タカハシ社長の南国奮闘録

第83話 縁を大切に

袖振り合うも多生の縁とは、知らない人とたまたま道で袖が触れ合うようなちょっとした出会いも、前世からの因縁によって起きるという意味である。

恥ずかしながら私は長年、「多生」を「多少」と勘違いしていた。両者はまったく意味が異なる。多生の縁とは、何度も生死を繰り返している間に結ばれた縁のこと。つまり前世で同じ場所にいたり、言葉を交わしたりしたことのある人と、現世でも出会うということである。

このことを教えてくれたのは、海外に住むある日本人だ。この方とは、テクニアのアメリカ営業所があるウエストバージニアからアトランタへ向かう飛行機の中でたまたま隣に乗り合わせた。

アメリカのローカル便で日本人を見かけることはあっても、隣り合わせになり話をすることは今まで一度もなかったので、正直驚いた。仕事の話でも意気投合し、いろいろな共通点を感じた。もしかしたら、何か仕事を手伝ってもらえるかもしれない。いくらインターネットが発達しても、こうした奇跡の出会いには敵わない。これも袖振り合う縁なのかと思った。

今、北米進出に向けて準備を進めている。製造品目は日系企業向けの自動車部品や建築・農機などの精密機械加工部品が中心となる。現地に特に太いパイプがあるわけではないので、顧客探しから始めている。

ウエストバージニアのチャールストンを起点に北はシカゴ、デトロイト、西はシンシナティ、ヒューストン、ケンタッキー、南はサウスキャロライナあたりまで、時に1日1000キロ以上運転して地道な努力を続けている。顧客の要望にマッチングさせて、ローカル生産の供給ができるよう工場設置を目標に意欲を燃やしているところである。

営業を続ける中で、間違いなくものづくりの需要があることを感じる。そこで大切になるのは結局、人との縁だ。どんなに素晴らしい技術をもち、どんなに最新の機械を用いても、縁がなければ仕事にはならない。

人との縁を大切にして、正しい方向のビジネスプランを考え、行動することが成功への道筋だ。

思えばタイでのスタートも、素敵な縁に恵まれたことで良い方向へ導かれた。もちろん、日頃からの良い行いや、それを求めていく心が大切ではあるが、タイで出会った仲間たちとは前世でなんらかの縁があったのかもしれないと思うと感慨深い。

タイに進出する前に他の国も検討していたが 最終的にタイに惹かれ、タイが一番しっくり来た理由もやはり縁だった。

テクニアのグループ会社であるAsia Businesses Consulting (進出支援と会計監査を行う会社)を作り上げ、成長させた男がいる。彼との出会いは、異業種勉強会に参加した際、多くの人の中で何か気になって声をかけたのがきっかけだった。目に見えない引き寄せの力を感じた。その後、彼が進出支援の仕事を手伝ってくれるようになり、今では彼を中心とする縁で会計会社を経営している。

この会社はとても優秀なスタッフに恵まれ、真面目かつ几帳面に日本品質を保っており、顧客からの信頼も厚い。この素晴らしい会社こそ、私の引き寄せた縁と、彼の引き寄せた縁が作り上げた賜物である。

これからも今頂いているご縁を大切に、まっすぐ正しく生きていこうと思う。

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