タカハシ社長の南国奮闘録
第90話 TEKNIA大改革
タイテクニアは、タイ国内のお客様に、より安定的に製品を届けるための新体制になり、現在も改善が盛んに行われている。
具体的には、徹底した5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)やラジオ体操などの基本を定着させ、ISO品質意識の向上と安全衛生管理に意識をつなげている。また、タイ国歌の放送を流すなどして社員のモチベーションを上げ、より働きやすい環境づくりを心がけている。
こうした細やかなコミュニケーションを含む大改造を担う現地法人の社長を、信頼のおける先輩に託しており、その方の縁で強力な相方も加わり、より強固な体勢で改善が進行している。
これらはすべて、ワンランク上の会社になるために必要なことである。まだ発展途上にあるが、確実に結果も出始めており、これからがとても楽しみだ。
物を作る力が受注に勝らないと、お客様に迷惑をかけてしまう。物をつくる力は、それに携わる人の力だ。これは世界中どこの製造現場でも同じだろう。
それを熟知している先輩は、人材教育に余念がない。先輩が行っている教育の一つは、中口月産ロット100個から万単位のマスプロダクションまで対応できる管理スタッフに加え、重要となる品質管理スタッフの育成の徹底だ。
その中でも、多品種中ロットを行うには、長さ違いの品番違いや納入のタイミング、資材管理、中間在庫、完成品在庫の管理が欠かせない。
しかし、とても人間の頭に書き留められるものではない。そこで目視で管理が行えるよう、細かくホワイトボードに書き込み、じっくりと丁寧にやり方を教えている。
技能習得においては、旋盤加工、マシニングセンタ、研磨まで行える設備力を生かせる技能集団に育てるオン・ザ・ジョブ・トレーニング。
失敗を恐れず、どんどんチャレンジさせて技術習得の促進を図り、教育を目的とした日本のテクニアへの出向計画も立てている。信頼関係で結ばれているからこそ、技能成長マップを長期ビジョンで描けるのだ。
また、一般鋼材から難切削材、インコネル、チタン、ステンレス、特殊鋼、アルミ樹脂カーボンなどの材料調達に加え、熱処理、表面処理、協力加工、仕入業者などパートナー企業との信頼関係をつくることにも時間をかけている。
各企業とのクリーンな関係を保ちながら、食事会やゴルフコンペなどを催し、皆が幸せになるゴルフスタイルで人間関係を深めている。こうした行為が、相手を知り、取引の内容や状態を知るうえで重要な情報源となる。
幹部とは、月に一度飲みに行くことでコミュニケーションをとっている。過日、私も幹部との食事会に参加し、その席でスタッフの昇級を発表した。本人も周りもとても喜んでいた。普段から働きぶりをよく見て、他のスタッフの気持ちや全体のバランスを把握しているからこそ出来ることだ。
書ききれないほどのエピソードが、日々の中で生まれている。先輩方は人としての思いやりに溢れ、タイ人スタッフからも尊敬されている。おかげで、いずれこんなことができたらいいなと思っていたことが次々と実現している。
言うは易し行うは難し。実行しているふたりの先輩の後ろ姿は本当に頼もしい。全てにおいて、信念とものづくりへの情熱を貫き、何よりも人をとことん大切にする。この厳しさの中に愛情溢れるふたりの人柄が、改革を、前へ前へと押し進めている。テクニアの大改革は始まったばかりだ。