泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第80回 『TNIが提供する日系企業への研究開発協力』 

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。TNIでは、今年新設の国際プログラムなどを含め24課程で学部・大学院生を育成するほか、人口知能システム統合センターなどの4つの研究開発拠点、18の研究室を中心に産学協力を実施しています。本号では日系企業の皆様に提案したいTNIの研究開発協力・サービスをご紹介します。なお、日系企業が利用できる事業として、TNIの親機関であるTPA(泰日経済技術振興協会)との共同開発やサービスも紹介します。本稿は、Jセミナーでのチャートリー工学部講師の発表を要約(一部加筆)したものです。同氏は、東京工業大学博士号取得後、日本の大手電機会社で10年間、開発エンジニアをした後、TNIで電気工学の講師をしています。

  1. 研究開発と産業サービス
  • TNIのタイ・日系企業との協力は5つ:①インターンシップ(協同教育、企業実習)、②就職(キャリアキャンパス、ジョブフェア)、③奨学金・機材協力、④Jセミナー(タイ社会状況、中核人材育成)、⑤研究・開発があるが、本日は研究開発・学術サービスをご紹介したい。
  • なお、これまでは、製造業中心にタイの課題(図参照)に取り組んできた。人材養成では勉強だけではなく実際に取り組んでみることに力点を置いている。また研究開発支援では、主としてタイ企業に協力してきているが、スタートアップ事業では、日系企業とも連携を取っていきたい。
  1. 学術サービス
  • 表は、産学協力例である。
  • 工程改善等の開発費はタイ政府機関補助金を受けているため、負担が軽減される。
  • タイ政府の優遇措置(3倍の経費として計上することができる)と産官学連携の支援があり、TNIは2016年から実施している。
  1. タイ政府機関とのプロジェット(*数字は2018年度)
  • 産業自動化とエレクトロニクスにおける中小企業の改善を17工場に実施。工業省から開発補助金3百万バーツを活用。
  • 健康安全環境(HSE)目的の産業用IoTによる品質管理を開発。タイ研究財団から開発補助金2百万バーツを活用。
  • 生産ライン用インテリジェントマニピュレータを備えたタイ製標準化多機能産業選択的ロボットアーム(SCARA、図)を開発。タイ研究財団から補助金2百万バーツを活用。
  1. TPA(泰日経済技術振興協会)-TNI5カ年共同計画CoECenter of Excellence、研究開発拠点)

TPAは、主として社会人教育を、TNIは学生教育を担当しているが、2017年のTNI10周年を機に共同してタイの次の主要課題に取り組む戦略計画である、TPA-TNIクラスター5カ年計画を発表した。

1) Eラーニングプラットフォームムックの導入と推進(2019後半): TNIでは従来の工業経営学(IM)コースをManagement of Innovative Manufacturing Technologyとして学位を学外でも取れるように実施、また学内で基礎科目の補講・拡充を狙い、微積分や英語・日本語学習をできるようにする。

2 COE (研究開発拠点) の設置と推進

  • タイ政府のタイランド0の持続可能な経済成長のためのデジタル経済のロードマップに対応し、研究とビジネス(R&B)のコンセプトの下で革新的な製品を開発する目的。
  • 学術サービス・コンサルティング研修面でスタートアップ企業、公共および産業部門にサービスを提供する。
  • 分野は人工知能、機械学習、ロボティクス、エキスパートシステム、ビッグデータ解析、組み込みシステムと電子知能、通信ネットワーク、クラウド・コンピューティングとストレージ、知能コンピュータ支援教育(ICAI)。

TQMTPM:ものづくり研究センターを中心にTPS (トヨタ生産システム) 主体に2014年後半から外部サービスとして、木金の8日間/月コースを年間7~8回実施、繊維工場のIoTやモーター整備などの協力もしている。これらは日系企業のタイ人従業員の育成に活用できる。TNIのものづくり研究センターで実施しているが、窓口はTPAで、タイ語資料だが、http://www.tpa.or.th/training/courses/2019-TPS.php をご参照。

人工知能システム統合センター:2017年以来年間20社ぐらいに協力、7人の研究員が企業サービス・コンサルを実施している。CoE-ISIの開発プロジェクトの例は、右図をご参照。

データサイエンスとアナリティクス:2018年後半からビッグデータを使い、専門家や各社で利用可能なプラットフォームやモジュールを開発。例えばたくさんの研究テーマを商業的に有望な研究テーマに絞り込むような準備が可能になる。

(次号へ続く)

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