世界的ERPメーカー、IFSパートナー企業 ITソリューションで業務改善に貢献 

ERP(Enterprise Resource Planning)などのシステム開発、運用、保守などを手掛ける大連誠思科技(Dalian CHENGSI Technology)は2005年、中国東北地方の大連でIBMの元社員5人によってオフショア開発拠点として設立された。以降、数々の企業の業務改善をITの面からサポート。タイには2012年、日本でも2016年に現地法人を立ち上げるなど事業を拡大してきた。今回はタイ、日本法人の社長を務める岩堀健太郎氏に話を聞いた。

細やかな導入コンサルティングで課題解決

ERPは在庫や購買、生産、物流、会計、総務まで、様々な経営情報を統合的に管理する基幹業務システム。経営効率化の観点から、多くの企業で導入が進んでいる。大連誠思科技(タイランド)は昨年から、世界的なERPパッケージのベンダーでスウェーデンに本社を置くIFSのパートナー企業として、システムの導入コンサルティング、開発サービスなどを提供している。

1983年に設立されたIFSのERPは、生産管理、サービス・マネジメント&設備資産管理、プロジェクト管理、サプライチェーン管理という4つのプロセスに重点を置いている。製造業の様々な生産管理方式に対応し、研究開発から設計、製造まで一貫してカバー。顧客のニーズに合ったソリューションを実現できる。また、コンポーネント型ERPとして、会計や購買、生産といった業務単位ごとに導入することができ、その後の追加、拡張が容易。グローバルサポートも充実しており、海外拠点を多数持つ企業にも最適だ。全世界で1万社超に導入され、タイでも50社以上に導入されているという。

IFSは昨年、CEOにライバル企業SAP出身のダレン・ルース氏が就任。世界的に、パートナー企業をより活用する方針にシフトした。また、産業高度化を目指すタイでITによる効率化を進める動きもあって、大連誠思科技(タイランド)でもスタッフを増やして増加する需要に対応。当初の150平方メートルのオフィスの上階にさらに170平方メートルのスペースを拡張した。自動車部品メーカーなどを顧客に抱え、女性を中心に総勢30人ほどが働いている。新しいプロジェクトを仕切るプロジェクトマネージャーはタイ人、日本人、マレーシア人、さらに中国人と国際的。彼らはタイ人スタッフと英語でやり取りをする。

岩堀社長はERPについて「データを見ながら経営の意思決定ができるようになる。その企業の業務プロセスに合うかどうかが大切」と語る。だからこそ生の情報をデータ化する現場への教育が大事となる。例えば、在庫の出し入れも倉庫のスタッフが正しくデータを入力しなければ、正しいデータがシステムに反映されない。しまいには誤った情報に基づく経営判断につながってしまう可能性もある。「(導入に際しては)改めて仕事の進め方をデザインしなければいけません。作業手順所に書いて、現場でいつでも見られるようにして、スタッフが入れ替われば教える。全社活動なので、トップのコミットが必要です。その積み重ねが、経営者が見るバランスシートになってくる。現場から経営までつながっているという意識が重要」。IT化はまさに業務プロセスの再構築なのだ。

IFSでグローバルカンパニーを目指す

「社員が喜んでくれないとお客様に良いサービスが提供できない。明るく元気に健康に働いてもらいたい」と健康診断やプロビデントファンドなど、福利厚生を充実。さらにスタッフは週一回、オフィスが入居するビルにあるフィットネスクラブに勤務時間中に行くことが許されている。最近は多忙で利用するスタッフも減ってはいるが、「仕事にメリハリをつけて利用してもらえれば」と期待する。

岩堀社長は2006年の入社。大学卒業後、日本でシステムエンジニアをしていたが、「システム開発がやりたい」と、縁あって中国の大連に渡り、創業直後の大連誠思科技に就職した。当時はまだ中国の人件費は安く、日本と比べてもコストメリットがあった時代。岩堀氏も入社直後の給料は日本円にして約6万円だったという。「そんなに少ないと思わずに行ってしまった。日本食屋で生ビールが飲めるのは月一回。おかげで日本での貯金がなくなりました」と振り返る。ただ、高いスキルをもった中国人のシステムエンジニアを目の当たりにし、「この人たちが活躍できる場を創り出す側に行かないと僕のキャリアはない」と痛感したという。その後、上海にある日系の大手自動車部品メーカーに生産管理のシステム導入のため派遣され、はじめは3カ月の予定が最終的に3年間上海に滞在した。

さらに、その会社のタイ工場のIT部門に赴くことになり、2010年に来タイ。財務、生産管理、購買などの工場内部署を歩き回り、既に導入されていたIFSのシステムの有効活用に尽力した。「現場に飛び込んでいきました。すごく勉強になりました」。タイのIT化のニーズを肌で感じ、現地法人設立を本社に打診するも、なかなか決済が下りなかった。それでも、別の日系大手自動車部品メーカーのタイ工場立ち上げに伴うIFSのERPパッケージ導入も手掛けることになり、2012年に大連誠思科技のタイ法人が設立された。2016年には神奈川県横浜市に日本法人も開設し、現在は日本側の社長も兼務している。日本でもタイと同じようにフィットネスの法人会員となり、スタッフにも好評とか。

IFS自体、アジアマーケットには大きな期待を抱いているという。「アジアでNo.1のIFSのパートナー企業になりたい。お客様の数、売上、従業員の数、顧客満足度など色んな指標がありますが、まずはそれが目標です。その次は欧米に行きたいと思っています。グローバルカンパニーにしたい」と意気込む。まだまだIT化の途上にあるタイ。市場の大海原が待ち構えている。

会社情報

会社名 Dalian CHENGSI Technology(Thailand)Co., Ltd.
住所 Sino-Thai Tower 32/33 12th Floor Zone C Unit B, Sukhumvit 21 (Asok) Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
お問い合わせ先
担当者名 日本人窓口 Mobile:092-619-9831 E-mail:suzuki@ichengsi.co.th タイ人窓口 Tel:02-258-2184
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