タイ版 会計・税務・法務

【第99回】 外国人事業法の自由化について

Q:外国人事業法において、新しく事業ライセンスが不要になった業種があると聞いたのですが、どのようなものでしょうか?

A:現在の政権下において、様々な法改正や自由化が進められていますが、その一環として、今般以下のような業種(サービス業務)については、外国人事業許可を不必要とする通達が出されました。

– 金融関係事業(Financial Institution Business Act:金融機関事業法で規定されているもの)
– 資産運用会社(Asset Management Company Law:資産運用会社法で規定されているもの)
– 駐在員事務所
– 地域事務所
– 国、または国有企業と取引をするもの
このうち、最初の二つは他の法律で規定されていることもあって、二重の規制を防ぐ意味から、自由化が図られたものかと思われますが、①駐在員事務所、②地域事務所、③国または国有企業取引、の自由化については、大きな意味を持つと思われます。

まず①の駐在員事務所については、売り上げを計上できない等、色々と制約の多い事業形態である一方で、認可に時間がかかったり、活動を記録しておく必要があったりと、タイにおいて必ずしも“簡便な”進出形態とは言えないところがありました。日本において駐在員事務所は法務局への登記は必要なく、(したがって設立の審査もなく)、基本的には税務署や労基署への登記のみで活動が可能となります。もっとも、今回のタイにおける自由化措置において、このような法人登記が不要とされるような形は想定されておらず、引き続き登記自体は必要になるかと思われ、手続きの詳細が公表されるのが待たれますが、認可長期化の要因となっていた審査がなくなることは、駐在員事務所設立を用意にするものであり、タイへの外資進出に資するものかと考えます。

また、②の地域事務所(Regional Office)制度というのは、BOIにおけるRegional Head Quarter制度とは異なって、商務省認可の外国法人(タイ法人ではありません)で、駐在員事務所と同じく収入を計上することはできないものの、駐在員事務所と違って地域内の拠点に、調整等、経営指導・管理、人材開発、開発業務、 市場調査、等のサービスを行うことができます。この地域事務所についても、認可審査が必要ないということであれば、ワークパーミット取得のメリット等から、利用を検討する余地がより出てくるのではないかと思われます。

また、③の国・国有企業へのサービス提供という点に関しては、タイのインフラ整備に関して、他の法律や入札要件にはよるとは思われますが、国・国有企業へのメンテナンスサービスを提供するような場合、日系企業が参入しやすくなるのではないかと思われます。詳細が明確になるのが待たれますが、いずれにせよ、自由化の進展はよろこばしいことかと存じます。

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

 

著者プロフィール

小出 達也 (Tatsuya Koide)

Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th

ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk 

 

2017年8月

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