タカハシ社長の南国奮闘録
第117話 テクニア流のティール組織
最近、ティール組織という言葉をよく耳にする。ティール組織とは社長が事細かに指示命令、マネジメントをしなくても、目的のために成長し続ける組織のことだ。指示系統もなく、各々が自らルールや仕組みを理解して、自分たちで考え改善を加え、意思決定をして物事をなしていく。今風といえば今風で働き方にも工夫ができ社員にも社長にも優しい、いわば理想の組織といえる。
売り上げは結果だ。売り上げを求めすぎると社員は疲弊する。しかし社会に必要とされる会社で、自分も必要とされる仕事をして社会貢献を実感できれば、仕事に誇りを持ち充実感のある毎日を過ごせるだろう。すると、おのずと満足度もモチベーションも上がり、指示されなくても実力以上の結果、成果が上がる。
本来、皆そんな組織を心では目指しているのではないだろうか? そんな職場で働きたいのではないだろうか? そして少人数の中小企業のほうがこうした組織は作りやすいのではないだろうか?
私もこのような組織にあこがれていた。しかし実際、日本側ではなかなかうまくいかなかった。やり方に問題があったのだ。ルールが甘く中途半端だった。そのうえ教育も甘くリーダーを育て切れていなかった。そのため任せる環境を作ったのは良いものの、思いと違う方向に進んでいても手を出しづらく、社長のリーダーシップすら発揮できない状況を自ら作り上げてしまった。結果、ティール組織どころか歩調の揃わない状態を作ってしまった。昨年は90人しかいない会社で30人もの社員が辞めることとなった。
これはすべて社長自らが生み出したピンチである。弁解の余地もない。だから私は現場に入り、一つひとつの仕事を見直し、お客様のところに足を運びお客様の声を聴き、品質面では直接向き合い対策を一緒に考え、無駄を少しでも削り、原価確認をして改善を試みるところまで携わっている。
今更ながら、中小企業は社長が誰よりも働くことが基本だと実感した。それは外部への働きかけだけではいけない。誰よりも気を配り、誰よりも朝早く出勤して夜遅くまで会社にいるのは至極当然のことだ。どんな組織体にしても社長がやるべきことをやらなければうまくいかないことがあるのだ。なぜか私は逃げ腰だったように思う。
言い訳をするとしたら、リーマンショックから唯一立ち直っていなかったのは私の心だった。あれから10年間、いろいろなことを学ばせてもらった。自分の血と肉として今までの学びを実践して恩返しするしかない。30代にできていたことよりも今のほうが経験してきた分、以前よりも丁寧に、優しく、大きな心で対応できていると実感している。
タイは大先輩のマネジメントに恵まれ社員も頑張れている。いろいろなことを教えてもらえる環境に感謝しかない。この学びを生かしながらテクニア流のティール組織にチャレンジしていきたい。各チームが自分の部署に責任を持ち仲間と協力し合い、上下はあるが見下さず、他部署を支え、各々を認め合い、規律正しいルールを構築しながら仕事を楽しめる会社だ。それを持続可能な組織、独立採算制ホラクラシーサークル型組織と名付けて今邁進している。今は大変だけれど、まずは私が楽しく社員と協力しあい社業に取り組んでいきたい。
22年3月7日掲載