泰日工業大学 ものづくりの教育現場から
第111回 『久しぶりの卒業式と泰日国際学院新設』
タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では、コロナ禍で延期されていた卒業式と日本人も対象の英語で実施する新設泰日国際学院(TNIC)4課程を紹介します。
久しぶりの卒業式
まず、この4月3・4日に行われたTNI卒業式のニュースです。卒業式をコロナ禍でずっと実施できず、学生や両親から、人生の記念行事をぜひやって欲しいとの要望を受け、ソーシャルディスタンスなどを配慮したニューノーマル卒業式です。TNIに近いラマ9世公園のラチャモンコンホールで、2019-20年卒業生のほか2日間で、10,000人を超える親族、友人が祝福にやって来て、広い公園のあちこちで写真を撮る風景が見られました。卒業生は2019年度1010人の内391人が、2020年度924人の内465人が式典に出席しました。スポンTNI理事長が式典議長を務め、卒業生全員に成功と幸福を祝福する卒業証明書を授与しました。
静岡県の電機・自動車部品会社の幹部は、採用した卒業生をこの日に合わせて、通訳などの業務目的で来タイさせました。「日本の大学生は、最近現場を好まず、職場の中国・ベトナム人も同様で、一方TNI生は現場好きで、自動化ライン、マシーニングセンター、生産工学が得意で、さらに採用したい」とのことでした。
日本人も参加しやすいグローバル人材養成4課程
1 デジタル工学(DGE=Digital Engineering)
●DGEは、電気・機械・化学工学などの古典的工学と、デジタル技術の重要なスキルセットを組み込んだ工学分野のデジタル変革内容で、現代に必要な学際的課程です。
●特長:①産業分野向けモノのインターネット(IIoT)、ビッグデータ分析、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、進化的アルゴリズムによる機械学習、人間と機械の相互作用促進などの学習、②文章・視覚的コーディングと、C言語・パイソンなど各種プログラミングの基本的なスキル学習、③プロジェクトベースの学習(PBL)と日本のものづくりの考え方に基づく体系的な思考による革新的なアイデアと基礎知識からラピッドプロトタイピングによる製品開発の学習、④スタートアップ企業の実践、⑤おもてなしとレクリエーションの雰囲気を持つ教育活動にお けるデジタル化された環境など。
2 データサイエンス・解析学(DSA=Data Science and Analytics)
●DSAは、統計学とコンピュータ科学を活用しビジネスを視覚化させ、より良い情報に基づいて戦略的決定を行う、新しい種類の学際的な課程です。
●特長:①タイの学部レベルで初めての課程、②数学、統計学、コンピュータ科学とビジネスを組み合わせた学際的な研究分野、③タイ政府タイランド4.0方針の下でデジタル経済の主要なエンジンとなる産業に重点、④日本語・英語・タイ語力養成、⑤奨学金を得ての学習。
3 グローバル(国際)ビジネス経営学(GBM=Global Business Management)
●GBMは、ボーダレスになった今日の世界市場で競争するために、増え続ける基準を満たす有能な卒業生を生み出します。
●特長:①グローバル化の役割、貿易障壁政策、さまざまな地域・国のビジネス環境と新興市場など、グローバルビジネス分野の多くの重要なトピックをカバー、②実践的なビジネススキルに焦点を当てたプロジェクトに取り組み、実際のビジネスに参加、③最終年度に米国大学とのデュアルディグリー・プログラム機会を提供。 4日本語・国際ビジネス学(JIB=Japanese for International Business)
●JIBは、日本語と英語の両方の優れた駆使力と、日本、タイ、または国際的な組織で働くための経営管理の専門知識を身に付けることができます。
●特長:①優れた日本語カリキュラムで、基礎から上級まで集中的に日本語を勉強するだけでなく、専門的な管理日本語や経営学の実践的なコースも探求、②日本語と経営学・その他の学習割合は7:3、③在学中、日本の大学生と活動を共にし、生きた日本語力を学習、④日本でのインターンシップまたは産学協同教育のいずれかを6か月から1年間選択可能。
22年7月25日掲載