泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第64回『新たなものづくり教育』

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、泰日工業大学で進める新たなものづくり教育をご紹介します。本プログラムは2015年後半の日タイ政府機関の合意や産学官協議の中で、特に日系企業から要望・ニーズが提起されたのが発端です。2016年は、在タイ日本国大使館主導の関係者会議を経て、提案をカリキュラムとして絞り込み、10社を超える企業の協力を得て、実践的な内容を試行しました。そして本年の2~3月に産官学企画委員会を持ち、6月から2019年3月までに本格カリキュラムとして実施・定着させる試みです。内容は、現在のタイ企業と日系企業のニーズに応えるもので、設計・開発と自動化とIoTによる工程カイゼンを担うエンジニア養成を狙いとし、日本国大使館、日本政府機関、日系企業の協力を得て実施します。大使館の言うオールジャパン協力が実行されつつあり、さらに日本政府経済産業省と日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)の支援を得て、10社の日系企業にも協力いただきます。

TNIものづくりエンジニアプログラムの概要

背景:「ものづくりエンジニアプログラム」は、 2015年後半からのタイと日本の産官学の協議の結果、新設されたものです。まず、日タイ政府機関でタイ産業の高度化と産業人材育成協力合意のもと、特に在タイ日本国大使館主導で諸会議が開かれ、日系企業やタイ工業連盟から課題が提起されました。

TNIでは、さらに自動車部品製造者協会(TAPMA)などからも意見を伺い、強く提案されたタイの設計・開発(D&D)や工場カイゼンニーズ等に応える本プログラムを企画しました。TNIとしても、「中進国の罠脱出の鍵」となる産業人材育成の観点から、その重要性と必要性を考慮して新設するものです。その中身はTNI 3年次生を対象にした①設計・開発、②工程カイゼン、③タイ国内インターンシップ、④4年次課目という一連の流れの一環であり、ここではアセアン・日本経済産業協力委員会(AMEICC)支援協力の①②を中心に紹介します。(下図ご参照)

主な内容:上述のようにタイの産業高度化の鍵を握る設計・開発および工場の自動化・カイゼンに携わるものづくりエンジニアの養成を目指します。「ものづくりエンジニアプログラム」は、特に日系企業やTAPMAのニーズに応える、日本のものづくりの精神・考え方・方法などを習う新設プログラムです。工学部5学科(自動車工学、生産工学、コンピュータ工学、物流・ロジスティックス工学、電気電子工学)の3年生を対象に4カ月の設計・開発と4カ月の自動化・IoTによる工程カイゼンに重点を置き、日系企業6~7社にも講義、ワークショップや事例見学などで協力いただきます。40数名の受講者には、講座受講後、タイ国内で2カ月企業インターンシップに参加し、さらに課題解決型学習(PBL)の4年生過程に参加します。

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