タイ企業動向
第57回 「新型コロナ感染タイ国内の記録⑤」
世界中に感染拡大を引き起こしている新型コロナウイルスは、タイではもう2カ月半余りも国内感染者は見つかっていない。1日に数人から~10数人にとどまる新規感染者は、全員が海外から帰国したタイ人か新たに入国した外国人で、空港などでの検査・陽性判明後は直ちに治療に向かうため市中感染のリスクは抑えられている。感染していながら未だ陰性の者についても、入国者全員が2週間の強制隔離を義務づけられることから他者にうつす可能性は極めて少ないという徹底ぶりだ。こうした折り、タイ政府のコロナ対策が世界で最も優れているとした分析結果が発表された。上位にあるのは、水際での厳格な予防体制を採る国々ばかりだ。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀 晋一)
マレーシア政府と民間のコンサルタント会社による官民共同事業体が7月28日時点でまとめた「世界COVID-19指数(GCI)」のランキングによると、新型コロナの感染が全土に拡大した地時点から、どのくらいの回復が進んだかを示す「回復指数」は、タイが100ポイント中82.6ポイントで首位となった。2位は韓国で81.09ポイント。以下、ラトビア、マレーシア、台湾、ニュージーランドなどアジアやオセアニアの国々が続いた。 順位は日々変動しており、8月8日時点でもタイは第2位をキープ。指数は81.56ポイントと高値を維持したままだ。ちなみに同日現在の日本は世界37位で、指数は60.41ポイント。ミャンマーの20位(70.34ポイント)やラオスの32位(62.82ポイント)よりも下位で低迷を続けている。(参考:アメリカは129位で42.24ポイント、ブラジルは139位で40.71ポイント) こうした状況を受けてタイ政府は、順次、規制の緩和を進めようとしている。タイ経済に欠かせない近隣のミャンマー・ラオス・カンボジアからの労働者の受け入れをいち早く決めたことに加え、重要な収入源であるメディカル・ツーリズム(医療観光)を目的とした外国人旅行者の入国を認めることも決めた。官民連携した入国後の仕組み作りを進めている。 国内では、早ければ8月末にも公立学校が正常化。短縮授業や人数制限、社会的距離(ソーシャルディスタンス)など課されてきた規制が一斉に解除される。スポーツ施設でのイベントの開催や観戦も解禁される見通しで、換気などを条件にタイの伝統競技ムエタイの再開も近づいた。 都市鉄道などの公共交通機関でも規制が緩和され、1席おきだった座席の使用が全席利用可能となる。航空機内での機内食の提供も通常に向けて再開を進める。 一方で、私権の制限が可能な非常事態宣言の発令は、少なくとも8月末までは維持する方針で、その後も状況を見て判断するとしている。「政治利用だ」との批判は十分に認識したうえで、集会の禁止などには適用しないといったアナウンスも繰り返し行っている。(つづく)
20年9月8日掲載