タイ版 会計・税務・法務

【第75回】 国際地域統括本部(IHQ)について

Q:新BOI制度で設定された事業区分の中で、地域統括事務所向けの事業形態があると聞きましたが。

A:国際地域統括本部(International Headquarters:以下IHQ)に関する御照会と拝察します。BOIの資料によれば、IHQは以下のような組織と説明されており、域内にある関連会社の統括をする所謂地域統括拠点としての活用を目して設定された区分であると思料されます。

 

『タイ法律の下で設立された企業で、関連会社にマネージメント、技術、支援サービスを提供し、関連会社に財務管理サービスを提供し、オフショア貿易活動をするもの』

 

Q:具体的には、どのような活動がその事業対象になりうるのでしょうか。

A:以下の活動を対象にするとされています。

           一般管理、事業計画立案、ビジネスコーディネーション

           原材料及び部品の調達

           製品の研究開発

           技術支援

           マーケティングおよび販売促進

           人事管理、トレーニング

           事業活動の各方面における関するアドバイス・助言

           経済と投資の分析および研究

           ローン管理およびコントロール

           財務管理センターの運営

           その他BOIに認可されたサービス

 

Q:BOIの奨励対象となるための条件はあるのでしょうか。

A:以下の条件が設定されています。

           タイにおいて設立された会社であること

           払込資本金が1,000万バーツ以上であること

           IHQとしての事業内容につき、全てBOIの承認をうけていること

           最低1カ国、海外にある支店または関連会社を統括すること

 

注目すべきは最後の項目になり、従前地域統括事務所としての活用を目して設定されていた地域統括本部(Regional Operating Headquarters:以下ROH)において『最低3カ国』とされていた統括対象国の数が減ったことになりますので、投資家にとっては朗報と言えます。

 

Q:奨励事業となった場合、どのような恩典が受けられるのでしょうか。

A:まず、非税務恩典としては、以下のようなものが挙げられます。

           外国人が過半数または全数の株式を保有することの許可

           外国人による土地保有の許可

           外国人技術者・専門家の導入条件緩和(所謂『1対4規制』の緩和)

 

また、税務恩典としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 法人税

まず、以下の収入については、法人税の課税が免除されます。

 

  1. a) 海外にある関連会社からの以下のような収入

            マネージメント、技術、支援サービスによる収入

            ロイヤリティー

            配当

            キャピタルゲイン

 

  1. b) オフショア貿易及び関連サービスによる収入

            タイ関税法に基づく積み替え、通貨貨物を含むOut-Out貿易による収入

            マネージメント、技術、支援サービスによる収入

            ロイヤリティー

 

また、以下の収入については、法人税率が20%から10%に減免されます(対象収入額は、免税対象となる海外からの売上額を限度とする)。

 

  1. a) タイにある関連会社からの以下のような収入

            マネージメント、技術、支援サービスによる収入

            ロイヤリティー

なお、上記の法人税上の恩典を受けるためには、年間のタイ国内における受領者に対する一般管理費の額が1,500万バーツ以上であることが必要です。当該法人税上の恩典は歳入局が当該恩典を与えた日から15年間有効ですが、国際地域統括本部がいずれかの会計年度において諸条件を満たすことができなかった場合、当該会計年度から税務恩典をうける資格を失うことになります。

 

  1. 源泉徴収税

タイで事業を行っていない外国企業への以下の支払については、源泉徴収税が免除されます。

  1. a) 法人税免除対象収入からの配当金
  2. b) 関連会社への貸付のための借入による利息

 

  1. 個人所得税

IHQの駐在員への個人所得税率は以下の条件のもと、フラットレートの15%(通常は最大35%)になります。

  1. a) 暦年でタイに最低180日以上滞在すること
  2. b) 熟練労働者、または専門家として適切な労働許可証を取得していること
  3. c) 平均月額報酬が200,000バーツ以上であること

 

  1. 特別事業税

関連会社への貸付によって収受した利息に関しては、特別事業税が免除されます。

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

 

2015年8月

 

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