タカハシ社長の南国奮闘録

第89話 ボールが繋ぐ縁

ゴルフをあまり積極的にするほうではなかった。ゴルフ歴は30年だが、バブル期に少しかじって、下積み時代に赴任先のイギリスで社内コンペに参加する程度だった。帰国して3年で社長に就任し、練習時間をつくる余裕もなく、上達しないまま、いつしか勝ち負けもスコアも気にしない、親しい友達との余暇を過ごすだけのゴルフを楽しむようになっていた。

だから、仕事関係と方々とのコミュニケーションをはかるためにもコンペなどにはできる限り出たほうが良いと分かっていながらも、中途半端な自分のゴルフに自信がなく、お客様や初対面の方とまわることに少し申し訳なさを感じるようになっていた。

しかし、その価値観を変える出来事があった。それは、テクニアタイ工場を大改革してくれている社長の眞嶋大先輩のセッティングのおかげだ。

ソンクランの休日に、ご縁のある方々と立て続けにゴルフをする機会に恵まれた。最終日はKYOSEKI TOOLSの八木先輩、眞嶋先輩、来年80歳になる父と一緒にまわった。シングルプレイヤーでゴルフをこよなく愛する父の背中はたくましかった。クラブ競技に出場するだけあって腕前も抜群で、今でもドライバーがラフをとらえることはない。17年前に来タイした時にはゴルフが上手だと噂になるほどだったと、ある先輩が教えてくれた。父はルールやエチケットにも厳しく、今ではマナーとして当たり前になっているが、携帯電話が一般化してきた頃、クラブ支配人と協議を重ねプレー中の携帯の使用を禁止にしたほどだ。

八木先輩は物腰が柔らかく、相手を尊重するプレースタイル。ゴルフを共に楽しみ、大人の会話で周囲を笑顔で包み込みつつ、ロングパットを次々に沈めてみせる凄技で皆を圧倒させた。

そして眞嶋先輩はこの日、ベストスコアをマーク。パーセーブも複数回。そんな中
でも周りへの気配りは欠かさず、謙遜の中にも隠しきれない喜びが周りを幸せにした。

大先輩たちとのゴルフはとても紳士的で、思いやりの声がけ、会話と笑顔に満ちた素敵な社交場だった。なおかつ健康的で、自身のスコアやプレーに奮闘し、向上心をなくさない姿はとても魅力的だった。おかげで私も、その日は自ずとプレーに集中できて、ここ近年にないスコアで終えることができた。

スポーツを通じて、お互いの魅力に引き寄せられる。それこそボールが繋ぐ縁なのだと改めて感じた。私は今まで大好きなサッカーを通じて縁を結んできたが、どのスポーツにも、一緒にするからこそ分かり合えるものがあると分かった。これからはゴルフで繋がる縁も大切にしていくことを決めた。

また、仕事のあり方がプレーに表れることにも気がついた。周りに気配りをして人を幸せにするプレー、ルールやマナーを忠実に守り慎重に進めるプレー、どんな結果も分かち合い、どんな人とでも楽しむプレー。私は仕事でもゴルフでも、人に恩返しができるプレーをしたいと思う。

人柄に触れ、より親密になれるこの素晴らしいスポーツを、私はこれからもライフスタイルに取り入れて、情熱を注いでいく。そして、タイの地に渡り、同じ境遇の中で同じ趣味を持つ仲間たちと、楽しさや笑い、興奮などあらゆる事を共有していきたい。

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