今だからこそ取り組むべき課題がある 生産技術部を新設。社内の体力強化を目指す
「生産技術部マネージャーを命ずる」
生産部門を統括する樋渡直紀氏の発案により今年初め、タイ法人のFujilloy (Thailand) Co.,Ltd.内で一つの辞令が発せられ、話題となった。「生産技術部マネージャーを命ずる」。名宛人は、操業時から勤務する勤続16年のタイ人ベテランエンジニア、Wachira氏。43歳。年齢を感じさせない人なつっこい笑みは多くの上司や部下からも慕われ、新部署新設を伴う機構改革の中で白羽の矢が立った。 Wachira氏以下の総勢4人は全てタイ人で構成。業務内容は主に2つと指定された。顧客企業の困り事・相談事を受けた提案力の強化及びサポート力の向上と、徹底的に無駄を省くための生産ラインのカイゼンだった。 当たり前のことが当たり前とならなくなるのがフル生産体制の好況期であれば、そうではない今は社内に目を向けたアプローチに立ち返ることが大切な時期だ。人望も厚く面倒見の良いWachira氏を、次の世代を担う若きエンジニアたちの指導係に抜擢したところに、会社が掲げる中長期戦略が見て取れる。「教育」と「カイゼン」が今を乗り切るカギになると考えている。 部下の指導だけにとどめておくつもりはない。まだまだ40歳代を迎えたばかり。ちょうど脂が乗ってくるころでもある。自ら営業窓口の先頭に立って取引先回りも重ね、顧客の抱える問題を率先して解決していく。同時に自身のさらなる成長も求められる。ひいてはそれが組織全体の営業力の底上げとなり、傘下の部下たちに背中を見せることにもつながる。多大な期待を背景に、多忙な時を送っている。
なお魅力的な東南アジア市場
日本人の営業担当社員も増員した。まだまだ日本からの輸入に頼ることが多い高品質の超硬金型や工具。同質同種のものが、現地で調達できるという認識を少しでも広めていきたい、知ってもらいたい。そのための展示会への出展や交流会への参加。さらには、インターネット専門交流サイトへの登録など日系企業との関わりも積極的に展開していきたいと考えている。わずかな出会いに、マッチングの可能性を求めている。 新聞やテレビでは盛んにEV(電気自動車)など次世代自動車の話題が喧伝され、あたかも市場の隅々まで行き渡っているかの感がある。が、果たしてそうなのだろうか。「環境への配慮は続けなければならないが、まだまだ東南アジア市場は成長途上でガソリン車が主流。当分はこの流れは続くだろう。その意味では、ここには超硬金型が活躍できる余地がなお多く残っている」と語るのは輪竹MD。タイを含むアセアン市場の現状に合わせた、身の丈の展開が必要だと強調する。 だからこそ、現地調達が多くのメリットを生むことを伝えていきたい。例えば、圧倒的に優位に立てる短納期。同社が最も強く自信を持ってアピールできる点だ。現地調達ができれば、日本からわざわざ送料をかけて送る手間も時間も大きく削減できる。しかも、すぐにFUJILLOY工場があるため、わずかな感触の変更や微調整にも対応できるなど事前事後の濃い相談が可能。こうしたことを総合的に考慮に入れた時、見えてくるのがトータルコストダウン。選ばない理由がない。 超硬素材を使用する上での利点も紹介していきたい。金型や工具は生産を繰り返すうちに摩耗していくことは、いわばモノづくりの宿命。だが、それが超硬素材であった時、新規調達をする前に検討ができるのが摩耗した金型や工具を改修することでできる再利用。超硬素材がゆえの特性がここにある。特に冨士ダイスの超硬製品は、いずれも高品質・長寿命で知れた超逸品。試してみるだけの価値は十分にある。
自動車市場に原点回帰
思い起こせば2019年は、自動車を中心とした部品の輸出がトータルで15%も落ち込んだ苦節の一年だった。「1社ごとの注文量が減るということは、それだけ取引先の数を増やさなければ会社経営は維持できないということ」と決意を新たにするのは営業統括の渡邉弘一氏。かつてない危機感を抱きながら、組織内の手綱を絞めることも忘れない。靴底を減らす毎日だ。 そんな中で、同社が「原点回帰」と位置づけるのが自動車産業へのアプローチ。「冨士ダイス」「FUJILLOY」ブランドの金型は、世界の自動車や二輪車の生産に長年にわたって貢献してきたことは衆目の一致するところ。エンジン、トランスミッション、ステアリング、サスペンション、ラジエター、マフラー等々。使用されない部品を見つけることのほうが難しい。 「自動車産業は裾野も広く、モノづくりに掛ける原点を見つめ直すには一番いい」と輪竹MDは解説する。ここで部品一点一点から洗い出しと見直しを進め、新たな生産方法や事業展開、可能性を提案。新規顧客の開拓を進めていく考えだ。原点回帰は、混沌とした現状を打開する重要なファクターであると信じている。 そして、その先の数年後に景気が戻ってくれば、同社が最も得意とする付加価値の高い複雑形状の金型「異型」の受注も回復してくるだろうと読む。ただ、それは時期が到来してからでは間に合うものではないことも十分に認識している。機構改革、新規部門の設置、人材の抜擢、社内教育の強化、カイゼンの推進など、日々の延長上にあることはもはや明らかだ。「だからこそ、今やらなければならないのです」。そう言い切ってインタビューを終える輪竹MDの言葉は力強かった。
2020年3月1日掲載
会社情報
会社名 | FUJILLOY (THAILAND) CO., LTD. |
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住所 | Amata City Chonburi Industrial Estate 700/296 Moo.1 Tambol Bankao, Amphur Panthong, Chonburi 20160, Thailand |
お問い合わせ先 | Tel: +66-92-280-9700 E-mail: watanabe@fujilloy.co.th http: www.fujilloy.co.th |
担当者名 | Mr. Watanabe(日本語) |