タカハシ社長の南国奮闘録

第54話 日本に来るタイ人が増えてまーす!

円安や中国の景気減速に伴い、製造業の低迷が長引いている。景気の先行きに対する不安に加え、現状の円安では日本国内生産のほうがメリットがあるということで、海外生産に切り替えるタイミングを見送る企業も少なくない。そうした影響もあり、タイ国内の仕事が以前より3割近く落ち込んでいるようだ。撤退 廃業するものづくり企業も増えてきている。

その一方、バーツ高を利用して日本を訪れるタイ人が増えている。留学生は10年前の4倍に達しており、その多くはタイに工場を持つ日系企業への就職を希望しているようだ。学生たちは留学に挑むだけあってなかなか素頭が良く、利発なタイプが多い。日本語を勉強しているので言葉の心配も少ない。そして何より、日本の文化、日本人の考え方を肌で感じてくれていることが素晴らしい。

弊社でも今更ながら、タイ人を日本で雇用して育てていこうと動き出した。これまでもタイ人スタッフを日本に送り込む構想はあったが、タイ工場での人手不足に悩み、実行するだけの余裕はなかった。本当に戻ってくるのか、という不安もあった。

そんなこんなで10年が過ぎてしまったが、ようやく重い腰をあげることができた。ただ、ここで一つ問題点がある。それは、現在いるスタッフと、育てた留学生の相性が良いかどうかである。その問題を解消するには、最初にタイ人のマネジャーが面接して馴染ませておく必要があるだろう。

こうした展開のきっかけは、社内の製造現場で人の移動が起きたことだった。その対処策として始めたことが、今では次の発展を遂げようとしている。

タイ人の気質も時代、世代で大きく変化していく。すでにテレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電が行き渡り、働くことが当たり前の時代である。欲しいものが溢れ、これからは各自が家と車を持つ時代に突入する。学習塾が流行り、学力も向上し、外の世界を知り、どんどん裕福になっていくだろう。

タイの本当の成長はこれからだ。この地に踏みとどまって、これから来る大成長時代に備えていきたいものである。今後も為替の変動が経済に大きな影響を及ぼし、商人を苦しめることに変わりはない。しかしそれは同時に、知恵を生み出すことにもなり、結果的に大きなチャンスを生み出すことに繋がるだろう。

高橋 弘茂
名古屋市中川区の精密加工部品メーカー『TEKNIA』の4代目。1969年愛知県生まれ。1989年に同社の前身『高橋兄弟鉄工所』に見習い入社。現場経験を積んだ後、『Yamazaki machinery UK ltd』などを経て2001年8月『タカハシテクニア』代表取締役就任。現在はVITPROJECT (THAILAND) アドバイザーを勤めるほか、マネジ個性学コンサルタント(セミナー開催)なども手掛ける。
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