タカハシ社長の南国奮闘録

第71話 天職とトキ

経済に波や種類があるように、人生にも波があり、個性に合致する役割がある。

中国では古来より、商売相手や敵陣の主要人物のバイオリズムや個性を統計学で図り、戦略を立てることが重視されてきた。それを知る敵側も、弱点を知られないよう生年月日を人に明かさなかったという。

生まれてくる王子をトップに適した日にちに産み落とすために、母のおなかを切開したことから「帝王切開」という言葉が生まれている。

某メーカーでも、人事や教育方法、配置、プロジェクトチームの立ち上げ時期などを決める際、統計データを参考にしているという。その会社の離職率は圧倒的に低いそうだ。やはり成功する会社は余念がない。

現代ではいろいろな統計学が有効とされており、私も天分を知る勉強会に参加している。統計学には個性の持つ本質的性質と、トキのリズムがある。特にトキの影響は想像以上だ。基本的にトキのリズムは9、10、12の周期の組み合わせで、個々の持つ本質的個性はわかっているだけで720万通りもある。そのうえで環境や努力、持って生まれたものがあるため、決めつけることはできないが、かなりの分析はできる。

すべてを用いなくても、大まかな分類と、向き不向きが理解できるだけで効率的な人員の配置や組織運営ができる。人員の配置は、適職にあてることができればそれだけでかなり有効だ。

こんな人もいるだろう。ルートセールスが得意な信頼蓄積型なのに、初対面を繰り返す新規営業でなかなか結果が出せない。あるいは、新規展開や開発に向いているのに、同じことの繰り返しでつまらない。

希望型の社員に、リスク重視のマーケティングを期待するというケースもある。適正や本人の志望動機よりも、出身校や過去の実績で人事が決まり、新たなポジションで結果が出ないケースも少なくない。

天職に思えている人たちはたぶん、これが合致していると思って間違いない。本質的な才能と個性はみな必ず持っている。それが思う存分、生かせていれば天職となって、おのずと結果に結びつく。

たとえば、ノーベル物理学賞を受賞した方々はかなり似かよっている。また、赴任期間が過ぎても日本に帰任しない先輩たちの個性もびっくりするほど同じ方向に偏っている。

教育は同じ価値観の中で行うと、負荷がなく、伝わりやすい。指示命令で動かすときは、意思が上から下に流れる陣形で組まれていると無駄がない。この流れが逆方向だと、指示や意思伝達がスムーズにいかず、チーム内でいざこざが生じやすくなる。

成功しやすい人員配置を作り上げれば、意図が伝わりやすく、同じ価値観で進められ、成長性が見込めるチーム構成になり、社員にとっても過ごしやすい会社になるだろう。  もっとも強い理想の組織は、いろいろなタイプがいてバランスのとれた組織だと私は思う。

それにしても、一番わからないのが自分自身だ。至らない部分もあるが、生まれつき持ち合わせた少しばかりの強みと個性を最大限に生かして、会社存続のために尽力していきたい。

高橋 弘茂
名古屋市中川区の精密加工部品メーカー『TEKNIA』の4代目。1969年愛知県生まれ。1989年に同社の前身『高橋兄弟鉄工所』に見習い入社。現場経験を積んだ後、『Yamazaki machinery UK ltd』などを経て2001年8月『タカハシテクニア』代表取締役就任。現在はVITPROJECT (THAILAND) アドバイザーを勤めるほか、マネジ個性学コンサルタント(セミナー開催)なども手掛ける。
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