タカハシ社長の南国奮闘録

第110話 伝えることの大切さ

2021年、以前にもまして現場に入ることが増えた。現場がとても身近に、愛おしく思え、自然と距離が縮まっている感触がある。そう感じるようになったのは「思いを伝える」という取り組みに力を注いでからだ。大袈裟かもしれないが、心通わす社員、つまり魂が共鳴し合う社員とタッグを組むことの大切さに気付いたのだ。心を通わせ合えることができない社員は3年でいなくなる。  この取り組みを始めてから、「社長の思いを伝えること」の大切さをより感じるようになった。始業前に行う体操は皆の中心で行い、一人ひとりとの挨拶、会話を大切にし、現場に寄り添いながら一日を過ごすようにしている。品証の現場、営業の現場、経理の現場、総務の現場など、さまざまな現場がある。  私は細かな仕事内容までは把握していなくても、そこで働く社員に寄り添うことで、誰よりも身近な存在でありたい。伝えることも大切だが、コミュニケーションは一方的では成立しない。気持ちを伝えたいと思われる私でないと、社員の本音を聞き出せず、風通しの良い職場を作れないのだ。  そして、そこから得た現場の意見は戦略を考える上でとても重要だ。現場の生の声によって作り上げ、一つ一つ戦術に落とし込んでいく。事務所にいて指示をしているだけでは、どんなに素晴らしい戦略も絵に描いた餅になりかねない。どんなに優秀な社員が集まっても、どんなに優良な企業であっても、プロジェクトが途中で頓挫する例はいくらでもある。現場で何が起きているのかを理解せずに責任者を入れ替えているのではないだろうか。それでは良い効果は期待できないだろう。  一方、中小企業でも現場主義を貫き、部下の魂を大切にしている会社は、どんな苦境下でも伸び続けている。結局、動くのは人なのだ。働くスタッフは皆「心」を持った人間である。これはタイでもどこの国でも同じ、万国共通である。心を震わせる部分は多少違うかもしれないが、心が重なり合う部分を探し、共鳴できるように一日一日を見つめ直し頑張る。  誰もが入社するときは、会社のために頑張りたいと思っている。しかし、その人が腐ってしまったら、それは会社の責任だ。最悪なのは、社長や幹部が「あいつはダメだ! こいつのここが悪い」と部下の愚痴から会議を始めることだ。自分が無能で部下の一人も育てられませんと赤恥を晒すも同然だ。それでは人は育たない。若い芽を摘み取っているのは上に立つ者なのである。  そういう現場に出くわしたら、私は本人に叱咤激励を飛ばす。私は厳しく言うことを恐れない。嫌われることを恐れてしまうのは、自分に嫌う気持ちがあるからだ。それがなければ相手は愛情として捉える。  私は優れた経営者ではない。優れた戦略が作れるわけでもない。私にできることは人一倍テクニアのことを考え 人一倍テクニアの社員を大切に思うことだけだ。でもその思いが伝わらなければ、社員からしたら思っていないも同然である。とてももったいない事だ。だから私は思いを伝えることにした。伝わるまで伝え続ける。  言霊は人の心を震わせ、一所懸命働く原動力となる。もし相手の心が震えず、共鳴できていないとしたら、伝え方がダメなのではない。それは私の伝える量が足りないのだ。だからこうして読んでくださる方々にも、可能な限り想いを伝えていきたい。皆様の心に少しでも私の気持ちが響くように。

2021年3月1日掲載

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