タカハシ社長の南国奮闘録
第65話 世界は大成長時代
四季に恵まれてはいるが、年じゅう気候の変化に対応しなければならない日本。極寒と猛暑、地震に台風、大雨に大雪、周りを海に囲まれ、平地は少なく資源も乏しい。自然との共存は他国に類を見ない。そんな国だからこそ、今まで神がかった成長を遂げてきた。
戦後の貧困をやっとの思いで乗り越え、束の間の高度経済成長を味わい、バブル崩壊、リーマンショックを経験した。さらに人口減少、ものづくりは他国に出向き、国内は空洞化。これからどこへ向かうのか計り知れないが、さらに進化していくことは間違いないだろう。
内需の拡大に期待できない今、日本の成長の鍵は外でいかに稼ぐかである。そういう意味において、タイに進出した日本企業は、単にサプライチェーンや安価な労働力を目的とするのではなく、タイの内需以外にも目を向ける必要がある。タイとFTAを締結している近隣諸国、アメリカや欧州に製品を輸出することへの役割もより重要になってくるだろう。大手メーカーではそのような流れがすでに出来上がりつつある。
スペインなどのEU諸国でも、欧州通貨危機を乗り越え現在の成長率を保っているのは、インフラ事業をEU以外の諸国で展開しているからだ。まるで大航海時代のようである。
タイの成長を支える国々(タイプラスワン)はある意味、タイにとって重要な輸出相手国でもある。タイローカル企業の製品もこれらの国々で着々と生産されつつある。他の発展途上国に比べ、海外展開を先取りしてきたタイの経済が、次の発展に向けて動き出すのは明らかである。そういう意味では中小企業の我が社にとって、タイのマーケットはまだまだ無限大だ。同時に競争も激しくなるだろう。
海外で主流の薄型テレビは韓国勢に占められ、日本のお家芸と称された白物家電も、日本国内では売れても海外では苦戦を強いられている。競争に負けないためには新天地を目指すか、より競争力をつけるか、世界に受け入れられる商品を開発する技術を磨くか、生産体制を整えるかのどれかに絞られる。
テクニアは長年「プロダクトアウト」、つまり技術を磨いて生産体制を確立する方式で成長してきたが、これからは「マーケットイン」、つまりお客さまの必要なものを提供していく方式に切り替えていく必要がある。
歴史ある会社ゆえに変わることは難しいが、刻々と変化していく市場の中で少なくとも社長である自分自身が意識を変えて行動しないと会社の体質は変わらない。
タイに進出したことで、世界で稼ぐために必要な知識を得ることができた。我が社がタイプラスワンにおいてマーケットインを構築する日はあまり先の話ではなさそうだ。