タカハシ社長の南国奮闘録

第118話 テクニアカレッジ再開

テクニアカレッジとは テクニアの熟練技能者が指導者となり座学及び汎用旋盤など実機による実習形式で基礎技能を習得し、現場力を高める技能伝承塾だ。「これから現場で活躍していく職人さん達に、真のものづくりの楽しさを肌で感じてもらいたい」との想いで、2004年に開校した。最大6人までの少人数制の講座だったが、実績がNHKで放映されてからは毎月生徒を受け入れることができ、卒業生が600人を超えるまでとなった。

しかしここ数年、コロナ禍ということもあり受講生の受け入れを断念していたが、2022年よりウィズコロナという概念から対策を徹底することで活動を再開し、2022年3月に開催することができた。受講者は工具商社の8年のキャリアを持つ営業マンと、新たにカレッジの事務局を担う女性2名の計3名だ。

まずは座学3日間で図面、刃物、測定について勉強する。実際の図面を見たり、測定具やドリル工具を触りながら、ものづくりの基礎を学ぶ。そして残り4日で実習を行う。旋盤やフライス盤を使い図面を見ながら作品の制作をする。実際に機械に触ることによって、座学で学んだことを腹に落とし込むことができる。作品が形になっていくにつれて、ものづくりにどんどん引き込まれていく姿が見受けられ笑顔があふれていた。その笑顔が見れたことで、改めて再開できてよかったと嬉しく思った。

しかし、課題も見つかった。この「基礎コース」は技能検定二級レベルに値し、入社1~3年の社員が対象だった。ある程度現場で学び知識がある前提で、一人でマシニングセンターやNC旋盤を扱う段取り者を目指すために勉強する、いわゆる技能者を育成するために作られたプログラムだ。なので、全くの素人にはハードルが高く、中堅営業マンとっては既知の内容が多かったのだ。

もっと多くの人に、必要なレベルの必要な技能を伝承しなくてはならない。再開を機にコース内容の見直しを検討することにした。今考えている新しいコースは、初級コース・中級コース・工具商社コースだ。

素人でも専門用語から学べる初級コースは、製造業の入口として新入社員、事務職員など、はじめて製造業へ関わる人にとって必要な内容にしていきたい。中級コースは中堅社員に向けた内容で、基礎コースより難易度の高い加工を学び、加工時間の計算式から見積りを算出できる力を身につけられるコースを考えている。そして、工具商社コースでは、営業先で本当に必要なものを提案する力を身につけるために、工具についての基礎を学び、実際にその工具で実践しながら学べるような内容を練っている。さらに、もう一つ新たな取り組みとして、講師を育て日本全国で技能伝承の輪の広がりを実現する講師育成コースを設置することにした。

今まで多くの生徒にものづくりの楽しさを伝えてきたが、それと同じだけ大切なことは、ものづくりの楽しさを広め、技能を伝承する仲間を増やしていくことだ。伝える人が居なければ、教わる場所が無くなってしまい日本のものづくりは衰退していく。以前、「ものづくりは人づくり」と先輩諸氏から教授いただいたがまさにその通りだと思う。技能伝承塾テクニアカレッジが少しでも世の中のお役に立てるように、より良い内容にしてより多くの技能者を育てていきたい。

2022年5月1日掲載

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