泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第35回『TNI第4期卒業生の就職企業とタイ学生の採用の仕方』
タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、昨年卒業した第4期(2013教育年度修了)卒業生の就職企業、日本での就職、タイ学生の採用の仕方などについてご紹介します。
就職企業の業種
- TNI卒業生就職企業の業種は、図1にあるように、製造業131人(6%)、情報・通信業(ITC)105人(24.08%)、商業63人(14.44%)の順ですが、製造業は前年の44%から31%になり、ITCと商業の比率はやや高まっています。前号で紹介したように、インフォ・ビズ誌調査のタイ一般大学生の関心もやや同様の傾向です。なおその他(自営業)50人(11.47%)は、家庭教師、デザインなどフリーランス11人、米国等への遊学(Work & Travel)13人、個人事業26人の内訳です。
- 製造業の内訳(図2)では自動車76人(02%)が圧倒的で、工学部自動車工学(AE)専攻者が多数就職しています。他は電機・電子、素材、機械の順です。
大・中小企業の就職比率
- 図3に見られるように、大企業50%、中小企業46%で、あとは公営機関、政府機関に就職しています。
- このようにTNI生は、必ずしも大企業にこだわらないように見えます。
- 別途、経営学部で学生等400人に聞いた調査(2014年8月号)では、TNI生は、会社の知名度、社会的評価はある程度重視する一方、給与・福利よりも会社の方針および仕事の内容に関心があるとの結果でした。
TNI奨学金受給者の就職
- バンコク日本人商工会議所を始め、日系企業等にご協力いただいているTNI奨学金受給者は、卒業生49人で、就職36人(73%)、進学等13人(27%)になります。
この就職者36人の内訳(図4)は、日系企業就職18人(50%)、日系取引企業3人(8%)、非日系企業15人(42%)で、一方、前年度卒業生は全員就職し、日系企業53%、日系取引企業10%で、比率 はほぼ前年同様と言えます。前号で紹介した全学生の比率と同様、非日系企業就職は日系企業が少ない情報技術学部専攻者が多いようです。また今年度は進学者が目立ちますが、彼らは大学院終了後、日系企業に就職する希望が多いようです。
日本企業のTNI生日本直接雇用
数年来、アジアグローバル人材としてTNI生を日本企業が直接採用する動きが見られます。まだ年間10名前後ですが、日本企業の若年層の雇用問題を含め、広く有用人材を求める募集に応じ、日本でTNI生が就職しています(写真参照)。
TNI卒業後、東京のABK学館日本語学校で日本語を続けて勉強したTNI生25人について、佃吉一理事長・校長(右写真)は「TNI生は、ガッツある中国人と比べ、ややのんびりしているが、明るく自由な発想に富んでいる」と評価、9人の大学院など進学、8人の日本企業に就職などを続けてフォローしてくれています。
TNI生の採用の仕方
日系企業の方から、どうしたらTNI生を採用できるか、とよく聞かれます。確かに、タイ一般大学では就職に力を入れていないところが多く、これまでは就職斡旋機関などの紹介に頼る企業が多かったようです。
TNIでは、インターンシップ・就職サポートセンターを設け、学生と会社の便宜を図るようにしています。以下の4つの手段を活用いただければと思っています。
- ジョブフェア:毎年1月に100社以上の企業に集まっていただき、会社のブースを設けていただいて、就職の案内をしていただいています。
- ジョブドットコム:日系企業専用就職・求職ウエブサイトを設置し、企業と学生の出会いを促進しています。JOBTNI.comをご参照ください。
- 就職センターに直接申し込む:求人票や求人職務内容を書いて、以下に申し込んでください。就職センターでは、時期によっては会社説明会を開く一方、これらを学内やFACEBOOKで紹介させていただきます。
Tel:02-763-2750/2770 Fax:02-763-2754 Email:coopedu@tni.ac.th
- インターンシップ:学部学科により4カ月(=16週間)と2カ月(=8週間)があり、学生の専門分野に合った現場でインターンシップを実施しています。日本企業の実際のモノづくり、企業文化、日本文化を学び、日本ファンになる学生が多く、そのまま就職につながることもあります。
なお、TNIでは日本の広義のモノづくりに関心を持つ優秀な学生をタイ全土から広く募集し、産業界のグローバルニーズに合致した人材に育てるため、全学部生の5%に当たる年間200人の意欲を持った優秀な学生に奨学金を提供しており、この奨学金ご提供企業を優先して上記手段を利用していただいています。(下記のTNI奨学金募集案内をご参照)。ご協力いただければ幸いです。
筆者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)
泰日工業大学(TNI) 学長顧問
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