新たな自動化の波 協働ロボットとは何か

産業用ロボットの父と言われるアメリカ人エンジニア、ジョセフ・エンゲルバーガーとジョージ・デボルによって、1960年代に世界初の産業用ロボット「ユニメート」が誕生してから約半世紀。いまや産業用ロボットはものづくりに欠かせない存在として、人に代わって危険な作業や重量物の搬送などを担い、世界の産業構造を支えている。その中で近年、人と同じ空間で、人と隣り合わせになって作業することができる協働ロボットに注目が集まっている。今回は、ロボットの世界に新たな地平を切り開く協働ロボットを特集する。

(文・長沢正博)

通常、産業用ロボットは万が一の事故が起こらないよう、国際標準化機構(ISO)などの規格によって製造から導入に至るまでさまざまなルールが定められている。その中の一つにあげられるのが、作業現場でロボットが動く区域に人が入らないよう隔離するための安全柵の設置。そもそも稼働中は可動範囲に人を近づけないことで、安全を確保するものだ。日本では1981年に産業用ロボットによる死亡事故が発生し、1983年に規制強化。2013年に緩和されるまで、厚生労働省の労働安全衛生規則によって、モーターの定格出力が80ワットを超える産業用ロボットは柵や囲いで人と分離させなければならなかった。協働ロボットはその安全柵を設ける必要がないのが大きな特徴の一つだ。

では、協働ロボットはなぜ稼働中も安全柵を設ける必要がないのか。それにはいくつかの条件をクリアして、安全な環境を整える必要がある。まず、ISO 10218-1, -2:2011の安全要求事項に準拠して設計、製造、設置されていること。また、協働運転中であることを示す視覚表示を備えており、ISO 10218-1:2011で定められた4つの要求事項の内(※)、1つ以上に適用。その上で、作業現場で労働者に危険が及ばないようにメーカー側、ユーザー側でリスクアセスメントに基づいた措置を適切に実施し、なおかつ万が一労働者に当たった時も怪我をしないよう、可動部などの力、運動エネルギーがISO/TS 15066で規定された値以下になること。これらをクリアして初めて、協働ロボットとして人と同じ空間で稼働できるようになる。言い換えれば、これらの要件に適合する機能を備えたロボットが協働ロボットと言える。ただ、協働ロボットは誕生して間もなく、ルール作りは途上にある。ISO/TS 15066自体、2016年に作られた。日本では義務となっているが、その他の国ではまた異なる。ただ今後、各国でも義務付けられる可能性が高い。

先進国を中心に進む労働力不足を解決する切り札の一つとして、協働ロボットは急速に市場が拡大している。2005年にデンマークの学生ら3名によって設立されたユニバーサルロボットは、協働ロボットのガイドラインがまだ整備されていなかった当時から製品化を進め、現在では協働ロボットの世界シェア約6割を占める最大手。東南アジア、オセアニアを管轄するシンガポール法人のサカリGMは「協働ロボットの歴史は浅く、情報はまだ限られていますが、Bis Reseachの調査によれば2017年の協働ロボットの市場規模は推定2億7,700万米ドルですが、2021年には20億米ドルまで拡大すると見込まれています。2015年の市場規模が約1億米ドルだったことから考えても、年間63%増の勢いで市場は成長していくと見られています。弊社の2017年の売上は1億7,000万米ドルですが、2018年の売上は前年比40%増を見込んでいます。2017年までに出荷された産業用ロボット全体の中で、協働ロボットが占める割合はわずか3%と言われています。しかし、2025年には34%まで拡大していくと予測されています。協働ロボットの成長速度は産業用ロボット全体の成長速度をはるかに上回ります」と語る。

これほどのスピードで導入が進む理由はどこにあるのか。同シンガポール法人の白石悟朗氏は「私どもが分析したものづくりに携わる企業の共通課題の一つに、多品種小ロットがあります。今は変化のスピードが速く、いつ製品が入れ替わるか分からない。そしてサイクルが短かったり、ロットが少なかったりする中で、アウトプットする製品には高いクオリティーが求められる。工場に大きな投資をしてそれだけの設備を抱えられるかというと、それもまた難しい。タイは人材不足や人件費の高騰といった問題も抱えています。自動化が避けては通れない道の中で、協働ロボットは色々な変化にすぐに対応することができます」と指摘する。

安全柵を設ける必要がないので、工場のレイアウト作成に融通が利くようになる。「お客様がよくおっしゃるのが、産業用ロボットは安全柵で囲わないといけないから、レイアウトを変える必要があるという点です。企業にとって、そういった見えない導入コストの存在は大きいです。協働ロボットはしっかりとリスクアセスメントをした上で協働スペースで使うことが可能となった場合、人がいる作業現場にロボットを置き、すぐに始動できます。また、必要であれば、ロボットを外してその日のうちに違うアプリケーションに対応できます。柔軟性が高く、導入コストに透明性があるからこそ、協働ロボットが選ばれます」(白石氏)。

ユニバーサルロボットではUR3 、UR5、UR10という可搬重量が3kg、5kg、10kgのモデルを展開。昨年には、それらをバージョンアップさせたUR3e、UR5e、UR10eを発表した。さらに新たなインターフェース「POLYSCOPE」を導入し、より容易なプログラミングを図っている。インターネット上でURアカデミーを展開し、登録すれば誰でも無料でプログラミングなどの使い方を学ぶことができる。また、アームの先に取り付けるエンドエフェクターなどの周辺機器に関しては、サードパーティーに任せて、ユニバーサルロボットが認定したものをUR+としてHP上で紹介している。こちらもプラグ&プレイというコンセプトで、アームにプラグを差し込み、ソフトウェアをダウンロードすればすぐに使うことができる。ユニバーサルロボットはアームの開発製造に専念。デンマークで生産している。

サカリGMは「今、世界のロボットのトレンドは人との協働、より簡単なプログラミング、コネクティビティ(IoT=Internet of Things)の3つに分けることができると思います。我々が重視しているのはより簡単なプログラミングであり、簡単にプログラミング、および設置できることが協働ロボットの成長を押していると思います。もちろん安全性の高さも重要です。協働ロボットは世界中で使われていますが、産業別に見ると自動車(2017年23%)、電機電子(同20%)、プラスチック(同17%)という順番になっています。我々の顧客としてはタイでは自動車、電機電子、飲食料品の順番に大きな割合を占めています。国際ロボット連盟によると2017年の世界の産業用ロボット出荷台数でタイは3,400台で15番目になります。東南アジアにおいてシンガポール、ベトナムに次ぐ3番目です。従業員1万人に対する産業用ロボットの割合でタイは48台で、世界の平均85台と比べてもまだ開きがあります。裏を返せば、タイの産業規模からすると今後ロボットの導入がさらに進む可能性があると思います」と見る。

協働ロボットが目指しているのは、完全なる自動化ではない。もともと産業用ロボットが担っているような危険な現場や高速な作業を取って代わるものでもない。あくまでも人をサポートし、それによって人がより付加価値のある作業を担う世界だ。「製造現場には私共がスウィートスポットと呼ぶ、まだまだ人が関わっている場面がたくさんあります。それらの生産性をいかに高めるかにフォーカスしています」とサカリGMは語る。より簡単で柔軟に扱えるロボットとして誕生した協働ロボット。あくまで人間の仕事をサポートする存在として、大きな可能性を秘めている。

ダイレクトティーチングを実演

実際に協働ロボットのティーチングを白石氏に実演してもらった。場所はインタビューで使用したホテルの会議室。準備していただいたのは、コントロールボックス、ロボットのアーム(UR3e)、ティーチングペンダントの3つ。電源は100~240Vの単相で使用できる。

ティーチングペンダントはタッチスクリーンなので、直感的にドラッグ&ドロップで操作できる。今回披露してもらったのは、ロボットを手で動かしながら行うダイレクトティーチング。白石氏がティーチングペンダントの裏にある黒いボタンを押しながら、アームをある位置まで手で動かし、その後ボタンを離すと固定された。そしてティーチングペンダント上で座標として設定。これを繰り返し、あっという間に3つの座標ができあがった。位置繰り返し精度は±0.03mm、最大速度1m/秒で動かすことができる。

最後にアームをホームポジションに戻し、スタートをさせると、アームが3つの座標間を繰り返し動き始めた。この間、白石氏の説明も含めて、ものの数分で終わった。改めて簡易さが実感できた。

もしもぶつかったら。。。

余談ながら、ロボットにぶつかるとどうなるのか、体感させてもらった。ロボットの動くコースに体を入れ、アームがぶつかるのを待つ。そして自身の腰あたりにインパクト。アームは自動的に停止した。ゆったりした動きではあったものの、相手は機械。痛みはなかったが、少なくはない衝撃はあった。

実際に協働空間に置くとなれば、アームのどこが人体のどこに当たる可能性があるのかに応じて、細かく可動部の力を制限する必要がある。あくまで衝突は万が一の事態であり、徹底した安全への配慮は不可欠だ。

 

<問い合わせ先>

Universal Robots

担当: 白石 

携帯番号+65-9066-1657

E-mailgsh@universal-robots.com

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