タカハシ社長の南国奮闘録
第78話 ひとつの目的のために
「ひとりはみんなのために みんなはひとつの目的(ミッション)のために」
テクニアの目指すべき社風をテーマとして掲げた。個々を大切にするという従来のやり方から一転し、今後は連携強化に取り組んでいきたい。方針を転換した理由は、個を大切にする自由度が、逆に不自由を生んでいたことに気づいたからだ。ルールが定まらない中で個を尊重することは、わがままを生んでしまうし、目的が共有されずに任せることは放任につながる。
皆が幸せになる目的をひとつに統一することで、同じ方向性を持つ集団になる。その方向性、志を掲げるのがトップの役割であり、使命でもある。
生まれ育った環境や人生観、生き様そのものが目的に対する姿勢となり、想いの深さや本気度によって、目に見えたり見えなかったりする。
リーマンショックで会社の業績が落ち込んだのは、トップである私の責任だった。だから同じ不況が来ても二度とぐらつかないよう、この数年かけて事業軸を育ててきた。その事業を強固なものにするべく、経営軸に拍車をかけられなければ本当に軌道に乗ったとは言えない。皆の思いを一つにしないと新しい壁は乗り越えられないのだ。
自分がもっと成長し、個へのこだわりから連携と調和に心の中を入れ替えなければ、掲げただけのスローガンとなってしまう。
人はスローガンに導かれるのではなく、リーダーの背中を見ている。会社は社長の器以上にはならないと言われるゆえんだ。とても困難な道のりではあるが、懸命に取り組めば必ず乗り越えられると信じている。
このテーマを社内に落とし込むための経営指針作成にあたり、今まで以上に想いのすり合わせや具体的な作戦にまで首を突っ込んで討議を重ねた。今の自分にできる最大限の取り組みだった。
幸い、それが功を奏し、過日行われた経営指針発表会は盛況に終わった。さらなる高みへ一歩前進したような気持ちになった。あとは実行に移して結果を待つだけである。正しい道筋は正しい結果につながる。
タイ工場も出店より12年が経ち、現地スタッフと話し合いを重ねて「お客様からの高い要求にお応えすること」をミッションとして、戦力(教育・改善・設備・採用)の増強をはかり新たな挑戦を開始する。
当たり前のことではあるが、トップが誰よりも本気で取り組まねば信頼関係は生まれず、前線で戦う人たちの心を一つにまとめることはできない。だからこそ、今年は「社員の人間的成長と物心共に幸せの実現」のために邁進している。
リーマンショックから10年、社長就任から17年目の今、新生テクニアに生まれ変わるため、各々が皆を思い、皆が同じ目的を目指して進んでいくよう全力で働きかけていくと誓った。