顧客が欲するものを提供する 1世紀の実績が後押しする専業ばねメーカー

自動車向けや家電向けなど幅広い用途で活躍する「ばね」。その専業メーカーとして、ちょうど100年前に誕生したのが奈良県生駒市に本拠を置く「株式会社森田スプリング製作所」だ。1990年代になって初めての海外工場となるタイに進出。日本の本社工場との2拠点制で相乗効果を高めてきた。タイにもばねメーカーは数々あれど、対応がスピーディーで、無理が効き、顧客のニーズに的確に応えられる事業所はまずそうはいない。構築したローカル・ネットワークで、さらなる市場への浸透を目指す。

▶ 町工場からの再開

森田スプリング製作所は、現社長森田征樹氏の曽祖父惣五郎氏が大阪・此花区で創業した。自動車向け、軍需向けに各種ばねの生産・出荷を行っていたが、戦争で被災。一時中断の後、惣五郎氏の実家がある生駒市に移転した。自宅の一部を工場に改築しての再開。戦後は、町工場として家電、車載部品など民生品を中心に開発・製造を続けてきた。
創業当初からの不変の経営方針は、顧客の求めに迅速に対応し、小回りを効かせ、的確な対応と安定した品質の維持・保証だった。こうした堅実な姿勢が顧客からの評判を集め、社業を拡大していった。顧客が欲する物を提供する。特注品の受注拡大がこれを後押しした。

▶ グローバル化の流れを受けタイへ

タイに進出したのは21世紀を目前とした1994年5月。取引先の海外移転など生産のグローバル化で、市場では部品を現地調達する必要性が高まっていた。顧客とともにあるをモットーとする同社においても、海外法人・工場の設立は自然な流れだった。日本本社と同様に、設計、生産、検査、出荷までを自前で賄える体制をタイでも当初から兼ね備えていた。
とはいえ、進出当初はまだタイのモノづくりが本格化したばかりの黎明期。サプライチェーンも脆弱で、容易に活躍できる商流はまだなかった。一軒一軒くまなく事業所を訪ね、ニーズに対応した受注を重ねることで次第に販路を拡大していった。日本でも人と人とのコミュニケーションを大切にしてきた同社。その姿勢が現地での市場開拓につながった。
数ある部品の中でもばねは、完成品の最終段階で必要とされるケースが多い。微調整のためには欠かせない最終工程の部品だ。だからであろう。短納期で、時に無理が要求されることも少なくなかった。一方で、そうしたニーズを手堅くこなし続けたことで、取引先との信頼は深まっていった。100年間で蓄積されたノウハウと経験・知見が、海外事業拡大の大きな自信と励みを作り上げた。

▶ 線径の太いばねも対応可能

タイ工場では、線径4.0mm以下のばねを中心に生産を行っている。日本からの受注も多く、なくてはならない生産拠点だ。日本本社工場は細い線径の加工を得意とし、上下下達ではない対等の関係が乗数的な相互補完効果を生んでいる。
その現場を現地法人のGeneral Managerとして率いるのが、2004年入社の山田真実氏だ。前職は非製造業ながらも持ち前の言語力とコミュニケーション能力で、製造現場のタイ人従業員のハートをつかんできた。
タイ法人は設立から今年で28年。「徹底したローカライズ化と意思の交流で、日本品質への理解や日本人スタッフの意向が伝わるようになった」(山田氏)
ベテラン技術者が新人社員を育成し、それが循環してく仕組みもこの間に備わった。20年ほど前までは、日本から定期的に技術指導を招いていたが、それも必要なくなった。タイ人スタッフだけで後進を育てるサイクルが整ったことで、生産性の向上や品質の維持管理も格段に進むこととなった。

▶景気に左右されない
安定したばねメーカーを目指す

グループ社長を務める森田氏は、07~09年までタイ法人でGMを務めた経験を持つ。日本本社に帰任後の13年4月に、4代目社長として就任した。タイ赴任時代にタッグを組んだ山田氏とは気心知れた仲で、意思疎通に欠くこともない。阿吽の呼吸で、タイの現場を任せている。
タイ市場をハブに、アセアン一円を有力な市場と捉えている。ベトナムやタイではチャイナ・プラスワンも進んでいる。「アセアン市場の伸び代と潜在性はまだまだある。景気動向に左右されない安定したばねメーカーを目指したい」と森田社長。視線の先に顧客の困り事を常に見据え、「大手企業ができないような小回りの効く信頼される営業と品質で、チャレンジを重ねていきたい」とも語った。

2022年9月13日掲載

会社情報

会社名 MORITA SPRING (THAILAND) CO. LTD.
住所 140 Moo 17 Bangplee Industrial Estate, T.Bangsaothong, A.Bangsaothong, Samutprakan 10570
お問い合わせ先 Tel:02-705-3532-4 E-mail:yamada@morita-spring.co.th marketing@morita-spring.co.th Web:https://morita-spring.co.th/jp
担当者名 Yamada
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