タカハシ社長の南国奮闘録
第70話 会社の軸
創業においては、同時に事業軸、経営軸という2つの軸を立ち上げることが必要不可欠となる。
まずは事業軸を決めることから始まる。事業軸は、科学性が主体となる。どんな業種を選んで、どのマーケットに、どうやって売り込んでいくかなど、ニーズやターゲットをしぼって商品開発をする必要がある。
そして新規開拓で、どれだけ売上げと利益を創出するか。要は、利益算出構造を構築することである。
商品力、特化したサービスの有り様、卓越した技術力、オンリーワンの専門性など、利益の出ている会社は、必ず事業軸がしっかりしている。
一方、経営軸は、どちらかというと人間性、精神論に近いものである。経営理念や経営方針のほか、就業規則、目標管理、リーダーの育成、社員教育など、企業文化や風土に至るまで経営全般が含まれる。
構築された仕組みを円滑にまわし、いかに効率的に利益を生み出す組織体にするか。そして、マーケットインからの具体的な販売目標、販売計画。プロダクトアウトの製造計画作成と遂行、改善活動など、運営面において会社を発展させることが重要だ。
この、事業軸と経営軸の2つのベースが、社会性のもとに成り立っていなければ企業は存続できないし、存続する価値が生まれない。
根底にあるのは大志である。何のために会社経営をしているか。その存在が人や環境、世の中の役に立っているかどうか、社会に必要かどうかである。
ユーザー視点のサービス、雇用、地域に愛されているかどうかだけではなく、今の時代に受け入れられているかどうか、時間軸もしっかり捉え、それらをイノベーションしていくことが、継続性へと繋がる。
とはいえ、事業軸と経営軸は、どちらかに偏りがちで、同時に成長させるのは容易ではない。運営管理の経営軸と、新規事業を立ち上げる事業軸を構築する能力は、全く別物だからだ。片方を引き上げては、もう片方を引き上げていくバランス能力が必要となる。
一つの事業の賞味期限は、長くても30年と言われている。「企業30年説」という言葉も生まれたほどだ。新しい仕事に挑戦していかない限り、衰退していくことは免れない。30年の間に、どれだけ挑戦して新しい事業をつくり、社員を育て、組織を強化していくかで会社の規模は決まる。
さらに、事業継承ともなると、創業者は立ち上げ時が自分の器のサイズでよいが、後継者は先代の最終地点からのスタートとなる。だから引継ぐまでに、器を育てておかなければならない。新しい事業への挑戦意欲、金銭感覚など、学びだけでは体得できない 持って生まれた資質が試される。
中小企業の社長は事業家であり、経営責任を持ち、運営を司らなければならない。テクニアのタイ工場も、スタート時とは事業内容を大きく変え、日本側とは違うやり方に挑戦している。
変革をして、運営に専念する。その繰り返しを絶えさせることなく、これからも心技鍛錬していきたい。