タカハシ社長の南国奮闘録

第77話 新たなる決意

タイに進出して12年目を迎えた。そろそろいろいろ変えていかないと陳腐化してしまう。人件費や材料の高騰に対応せねばならない。人材不足も深刻だ。今年度は構造改革に全力で取り組む必要がある。

今年は日本側も繁忙期で応援も遅れ気味ではあるが、必死に青写真を形にしてきている。以前に比べて現場の質は著しく向上した。これは現在頑張っている日本人スタッフの改善意欲とタイ人スタッフの技能レベルの向上が理由に挙げられる。やはり現場はリーダーの資質と職人のレベルに大きく左右される。リーダーは危機感を持った人間が望ましい。日本からエース級を送り込んで正解だった。

今期の改善戦略は未知数な部分もあるが、着実に一歩ずつ進めていきたい。タイと同様に1年半前、北米に思いを寄せて東海岸近くに営業所を出した。北米のマーケットは魅力的だ。リーマンショックの際、日本の設備関連の仕事は2年ほど低迷したのに対し、北米は半年も経たずに普通軌道まで持ち直した。タイもそのあとに続いた。

やはり底力が違う。

そんな魅力に惹かれて、次の危機が来た時に対応できるよう仕掛けることにしたのだ。しかし、そう簡単に新たなマーケットに入り込めるわけではない。日系の自動車向けの部品をいくつか受注してはいるものの、まだまだ安定には程遠く、予想以上に難航している。出費を最低限に抑えているので反応も薄い。一気呵成に電光石火のごとく行きたいところだが、最初の3年は勉強だと思っている。年月をかけることも大切だ。

まずはコミュニティの形成、ネットワークづくりである。日本人コミュニティもさることながらアメリカ人とのコミュニティも大切になる。最初の入口は現地の人々の助けがないとうまくいかない。

北米の日系企業もタイ同様、日本のクオリティを求めるはずなので、必ず必要とされるタイミングと商材があると信じている。

私たちが拠点を構えるウエストバージニアはケンタッキー州の東に位置しており、オハイオ、インディアナポリス、サウスカロライナあたりまでが通常営業圏となる。今のところ、全米を飛行機と車で駆けずりまわる感じで、日本企業の必要なものを何でもお届けするサポーター商社を目指して日夜奮闘中だ。単発の設備関係やシステム系の仕事を増やす狙いだが、ニーズを確実につかむのはまだまだこれから。

日本のテクニアは今年度で創業107年。何度も何度も足場固めをし、試行錯誤を積み重ねて今がある。しかし、海外では新参者。進出元年が創業元年。ブランディングも社歴も信用も、一年一年積み上げていくしかない。

「初心を忘れず、自立自力で海外拠点の継続と活性化、日本国内の戦力増強と革新的な経営企画実践に全力投球いたします」

これが新年度の決意表明だ。よろしくお願いします!

高橋 弘茂
名古屋市中川区の精密加工部品メーカー『TEKNIA』の4代目。1969年愛知県生まれ。1989年に同社の前身『高橋兄弟鉄工所』に見習い入社。現場経験を積んだ後、『Yamazaki machinery UK ltd』などを経て2001年8月『タカハシテクニア』代表取締役就任。現在はVITPROJECT (THAILAND) アドバイザーを勤めるほか、マネジ個性学コンサルタント(セミナー開催)なども手掛ける。
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