請をしました。居住地の警察本部からは、特急5日間で開封厳禁の無犯罪証明書を取得できましたが、タイMHESIの許可連絡は3週間経って来ました。甘い見通しと分かったのは、さらに外務省から大使館への許可通知に時間がかかり、9月4日はとうに過ぎ、迷路に迷い込んだ感じでしたが、その後再調整し、10月9日を渡航日と決め、大学に連絡し、招聘状原本がゆうパックで届いたのが9月下旬でした。
●タイがCovid-19抑制成功にもかかわらず、非常事態宣言を続ける状況は、長期滞在の私たちも規制する必要があると、覚悟せざるを得ませんでした。そんなわけで、6カ月を超える、かなり特殊な日本滞在になりました。
●最後に:こうして渡航は、辛うじて実現できましたが、大学関係者や各方面の方にお世話になりました。とりわけ大使館工業部の方にはずっとお世話になり、お礼申し上げます。

コロナ禍渡航の苦労例

●6月半ばから大使館に連絡し、3回も申請することになりました。平日は待機するのが多いのですが、連絡が来ると、一連の手続き・書類づくりも大変でした。
●ビザ要件として突然言われた開封厳禁の無犯罪証明書(写真)は、千葉警察本部が特急で交付してくれましたが、タイの手続き・政府機関許可は40日もかかりました(本文ご参照)。
●COE(入国許可証)申請は、Eメールで、旅券のビザコピー・航空券予約確認書・滞在中10万米ドル以上の英文医療保険証・15泊の隔離施設予約確認書など、7種類の事前申請が必要で、さらに、ウエブ登録などで許可を得る必要がありました。
●渡航前PCRと渡航可能の検査と証明をもらいに隣町のクリニックに行きました。医師の話では、これまで防疫服を着て200件ぐらい実施しているが、被検者が陽性の場合、医師も濃厚接触者になり、営業をしばらく停止になるようです。そこまでしてPCR検査をする医院は少ないようで、今回4万円以上かかりました。また渡航後の隔離施設15泊も条件になっています。このような手続きと渡航費用もばかになりません。

危機管理意識の重要性 (残念ながら、事後の反省点です)

感染症に対する無知で、まさか飛行機が飛ばなくなるとは夢にも思わず、次の点で苦労しました。
●仕事の継続:突然遠隔地で戻れなくなり、ズームやメールなどで対応しましたが、関係者の協力も重要でした。
●銀行のウエブ対応:家賃の振り込みなど、ネットバンキングなどの重要性を認識しました。
●日本の携帯電話:9年も留守にしているので、日本の携帯電話を廃止したばかりで、苦労しました。
●アパート継続と家賃:2カ月の事前賃料を払っていましたが、6カ月が経ってしまいました。
●予備費:10万米ドル以上の保険料と新型コロナ治療を含めた英文治療証明がいることになりました。また飛行機特別便などを含め、節約しても40万円以上の費用が掛かりました。

2020年12月1日掲載

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