FAなどの自動機の標準部品を主に扱うFA事業、自動車や電子・電気機器などの金型部品を主に扱う金型部品事業、新たな流通事業としてミスミブランド以外の他社商品も含めた生産設備関連部品、製造副資材やMRO（消耗品）などを販売するVONA（ヴォーナ）事業の3つを柱とする株式会社ミスミ（本社：東京都）。1997年に設立した現地法人のミスミタイでも、本社同様にこれら3つの事業を展開している。その中で、タイでの主力事業である金型部品事業では今、新たな事業領域に踏み出そうとしている。その取り組みを川辺氏（金型企業体アジア事業部タイDirector）に聞いた。

自動車業界は停滞も売上高前年比増を継続

タイでの金型部品事業は、一部規制のあるものを除き、日本と同様のラインナップを揃えている。約1万3千アイテムをラヨン県のイースタンシーボード工業団地にて在庫。午前11時までの注文であれば当日納品サービスも行っている（要別料金。一部地域を除く）。

タイの自動車生産台数はファーストカー減税の政策効果もあって年240万台を超えた2012年、2013年から200万台の大台を回復していない。横ばいが続く自動車生産台数の影響で、金型生産数量も停滞しているが、ミスミタイ金型部品事業では「エアコンなどの家電や精密・電子機器の金型需要を取り込むことで売上高前年比増を継続しています」と川辺氏は言う。加えて自動車関連でも2018年、2019年に向けて明るい兆しが見え始めているという。

しかし、タイでの国内調達が大部分のプレス金型に比べ、プラスチック金型のタイ国内での製造は使用されている金型全体の50％程度と言われる。さらに金型を大量生産する中国の台頭や、自動車業界での部品共通化の流れなどで、今後も新規金型数の大幅な伸びは見込めない。そこで目を向けたのが金型を使用する成形現場だ。

タイは自動車産業の一大集積地であり、東南アジアの“成形大国”という一面も持つ。タイにあるプラスチック射出成形機台数は稼働機で2万台以上。「プラスチック成形のプロセス全体の中で、コストやリードタイムの削減など何かお客様のお役に立てることはないか」という観点から、射出成形機のスクリュー・加熱筒・3点セット（スクリューヘッド、逆止リング、シールリング）といった成形機の交換部品や成形パージ剤などの販売を開始した。

これらは日本品質でありながら、価格はタイ製とほとんど同水準を実現している。また個々の顧客向けの在庫を持つことで交換部品の納期大幅短縮の実現も検討している。

マニュファクチャリング・エキスポに出展

「ミスミと言えば金型部品やFA部品の印象が強い。プラスチック成形関連の交換部品・消耗部品は『ミスミがやっているとは思っていなかった』と言われる」と川辺氏はPRの必要性を感じている。そこで取扱商品の拡大と合わせて、金型やFAだけでなく“成形もミスミ”というイメージの浸透を図る。その格好の舞台が、6月21日から24日までバンコク国際貿易展示場（BITEC）で開催される東南アジア最大級の製造業の展示会「マニュファクチャリング・エキスポ」（インターモールド）だ。

昨年は46カ国から2,400近くのブランドが集い、期間中に約5万人が来場した同展示会。今年も同規模の来場者が訪れる予定だ。今回、ミスミタイは2年ぶりに出展する。前回よりも大規模なブースを構え、先述のスクリュー、加熱筒、3点セット、パージ剤に加え、今後展開を予定している射出成形の取出機のチャック板（EOAT）自動設計ツールも展示する。これまで培ってきた金型部品事業における信頼を成形分野にも広げていく。

さらに、射出成形機や関連用品の取扱業者などもミスミのブース内に出展し、射出成形に関する総合的な展示スペースを作り出す。「タイで金型や成形を手掛けている企業様にぜひご来場いただき、ミスミが始める新しい成形現場周りのサービスを実際に目で見て、触れていただきたい」と呼びかける。

今後に向けては「金型部品事業で培ってきた『Q（高品質）、C（低コスト）、T（確実短納期）』に一層の磨きをかけて、タイの金型製造業・プラスチック成形業のお客さまに日本品質のサービスを継続して提供していきたい」と川辺氏は意気込みを語る。市場環境の変化を見越したミスミの金型部品事業と成形関連事業での今後の取り組みが注目される。

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