高速摩擦攪拌接合(FSW)をタイ国内初披露 反りや歪みの少ない高強度な接合技術

工作機械大手のヤマザキマザック(本社・愛知県)が、2年ぶりの開催となるタイの国際見本市「METALEX 2022」に摩擦熱を使った部品接合技術「摩擦攪拌接合(FSW)」を搭載した製品を出展する。同技術は摩擦の熱により軟化した金属同士を攪拌して接合するもので、従来パッキンやボルトを使用していた箇所に適用することで部品点数削減・小型化・密封性向上などの効果が得られることから、主にEV化が進む自動車業界の注目を集めており採用が進みつつある。見本市ではこのほか、複合加工機や5軸マシニングセンタなども出展する。

■ EV部品生産に高い需要

Friction Stir Weldingの略称であるFSWは、2010年代に半導体製造装置部品への適用で注目を集めた技術。同社でも2016年~2018年ごろにかけて、日本国際工作機械見本市「JIMTOF」などで披露した実績がある。これが今年に入ってタイ市場での問い合わせが急増。「急遽METALEXに出展することになった」と、タイ法人MAZAK (THAILAND) CO., LTD.でGeneral Managerを務める岡本 惇氏は解説する。

背景の一つに「電気自動車(EV)部品需要の高まりがある」と岡本氏は続ける。タイでも生産が本格的に始まったEV向け部品。冷却水などが漏れ出すことのないよう、インバータやコンバータケース、モーターケースなどの主にダイカスト製品の接合に於いて高い密封性が求められているのだという。その切り札として白羽の矢が立ったのがFSWの技術だった。

仕組みはそう難しくはない。回転させた工具を接合素材に押し込み、生じた摩擦熱を使ってアルミなどのダイカスト部品の表面を軟化。素材同士を攪拌させ、接合させるというのが基本的なメカニズムだ。接合温度が融点以下に抑えられることから、部品の反りや歪みが少なくなり、精度も高く保つことができる。それでいて溶接などの従来技術に勝る強度を得られる点が特徴だ。

加えて、溶接時に発生するヒュームや飛散する粒子のスパッタ、さらには有害な光線についても発生しない点も注目される。内燃機関を持たない次世代のEV生産とあって、クリーンな作業環境が実現できることにも生産現場の関心は集まる。「この部品の接合にはFSWを使うように」などと、発注元から接合方法を指定する動きも広がっているという。

■ 攻めのトータルソリューションを展開

日系や欧米ではまだライバル企業は少ないが、新興国の台湾や中国のメーカーの中にはFSWの専用機で攻勢をかけるところも少なくない。タイ市場でも最近になって見られるようになったが、そこは「トータルコストで勝負」と岡本GMは語る。

接合速度を倍以上に上げることができ、バリなどの発生も少なく後工程作業の手間を省く精度の高さは、無駄な時間を減らし生産効率の向上に繋がる。また、高いセンシング技術を使って加工中にモニタリングを行いながら自動調整する機能は、MAZAKが工作機械メーカーだからこそ提供できる特性でもある。

機械に装着する工具や治具、加工プロセスなどに対してオーダーメイドで応えられる高い柔軟性と機動力も強みの一つだ。「これらとFSWを合わせたトータルソリューションで勝負していきたい」と攻めの姿勢を見せる同社の今後の展開に期待したい。

 

TAKAMATSU MACHINERY (THAILAND) CO., LTD.
BANGKOK HEAD OFFICE: 888/59 Moo 9, Bangpla, Bangplee, Samutprakarn 10540 Thailand Tel: +66(0)2-136-7831~3
EASTERN SEABOARD BRANCH: 848/14 Moo 3. Tambol Bo Win, Amphur Siracha, Chonburi 20230 Thailand
山下(Mr. Yamashita) Mobile: +66-(0)81-924-3004 Email: yamashita@takamaz.co.jp

2022年11月3日掲載

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