タイ版 会計・税務・法務

【第74回】 従業員が取得する傷病休暇への対応について

Q:弊社はタイで今年から事業を開始しているのですが、タイ人従業員が勤務日の朝になって急に傷病休暇の申請をしてくることがしばしばあり、どう対応するべきか困っているのですが…。

A:タイにおいて傷病休暇(Sick Leaveとも)は労働者の権利として認められており(※1)、傷病休暇申請については、原則として雇用者としては受け入れるしかない、というのが現状です。

 

なお、傷病休暇の取得は『実際に病気であることに基づく』必要がありますので、理論上はもし雇用者が労働者が仮病を使っていることを立証できるのであれば、この申請を拒否できる余地があるということになりますが、実務上は極めて難しいと言わざるを得ません。

 

Q:時々、複数日に渡る傷病休暇が発生する場合もあります。

A:法律上、3労働日以上の傷病休暇を労働者が取得した場合、雇用者は医師の診断書の提示を求めることができる旨示されています(※2)ので、これを就業規則に織り込み、虚偽の傷病休暇の取得を抑制するのも一策です。ただし前段の内容と同様、実際の傷病に基づく申請である場合は拒むことはできません。

 

Q:傷病休暇に対しても、給与を払う必要があるのでしょうか。

A:年間30日以内の傷病休暇については、通常の労働日と同額の賃金を支払う必要があるとされています(※3)

 

Q:日本であれば傷病休暇の代わりに有給休暇を使うように指導する、といったこともあり得るかと思うのですが。また、例えば契約書を作り変えて、有給休暇が残っている場合の傷病休暇申請については、有給休暇の日数を優先的に充当するものとする、と記載することはできますか。

A:重ねてタイにおいて傷病休暇は法律上の労働者の権利ですので、そのように例えば労働者との契約に記載し、これに合意した場合であっても、その規定は無効になります。

 

Q:傷病休暇の取得を抑制する方法はないのでしょうか。

A:実務上極めて難しいのが事実です。一方で、例えばその取得状況を記録しておき、賞与支給額算定のための査定時における考慮事項とする、といったことはあり得るかと思われます。

(※1)労働者保護法第32条前段

(※2)労働者保護法第32条後段

(※3)労働者保護法第57条第1項

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

 

2015年7月

 

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