実習生の成功こそATPの成功 技能実習生送出機関 4,000名以上を日本に派遣

少子化に伴う若年層の減少によって、労働力不足が深刻となる日本。もはや外国人労働者は多くの産業にとって不可欠な存在となっている。その中で、外国人技能実習制度を利用している企業も少なくないだろう。海外人材派遣事業を手掛けるタイアサワラート・マンパワーでは傘下のアジア日本語学校と共に、2002年から外国人技能実習生育成プログラム「ATP(Asawalert Training Program)」をスタート。これまでに多くの技能実習生を日本に送り出し、各企業から好評を得てきた。どのようなプログラムを展開しているのか、現地を訪ねた。

実習後までを見据えた教育

タイアサワラート・マンパワーはジンタナー・アッサワタウィーチョークチャイ氏によって1992年に設立され、タイ人の海外人材派遣事業を展開。のべ15カ国に斡旋し、2002年より日本への技能実習生送出事業を始め、渡航前に日本語や日本文化を教育するアジア日本語学校も同年開設した。グループ内には、帰国した実習生のタイでの就職を斡旋するチョークチャイ・リクルート、実習生の学費や生活費の工面をサポートするアサワ・グループファンドがある。また、タイアサワラート金属溶接技能訓練センターでは、日本での実習を経たトレーナーによって、溶接の研修を実施。労働省の許可の元、溶接に関する技能試験も行っている。

「学校を卒業後、就職先がないタイの若者のために事業を始めました。昨年のタイの失業者数は約40万人で、今年はそれを上回る見通しとなっています。その内の約20万人は大学や高等専門学校を卒業した若者たちです。その数は、来年は30万人に増えると見られています。私たちはタイ国およびタイ社会のために、これらの問題の解決に貢献したいと思っています」とジンタナー社長は話す。

ATPでは学習期間が6カ月間(990時間)の産業コースと、学習期間が10カ月(1650時間)の介護コースの2つを実施している。ほとんどの学生が産業コースに所属。介護コースは今年スタートしたばかりで、まだ学生が少ないという。技能実習の介護は日本語能力試験のN4レベルが求められるため、期間が長くなる。

現在、スクンビット・ソイ101にある校舎では約600名が学んでいる。全員、日本での生活に備えて、学校付近に設けられた複数の寮に入り集団生活を送る。日本人およびタイ人の教師によって、平仮名、片仮名などの文字、基本的な日本語のほか、仕事の現場でよく使われる会話も学び、実践的なコミュニケーション力の育成に重点を置いたカリキュラムになっている。体力トレーニングも連日行われている。産業コースの場合、6カ月かけて6つのレベルに分けて進められ、各レベルで修了試験を行う。最終的な目標はN4レベル。昨年、送り出した実習生の約10%がN4レベルに達した。今年はその割合を20%に増やす努力をしている。実習1年目で50%がN4に合格するという。

ラウィンタン副社長は「タイとは大きく異なる日本の習慣や規則、マナー、例えばごみの分別や横断歩道の渡り方まで教えます。そして、給料をいただく以上は、会社の仕事に全力で取り組みなさいと伝えます。学生には単に3年間の実習を目的にするのではなく、その後の将来を見据えるように教育しています。帰国後に本当の人生が待っているからです」と話す。

18年で2名から600名まで拡大

登録料は5,000バーツ。教科書や制服、カバン代などが支給され、寮費は電気代、水道代含めて無料という。2013年に派遣した実習生は174人、その後、2014年は252人、2015年は341人、2016年は376人、2017年は437人、2018年は588人と年々実績を伸ばしてきており、現在日本で実習中の実習生は約1,600名。これまでに送り出した実習生はのべ4,000名以上になる。派遣先は60%が自動車や電気製品、化粧品、食品などの工業系、25%が建設業、15%が農業という割合となっている。

ジンタナー社長は「スタート当初は学生を集めるのに苦労しました。1年目、私と日本人の教師、そして通訳の3人のスタッフに対して、来た学生はたったの2人でした。5年間経っても年間20人に達しませんでした。なぜなら、様々なテストや面接をした結果、わずかしか残らなかったからです。10年間、私たちのスタッフは各地の学校を回り、なぜ6カ月の学習が必要なのか、私たちのコンセプトなどを学生たちに伝えました。徐々に学生たちは本当の目的を理解し、入学者が増えていきました」と振り返る。

一方、ラウィンタン副社長は「実習を希望する若者の70%はスリン県やロイエット県、ナコンラチャシマー県、ルーイ県など東北地方(イサーン)、30%は北部、中部から来ています。最近はSNSを通して、遠方の県からの問い合わせが増えています。先日は、2名の学生のために北部のメーホンソーン県で説明会をしました。多くの若者にとって最初、海外で働く目的はただお金を稼ぐことです。私たちは、その考え方を変える必要があります。彼らが日本にいる間だけでなく、帰国してからも日本語能力、日本での経験、身に付けた技術などを活かして、長期にわたって仕事が得られるようにすることが大切です」と訴える。

出発前から帰国後まで一貫サポート

実習生が日本到着後は、日本に常駐する日本語対応可能なタイ人スタッフが実習機関などを定期的に訪問して、問題が発生していないかフォロー。その他に、100名近い大口の派遣先には専任の通訳も付いているという。さらに年に2回、大学や高専の校長や先生らを日本に案内し、実習先の視察や実習生を激励する機会を設けている。「現場を見せることで先生方も私たちの活動を理解し、後進の学生の獲得にもつながります。実習生となった卒業生に接した大学、高専の先生からは、彼らがとても成長したと喜ばれています。実習生たちも元気をもらえます」(ラウィンタン副社長)。

実習生の帰国後はグループ内のチョクチャイ・リクルートが日系企業への就職を斡旋。また、アジア日本語学校では日本語教師になりたい元実習生も10名以上を受け入れ、その他のスタッフも含めると、20名以上の元実習生が働いている。CSRとして大学や高専の援助も行っている。6月には外国人技能実習機構(OTIT)がATPを視察した際には、これら実習前から帰国後までの一貫したサポートに触れ、各国のモデルケースにしたいと称賛したという。

「実習先の企業からは、私たちの実習生は日本語レベルが高く、まじめと言われます。それはしっかりと選考した上で教育しているからです。6カ月も勉強しなくていいですか?と最初に聞いてくる学生もいます。実際に2カ月、3カ月の研修で日本へ派遣する送出機関もありますが、そういった学生は受け入れていません」とジンタナー社長は語る。

2019年の受入予定学生は前年比20%増の610名を目標としている。さらに2020年は同40%増850名、2021年も同40%増1,190名と掲げている。来年中旬には、ウドンタニー県の7ライ(1万1,200平方メートル)の敷地に1,000名受入可能な新校舎、寮を開校するため、受入可能人数はバンコクと合わせて1,500名ほどに増加する。「就職先が見つからない若者のまだほんの一部です。もっと増やす努力をしていきます」とラウィンタン副社長は意気込む。ジンタナー社長は「帰国後も含めた実習生の成功こそ私たちATPの成功です」と重ねて意義を訴える

 

会社情報

会社名 ATP Asawalert Training Program Thai Asawalert Manpower Co., Ltd.
住所 Soi Punnavithi 31, Sukhumvit 101 Rd., Bangjak, Phrakhanong, Bangkok 10260
お問い合わせ先 Tel:02-730-5622~26 / Fax:02-730-5620 / Web:https://www.ajls-school.com/
担当者名 日本企業窓口:藤原 Tel:02-730-5626 / Fax:02-730-5620 / Mobile:089-488-5569 / E-mail:asawaler@truemail.co.th
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