泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第33回『TNI第1-4期卒業生と日系企業就職』  

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、これまでの泰日工業大学(TNI)卒業生の就職状況を振り返り、タイの大学生の日系企業就職について考察します。特に日本人が理解しにくい日本とタイの学生の違いに焦点を当てます。

就職について、タイと日本の大学生の違う点

TNI学部卒業生の進路 (単位は人数)
卒業式実施年月 20119 201211 20139 20149
学部卒業生数 224 498 655 573
・就職者/就職希望者 198/198 425/425 570/570 436/436
・就職率 100% 100% 100% 100%
・調査年月 20112月~2013年月3 20122月~20133 20132月~20143 2014211
進学 26 65 59 89
進路未定等 0 8 26 48

表のように、泰日工業大学(TNI)卒業生のこれまでの就職率(就職希望者の就職率)は100%ですが、この表およびTNI卒業生の就職を日本人の皆さんにご紹介する前に、日本とタイの学生の異なる点を以下の通り理解していただく必要があります。

  • 日本では一般に大学3年生になると就職準備を始めますが、タイでは4年生の卒業3カ月前に会社訪問など就職活動に入る学生が多いようです。特に取得単位が多い工学部生などは、プロジェクト課題学習などで卒業時でも就職活動をしていない学生もいます。また卒業してもすぐ就職しない学生がいて、実家に帰る、海外遊学する例も見られます。
  • タイの技術系の学生はよく言えば、日本人ほど焦らず、卒業までに就職を決めるという感じではありません。
  • 就職で頼りにするのは、友人、親で、大学の先生はそんなに影響力はないようです。
  • タイの一般の大学でも4月時点での就職は多いとは言えず、就職調査も1年かけて行う必要があります。(ちなみに、本年4月のTNI卒業確定者は、学部生433人+院生29人で、11月の学位授与式まで、あと2回修了者が追加決定されます)
  • 大学卒業式は、日本のように3月一斉ではなく、有名国立大学では王室関係者の日程に合わせたりして、翌年1、2月に実施することもあります。TNIでは、前教育年度の単位取得者を対象に、これまで第1期の9月以外は、11月に行っています(写真と解説もご参照)。
  • 単位取得=学業終了は最短3年半で可能で、通常は4年生後期の2、3月の最終試験に基づき、4月初めの理事会で卒業が確定します。
  • なお表の中で、TNI生の進学先は日本の大学院などが多く、大学院卒業後、日系企業に就職したいという希望を聞きます。
  • 進路未定は、連絡不能および進路を決めていない者です。

 

 

 

TNI卒業生は100%の就職率、日系企業にかなりの卒業生が就職

  • TNI学部卒業生は2011年9月が初めての卒業生(2010教育年度修了の第1期生)で、2014年11月卒業生まで表に見るように、希望者100%の就職です
  • タイの大学では、産業教育・組織教育が足りない(9.26プラユット首相の国家経済社会開発委員会での発言)なか、TNIの日本的ものづくり教育や組織行動などの実務力強化が、中核産業人材候補づくりに役立っています。
  • 卒業生の約60%は日系企業および日系取引が多いタイ企業に就職しています。日系企業への就職が少ない情報技術学部を除くと、日系関係企業就職は、約70%になります。
  • 卒業生は、1年目では社内で専門力を培う一方、顧客対応に備えます。語学の秀でた学生は卒業後すぐに日本人との応対や日本人コーディネーターとして即戦力として活躍、上司と近隣諸国に出張し、事業開発交渉を担当する事例もあります。英語を主要媒介語にする大企業でも、朝会などでは日本人とタイ人のコミュニケーションの仲介役となるTNI卒業生もいます。
  • 2、3年目になると、配属の各部門で専門技能を向上し、顧客業務も立派にこなしています。
  • 日系中小企業では、日・英語を即役立てている例や会社の期待に応え、貿易実務資格試験を4カ月で取得した者もいます。
  • タイの地域拠点化に伴い、アセアン仕様の設計やタイ近隣諸国事業開発に従事する卒業生が出てきています。またグローバル化を反映し、日本本社直接雇用例も見られます。

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