レンタル市場で2桁成長 躍進するレント・タイランド

タイには中古機の販売会社の一部が余剰機械をレンタルしているところもあるが専業業者として30社ほどのレンタル会社があり、年間総売上高は40億バーツと推定している。最大手のAKTIOタイランドが業界トップシェアでレント・タイランドとNISHIOレントオールの両社が続いており、これらトップ3社だけでタイの業界シェアの過半数を占めている。  レントのタイ事業を立ち上げてきたのは日本本社の取締役副社長も兼務するレント・タイランドの現社長である岡田朗(おかだ・あきら)社長。現在長引く不況下にあるタイだが同社が年2桁の成長を続けられているのは「(不況脱出の)先が見えない現状では機械を購入せずにレンタルで様子を見てみようという顧客が増えていることが背景」と岡田社長。「現在、タイの建設・産業用機械のレンタル業界で当社は2位グループにいるが、更に業容を拡大していきたい」と岡田社長。  今後も競争他社にないサービスや新たな商品を積極的に開発していくが、「顧客のニーズに応じた商品を次々と開発しそのナンバーワンになる。拠点拡張も進める」(同)などと説明した。

まだまだ眠る タイの巨大レンタル市場

“買うより借りる”、“所有する財より、借りる智恵”をコンセプトに多彩なレンタルビジネスを展開しているレント(本社静岡市、田島潤一社長)は2019年が35周年だった。同社のタイ法人であるレント・タイランド(RTC)はレントグループの出資会社(資本金3億バーツ)として2008年2月8日に設立、現本社はスワンナプーム国際空港から出ているエアポートリンクのラムカムヘン駅前のUM Towerビルにある。車でも同社の各営業所に高速道路を使って向える便利な場所にある。

RTCの岡田社長によると、日本には大中小、兼業も含め約2,000社もが建設機械レンタルサービスに従事している。2017年の日本の建設・産業機械レンタル市場は1.8兆円だが、これは建設投資額56兆円の3%にあたる。一方でタイの建設機械レンタル市場は約40億バーツ(約150億円)と推定され、タイ政府発表のデータによる建設投資額8,600億バーツのわずか0.5%。  岡田社長によると、日本では35年程前バブル経済時代の建設投資額に比べて現在は半減しているにも関わらず建設機械のレンタル市場はバブル経済時代の1兆円程度から現在の1.8兆円まで伸びてきた。これを見ても経済の先進化に伴いレンタル市場が拡大していることになる。1991年に日系レンタル会社(AKTIO)が初めてタイに進出してから30年近くが過ぎているがタイの建設機械全体の中でのレンタル依存度はまだ1割程度とされている。  タイの3大ゼネコンはイタリアンタイ・デベロップメント、チョーガンチャーン、シノタイ・エンジニアリングだが、それら大手も機械は自社保有を原則にしてきた。しかし岡田社長が最近これらタイのゼネコンと話す機会があったときに「今後は一部機械でレンタルを使うつもり」という発言を聞いたという。「タイの建設機械レンタル市場は不況が続いたとしても拡大していくことは間違いない」と岡田社長は断言。  レント・タイランドの顧客は10年前の創業時にはほとんどの顧客が日系企業だったが現在までにタイ企業が6割、日本企業3割、中国や韓国、欧米企業などが1割となっている。  近年ではシンガポール、マレーシア、中国資本の参入も続いており、主には商材が豊富なバンコク首都圏やチョンブリ県などタイ東部に店を構えている。更にタイ資本の同業者も増加している。「彼らはレンタル料金の安さが売り物だが、商材は品質が悪くいつ故障するか分からないし安全性にも欠ける。安さを優先される顧客も多いが、当社は品質を売り物にしていきたい」と岡田社長。  レント・タイランドではレンタル商品が営業所を入出庫する際に徹底した点検を終えている商品だけを顧客に提供している。レンタルは1日、1機から可能でデポジットもとらない。使われる現場までの配送からメンテナンスまでの一環サービスを提供している。

商品のラインナップを拡充

レント・タイランドでは300種以上、在庫数4,500点にものぼるレンタル商品を提供している。それらは産業用、建設用、設備用機械類および掘削機、転圧機、高所作業機、フォークリフト、コンプレッサ、発電機、クレーン付トラック、揚重機、スポットクーラーなど。  岡田社長の説明ではレントでは「環境」「安全」「効率」をキーワードに、顧客が本当に必要としているレンタルを考え、トータルで業務を効率的に改善できる方法を提案してきた。建設機械、トラックなどの車両に始まり、「一般産業用機械」「物流機械」「環境維持機械」「メンテナンス機械」などの分野まで広げてきた。レント・タイランドにおいても、既存商品にとらわれず、日本で需要のある商品を導入するなど新たな取り組みを行っている。  例えば、電線敷設にパワーボールを使って安全に高速で効率的に行える日本製機械のレンタルもタイで紹介したところ話題になり利用企業が増えている。

機械の集中管理をする「マシンセンター」

レント・タイランドが誇る体制のひとつが2018年2月にチョンブリに開設した「マシンセンター」。3万2,000平方メートルの広さがあり、扱っている機械の集中管理をしている。各営業所で生じた故障車両などの修理を行っているが、修理復旧で時間がかかってレンタル業務で支障がでるのを防ぐため、35名のスタッフを配置し、各種部品を在庫して早急で高品質な修理復旧作業をしている。  更にはチェーンやホイスト、ジャッキなどで重量物を扱うため、事故防止の一貫として試験機による揚重機検査も行っている。  レンタルしている機器には高所作業機、フォークリフトなどバッテリーで稼働するものが少なくないが、バッテリーの再利用事業も実施している。日本で再生バッテリーは10数年前から知られるようになったが、レントでは再生バッテリー技術を保有していた日本企業を2015年に全面買収している。その技術や必要装置も日本からタイの「マシンセンター」にも移設してフル稼働させている。例えば、バッテリーフォークリフトでは購入価格の4割もがバッテリー代とされるほどバッテリーは高価だから再利用するメリットは大きい。  レント・タイランドでは当初は自社で使用している機械のバッテリーを再生の対象に考えていたが、「(劣化程度にはよるが)新品バッテリー価格の3割程度でバッテリーが再生できる」という情報を得た顧客から、保有するバッテリー付機械の再生、メンテナンス要請が出てきている。

安全も売るレント・タイランド

レント・タイランドには同社より社歴が古いレント・トレード&サービス(RTS)というグループ会社がある。1995年にタイで設立されて貿易やリースを行っていたタイ企業を2006年にレントが買収、昨年現社名に社名変更したRTS(資本金1億5,000万バーツ、従業員135人)で、オペレーター派遣と配送業務、及びトレード事業に特化したグループ会社として高品質のサービスを提供している。  RTSは配送業務を集中コントロールしてスピーディで無駄がない安全な配送を目指している。更に、レント・タイランドの機械などの操作を行うオペレーターの派遣も実施している。安全教育後に実施する試験の合格者だけを顧客企業の現場に派遣している他、キャリアアップ制度も作ってスキルの向上に努めている。  また、高所作業車、掘削機、フォークリフト、ミニクレーンを安全に使ってもらうため要望に応じて、技能教習を顧客企業の従業員に対して実施しており、顧客企業から高い評価を受けている。機械の各メーカーの協力を得て作成した教育プログラムを使っての教習で、教育を終えた人に発行している認定書の価値も高まってきている。

マプタプット工業団地前に5番目の営業所を開設

レント・タイランドではこれまでにバンコク近郊からタイ東部を中心に4拠点の営業ネットワークを築いてきた。ランシット、サムットプラカーン、チョンブリ、ラヨーンの4営業所を構えているが、2019年12月からラヨーン県の化学コンビナートがあるマプタプットに営業所を開設。レント・タイランドのタイで5番目の営業所でマプタプット工業団地の入り口の前に営業所を構えた。従来からのラヨーン営業所もイースタンシーボード工業団地内にあったが、目立たずに営業面で不利だったため、2019年9月から同団地外のロードサイドに移転している。

タイからASEAN進出を狙う

レント・タイランドでは他の東南アジアにも進出する構想があり、ベトナム、インドネシア、フィリピンを具体的に検討している他、ミャンマー、マレーシアの調査もしている。「ミャンマーには日系レンタル会社、製造メーカーなども進出しているが、当社が進出するには時期尚早だと考えている。現状ではベトナムがタイに次ぐ進出先として最も有望視しているが、ハノイやホーチミンのどちらに進出するかも未定で今後どのようなパートナーが現れるかといった動きに応じて決めていくと思う」と岡田社長は説明した。

会社情報

会社名 Rent(Thailand) Co.,Ltd.
住所 9/222-224, UM Tower, Ramkhamhaeng Rd., Suanluang, Bangkok 10250
お問い合わせ先 Tel. 02-0177200 Fax. 02-0177201
担当者名
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