設計、製作、施工、メンテナンスまで一貫サービス 日本流の工場建築・工場設備提案 TCC TECNICA Co., Ltd.

各種工場設備から工場建築、メンテナンスまで幅広く手掛けるTCCテクニアは、来年で設立10年を迎える。1992年に設立された前身時代を含め、タイの日系企業に長年の納入実績を持つ。パトゥムタニ県のナワナコーン工業団地に近いローカルの工場地区内に工場を構え、「顧客の工場のニーズやサイズに合わせて、自社で設計から製造・施工・メンテナンスまで一貫したサービスが提供できる豊富なラインナップが弊社の強みです。短納期、ローコストで顧客ニーズに応えられます」と杉浦悟朗(すぎうら・ごろう)MDは語る。現在のTCCテクニアは金額ベースで工場建築が7割、工場設備が2割、メンテナンスが1割。受注件数ベースで見ると工場設備は6割、工場建築は3割、メンテナンスは1割となる。工場の建築は年3、4件ペースで続いているという。現在、年商3億バーツほどで無理して業容を拡大する方針はない。杉浦MDは「当面は仕事を増やすよりも社内強化に力を入れたい」と語る。

特注品もタイで製造可能

本社工場前の第2工場では今、大型のテントハウスのフレームの製造が忙しそうだった。コンベヤは、PVCベルトや耐油タイプのPUベルト、ラバー、特殊ベルトタイプをオーダーメイドにより1機からでも製作、食品用ステンレスなどの特注品も可能という。フリーローラー・コンベヤでは規格品からヘビータイプまで対応できる。「特殊なコンベヤだからといってわざわざ日本から輸入する必要はありません。当社に相談してください」と杉浦MD。SLATコンベヤの他、スクラップコンベヤについてもヒンジタイプからスクラッパータイプまで、スクラップに合わせたコンベヤを提案し、規格外ラックなどの特注にも対応している。
天井クレーン、ジブクレーン、門型クレーンなどをオーダーメイドで製造することも可能で、クレーン用の柱の施工から請け負っており、レンタル工場での施工も行う。クイックシャッターでは開口の広さも自由、夜間操業も考えて蚊帳タイプの特注も請けている。 特注設備として洗浄機、オリジナルマシーン等の納入実績も多い。「図面を日本から持ってきてもらい、製作をタイの当社で行えばコストダウンが図れます」と杉浦MD。電気設備、電気工事についても高圧工事、2次配線、MDB、配電盤、工場内電気設備など広く要望に応じている。
日系企業とタイのローカル企業を含めても、「設計から始めて製作、施工、アフターサービスまで一貫して手掛けているところは他にないと思う」と杉浦MDは話す。他社では下請けを使っているケースが圧倒的だという。同社の日本人は6人で営業と現場にそれぞれ3人ずつ配置している。その狙いを杉浦MDは「営業も現場監督も日本人が担当して、日本流の提案とサービスに力を入れています。タイ独特のビジネスの文化やルールを無視しないように、タイ人エンジニアと打ち合わせしながら、コスト削減への提案などのアドバイスなどを取り入れ、タイの風土や嗜好に合わせたオーダーメイドの工場建築、工場設備に対応しています」と話す。

 

顧客からの信頼獲得を最重視

TCCテクニアでは顧客から信用を得ることを最重視し、クチコミで顧客が広がってきた。手掛けた工事のフォローアップ、メンテナンスの要望などにも大至急で対応してきたサービス面が評価されたもので、既存の顧客からの工場の増改築、キャンティーンや従業員寮、駐車場など福利厚生施設の建設なども受注している。

同社の工場に使われている設備などは「日系企業で解体費とのバーターとして無料で譲っていただいた設備が多い」(杉浦MD)という。ベンダー、シャーリングは台湾製を安く買い、建設重機のほとんどを自社保有している。「試行錯誤で来たのですが、年商3億バーツに育てることができたのは正直、良いお客様と愛社精神のある従業員に出会えた私の強運」と振り返る。タイに進出してくる日系企業へのアドバイスも行っており、日本から進出したメーカー2社にそれぞれ2割、タイローカルのクレーンメーカーに5割の出資もしている。杉浦MDは「タイで成功させていただいたお礼の気持ちと、横のつながりを持ちたいと応援させていただいています」と背景を明かす。

杉浦MDは1979年5月生まれの38歳。岐阜県多治見市にある建材メーカー杉浦製陶の経営者一族にあたる。岐阜高専出身で日本の設計会社で勤務後、来タイ。同じ岐阜出身の伏屋氏が経営する工場(TCCテクニアの前身会社)に「岐阜高専を出ました」と電話で伝えると、まだ面接もしていないのに伏屋氏は採用を決めた。2011年に50年ぶりとされる大洪水が工場前まで押し寄せたが、幸い工場内は浸水しなかった。杉浦MDは「この土地を選んだ創業者の伏屋氏のおかげ」と感謝する。この洪水後には、周辺の日系工場の復旧案件で販路が拡大した。
2012年に高齢の伏屋氏は杉浦MDと現在副社長を務めるルンワット氏に会社を売却することになった。杉浦MDが48%、ルンワット氏が48%、杉浦MDのタイ人夫人が4%を保有。現在のTCCテクニアの資本金は1,500万バーツ。

受注好調で多忙なため、実兄もタイに来ている。従業員は正社員80名、現場作業員300名にのぼる。勤務時間は午前8時から午後5時まで、工場現場では残業がある。現場が変わるので移動が多いが、現在は本社に60人、シーラチャの拠点などに50人、304工業団地とバンプリにもそれぞれ80人ずつが勤務し、東北のコラートとコーンケンにも現場があり日本人が管理している。工場では全員が男性、総務経理はすべて女性だ。設計に女性が1人働いており、杉浦MDは「女性エンジニアをもっと増やしたい」と考える。

従業員の定着率が良い点については「当社工場に洪水が入らなかったとは言え、この地区は洪水エリアですから工場のタイ東部への移転で労働力が多い地域だからです。当社も移転を考えてシーラチャに拠点を構えましたが結局、本社機能は移動しませんでした。私自身タイに来て以来、シーラチャに住んでおり、今も長距離通勤しています」と説明する。
同社では杉浦MDの発案で、6年前から大手でも珍しいくらいの大きなタンブンに取り組んでいる。毎年、従業員の実家がある地方の寺院を順番に選んで仏像を寄進。大理石で3メートルほどの高さがある大きな像で、雨季が始まって僧が寺で修行に専念するカオパンサー(入安居)の頃に合わせて実施している。仏像を寄進する日までに土台を建設し、寄進の日に仏像を設置して寄付もする。杉浦MDも仏像の引き渡し式には必ず出席。「今年は第6回目として、7月にこれまで5年間勤務している従業員の実家があるチャイヤプーンのお寺に仏像を寄進する予定です。図らずもタイ人の従業員が愛社精神を高めてくれることにつながっています」と今後も継続していく方針。
タンブンの他、社員旅行も実施しているが、「遠慮なく楽しんでもらうため、ルンワット副社長に任せて私や他の日本人は遠慮することが多い」という。また、年末のパーティーでは「一等は日本旅行が景品です。それ以外にも幹部を中心に日本に行ってもらい、日本を感じてもらうことを心がけています」と語る。

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