タイ版 会計・税務・法務
【第103回】ワークパーミット・ビザについて
Q:ワークパーミットやビザの更新に関して、政府手続きの電子化と絡めた最近の動向について教えてください。
A:タイにおけるワークパーミット・ビザの取得・更新はタイで働いている日本人にとって手間のかかる手続きの一つではありますが、最近ではタイのe-Government政策のもとで、いくつかの施策が提示されてきていますので、その内容について、以下ご説明させていただきます。
【Smart Visa Program】
これは、8月に政府から発表されたもので、タイへの投資家や高度専門家向けに発給される4年間有効なビザ制度です。特徴としては以下のものが挙げられています。1)4年間の長期のビザであり、かつワークパーミットと一体となったもので、通常のワークパーミット・ビザのように、別々に申請しかつ一年ごとに更新しなければいけない状況から比べると、更改手続き負担が軽減されます。2)配偶者・家族に対しても、Smart Visaの保有者と同じ滞在・労働許可が与えられます。3)居住地申告(いわゆる90日レポート)の提出が90日ごとではなく、1年に1回になります。このSmart Visaプログラム対象者の詳細は、まだ発表されておりませんが、実施は2018年1月を予定しております。
制度として、BOI等のいわゆる「企業」の誘致優遇のみではなく、今後は「個人」の投資家・高度専門家のタイへの誘致を進めるものの一環として、注目されます。
【BOI-Single Window Program】
BOIにおけるワークパーミット・ビザの取得は、これまでもOne Stop Service Centerにおいて、通常のワークパーミット・ビザに比べて簡単な手続きで進めることが出来てきましたが、さらなる電子化と管理の効率化のため、BOIと労働省、移民局が共同して、Single Window Programのもとで、ワークパーミット・ビザ更新の一元管理・電子化が行われることになりました。
これにより、BOI認可プロジェクトのもとでワークパーミット・ビザを取得していた外国人は、申請手続きがウェブ等電子的手段でできること、および“デジタルワークパーミット”を入手することができるようになります。また、このようなデジタルワークパーミットについては、将来(2018年10月以降を予定)は、Non-BOI企業に勤務する一定の専門職外国人も利用ができるようになることが予定されています。
【BOI-Position Approval】
今年7月にBOIのForeign Expert Services Divisionより、BOI恩典下での外国人のワークパーミット、ビザを認可する際における、各企業におけるポジション毎のガイドラインが出されました。以下がその抜粋となっております。
—Managing Director: 商務省に登録されたAuthorized Director(権限取締役)であること。
—Assistant Managing Director: このポジションで許可をえるためには、資本金1億バーツ以上で、かつ外資がマジョリティーであること。
—ソフトウェア開発やTISOで恩典を得ている会社のポジション;外資マジョリティーである場合は、そのポジションに外国人が必要な理由、および年間給与が150万バーツ以上であること。
ワークパーミット・ビザは外国人にとって、どの国で働く場合においても、手間のかかる問題ではありますが、タイにおいては少なくとも改善の傾向が見えるのは、喜ばしいことかと考えます。
なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。
著者プロフィール
小出 達也 (Tatsuya Koide)
Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー
1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。
連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th
ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk
2017年12月