ばね材料などの販売でタイに進出 初の海外法人、1年内に黒字化目指す Suzuki Kozai (Thailand) Co., Ltd.

鈴木鋼材(本社:大阪大阪市、高木徹也社長)は日本で硬鋼線、ピアノ線、オイルテンパー線、ステンレス鋼線、りん青銅線などのばね材料と電熱線(カンタルブランド)の販売、各種直線寸法切り加工を行っている。今年1月、同社は初の海外法人として鈴木鋼材タイランドをバンコクに設立した。タイ政府のBOI(投資委員会)から部品や半製品の調達で3国間貿易を担う企業に与えられるITC(国際貿易センター)ステータスが1月8日に認可されている。そこで鈴木鋼材が100%出資する形で、資本金1,000万バーツで設立した。鈴木鋼材タイランドの社長は日本本社の高木徹也社長が兼務する。
しかし鈴木鋼材タイランドからはタイ市場向けに消耗品などの直接販売ができない。そのため、6月には鈴木鋼材タイランドと同所に高木社長が兼務する鈴木鋼材49%出資のタイ合弁「鈴木鋼材アジア社」も設立した。高木社長は「有力な競合会社がタイに進出されて久しい中で当社は最後発。しかし小回りの利くサービスと在庫販売で顧客の要望に応えられると考えている。タイでは新しい事業分野確立にも注力することによって1年以内に黒字化したい」と張り切る。

スミスパークガンマの取り扱いスタート

鈴木鋼材タイランドでは、ばね用材料の販売の他、EDM(ワイヤカット放電加工機)で使う高精度加工用の極細ワイヤーである「スミスパークガンマ(SSy)」や、コイリングマシン用超硬冶具にも力を入れる方針。EDM用0.03~0.1ミリの極細ワイヤーである「スミスパークガンマ」は、住友電工スチールワイヤー製で高強度鋼線に放電特性が優れた銅亜鉛合金を被覆している。高張力負荷が可能で高精度の加工に適しており加工速度も従来比で1.5倍速い。2万メートル以上の長尺品の納入も可能。「市場は小さいかも知れないが、競合が少ないので伸ばせるはず」(同)と感じている。
また、エスピーツールと鈴木鋼材が協業して、ばねを製造する機械で使われるコイリングマシン用超硬冶具の製造・販売・加工受託をタイ市場向けに開始した。線ばね加工では形状により多様なツールを必要とするが、タイで初めてその治具の加工販売と受注加工を開始することで、「高品質の超硬治具をローカルの価格で提供できることになります」という。6月にバンコクで開催された「ものづくり商談会」でも紹介し、タイでの需要増に期待している。
コイリングマシンはメーカーごとに仕様が異なり、業界で長年の経験を持つ両社の技術ノウハウで特殊品の加工や顧客設計のツール形状にも対応する。販売する治具は芯金、ワイヤガイド、コイリングピン、カッテイングツール、各種加工用スライドツールなどで、信頼度が高いばね製造をサポートする。

高木社長が初めてタイに足を踏み入れたのは2年ほど前。仕入先である住友電工スチールワイヤーがアレンジしたタイとインドネシアへのスタディ・ミッションに参加した。「日本市場は頭打ちになっている一方、タイに進出する日本企業が続いている。その中の1社の顧客から当社へのタイ進出要請もあり、昨年4月末にタイに来た時から進出計画を始めた」と高木社長。
そして取引先の紹介で、バンコクで事務受託サービスなどを行うA-CASTタイランド(岡田敬社長)内のスペースに鈴木鋼材タイランドを立ち上げた。高木社長は「顧客の至急の要請に応えるために各種在庫を置く倉庫を現在バンナー通りで探しています」と語る。日本での従業員数は30人ほどだが、タイでは4名で営業。タイ人営業2人の内、1人は女性。

タイでの各種直線寸法切り加工も検討

日本の鈴木鋼材は昨年4月、スウェーデンに本拠を置き世界最大市場を押さえる超硬工具メーカー・サンドビックの日本法人サンドビック・ジャパンの代理店になった。日本ではサンドビック・マテリアルテクノロジーカンパニーの電熱線の受発注・在庫販売業務を一手に引き受けている。タイでは超硬のばね製造用治具や超硬エンドミルなど切削工具メーカー向けに同社の超硬材料の在庫販売・加工受託を目指す。サンドビックは超硬専門の工場があるメキシコから、これら超硬材料をタイに送る。
「タイにはばねのメーカーが日系だけで30社から40社あり、当面はそれら日系メーカーがターゲット。その多くが自動車部品メーカーで高い品質要求を満たすために材料にも高品質が要求される」と高木社長は見込む。緊急対応用として10キロの小割で「ばね用鋼線、ばね用ステンレス鋼線」の在庫販売も開始した。日本での需要が多い各種直線寸法切り加工は「現在はタイの需要動向を見ており、市場があると判断できれば当面は近く借りる倉庫の中で対応できる範囲で受注していきたい」(同)という。
40歳の高木社長は大学、大学院で応用化学を専攻したエンジニアで卒業後に化学メーカーに入社して主に研究部門で活躍していた。夫人が鈴木鋼材の経営者一族であったことから、鈴木鋼材の5代目社長に招き入れられた。当面は「1週間置きに日本とタイを往復しながら」、両国での経営トップを兼務する。「タイでの日本人の営業を担当する川村氏はバネ業界出身。私は住友電工スチールワイヤーやエスピーツールなど日本企業と新規の話し合いも進めており、これら商談も私が両国を頻繁に往復することで決定までのスピードが速まる」と言う。「住友電工スチールワイヤーと共同開発を始めているものはうまくいけばタイで在庫販売を開始する。サンドビック製の超硬材料では、タイでの新たな新事業を発進させていただくことになるはず」と高木社長。
現在の鈴木鋼材の資本金は4,760万円、売上高は年商28億円。大正5年3月に鈴木久吉商店として設立され老舗企業で、昭和31年12月に住友電気工業、メタックス、星工業の特約店になった。昭和38年6月から鈴木鋼材と社名変更。昭和51年に福岡県大野城市に福岡営業所を開設。平成28年4月からサンドビック・ジャパンが販売する電熱線(カンタル線)の日本総代理店となっている。現在の鈴木鋼材の日本での販売先は自動車関連向けが6割、建設建機向け2割、電熱線関係が5、6%、農業資材などもある。

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