泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第52回『TNI卒業生に贈る言葉』

2017年もよろしくお願いします。タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。新年号の今回は、2016年11月に行ったTNI卒業式と、タイ人理事長と学長の卒業生に贈る言葉をご紹介します。昨年は伝統行事の「ロイクラトン(灯籠流し)」も、68年ぶりのスーパームーンとなったものの、花火などの派手な演出はなく、私の住居に近いベンチャシリ公園も一部の池を使い、参加者も公園にあふれるという状況ではありませんでした。卒業式は国王崩御からちょうど1カ月後の11月13日(日)にラマ9世公園で行われ、黙祷からスタートしました。日本人等の来賓招待も控え、参加者は黒い式服と学生服を着用しました。と言っても、卒業ガウンを身にまとって一人ひとり学位を受ける儀式は、日本人にとっては新鮮な驚きで、タイ人にとっては家族総出で祝う人生の一大イベントです。また、ご紹介する贈る言葉は、普通のタイ大学にないTNIらしさにあふれた内容です。

スポン・チャユッサハキット理事長の卒業生に贈る言葉

TNIが主唱する6つの中核価値(コア・バリュー)を「KM-HR-HoP」という1つの言葉のもと、卒業生の皆さんにとって仕事、生活、自己開発の中核となる実践の原理として、またTNI出身者としての証しになるように使って欲しく、以下再確認させてもらいます。

  1. 「K=カイゼン」とは、自己啓発と仕事のための継続的なカイゼン。卒業生の皆さんが「カイゼン」の精神と継続的な実践を心掛けるなら、他の大学の卒業生よりも早く進歩し、成功することは確実です。
  2. 「M=モノづくり」とは、単なる理論・知識でなく、自身で実践できる技能を持つということ。 卒業生の皆さんが「モノづくり」の考え方を持っていれば、良い行動、技術、イノベーションを継続して生み出すことができ、また自分で学ぶことができます。
  3. 「H=ハンセイ」は、自分の行動(実績)を見直し、または反省し、自分たちが犯した間違い、またはミスを受け入れ、それらの問題解決を図り、行動を改善するためにあります。卒業生の皆さんが「ハンセイ」を継続して履行すれば、間違いやミスから学ぶことができるし、やがてそれは自己開発と仕事の向上に繋がります。
  4. 「R=リスペクト」は、他を尊重し、礼儀正しくすることで、相手の立場になって、お互いを理解し、他のアイデア、提案、または姿勢を受け入れるもの。卒業生の皆さんが、この「尊重」の心を持てば、皆さんも他に愛され、他の人と円滑に働くことができます。
  5. 「Ho=オネスト=正直」とは、自分自身や他の人に正直であり、誰かを利用せず、良いことや正しいことを守ること。卒業生の皆さんが常に正直であれば、信用できる人になり、重要な大きな仕事を与えられ、仕事・経歴はさらに高くなります。
  6. 「P=公益意識」は公的な心を持つことであり、他人や社会のために自己を犠牲にし、公共のものを尊重すること。 卒業生の皆さんが「公益意識」を持っていれば、他の人と一緒に楽しく仕事をしたり、他の人から助けやサポートを受けたり、仕事や人生で成功する良い機会を得ることができます。

TNIの 6つのコア・バリューに関連する資質を有する卒業生は、これからの「タイ4.0」時代の仕事、自己開発、そして高い可能性のための資格と倫理の準備がなされている人であります。 そして、皆さんはタイを持続的に発展させるための重要な人材になるでしょう。

 

バンディット・ローッアラヤノン学長の来賓・教職員・卒業生への総括報告

TNIは2007年に設立後、教育、人材育成、研究、学術サービスの発展と向上を積極的に推し進め、絶え間なく成長しており、特に我が国のニーズに応えた質の高い工学、情報技術、経営学の卒業生を輩出し、 国内外に幅広く認知されつつあります。 TNIはさらに、タイと日本の良き関係の象徴になっています。 現在、TNIでは合計4,411人の学生に14の学士課程と5つの修士課程からなる19のプログラムを提供しています。

TNIは、日本式モノづくりを教育や学術プロセスに応用することにより、知識、スキル、専門家の素養を持つ質の高い卒業生を輩出することを意図しており、モノづくり実践の次の7つの基本事項を育成しています。

  1. 専門家を育成して、研究と学術サービスを強化する。
  2. 古い教育内容・キャリキュラムを近代化し、具体的なコアコンピタンス(他が真似できない中核となる強み)を持ち、インダストリー0やデジタル技術・経済・社会の変化や新たな傾向を支援する新しい教育内容・カリキュラムを開発する。
  3. 教育用メディア、機器、ソフトウェアおよび学習環境の開発と近代化。
  4. TNIの6つの中核的価値であるカイゼン、モノづくり、ハンセイ(反省)、リスペクト(個人と他を尊重)、オネスト(正直)、公益意識というソフトスキルを学生に育む。
  5. 特に協力協定を結んだ大学との学生交流活動で学生の活動を促進し、支援する。
  6. 学術プロジェクト、研究、現場訪問、学生の学習や実務経験向上に協力してくださる企業、大学、機関との提携協力を強化する。
  7. TNI内外で行われる学術競技活動を促進・支援し、学生の学術能力向上に資する。TNI学生は2015年から2016年にかけて様々な全国レベルの競技に参加し、次のような賞を獲得:2015-2016高等教育レベルのアニメーション・インフォグラフィックス第1位、ネットワークエンジニア養成を目指す2015年タイCCENTネットライダーズ大会第1位、2016年タイ企業資源管理チャレンジ第1位、Eラーニングサプライチェーン物流コンテスト第1位など。

TNIの上記の能力育成方法と学生が勝ち得た賞のように、本日の卒業式に参加した706人のTNI卒業生はすべて、TNIの6つの中核価値に関連する知識、モラル(善悪の理解)、倫理、社会人の資格がそろった卒業生であると確信しています。 卒業生の皆さんは、優れた社会人モデルになる卒業生であり、知識と技能を自分の仕事に生かし、成功させることができる、タイ国が誇れる質の高い人財になるでしょう。

  • Facebook
  • twitter
  • line

関連記事