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世耕経産相率いる大規模経済ミッションが来タイ
日タイの経済関係がさらなる深化を遂げるのか、その試金石だ。9月11日から13日までの3日程にわたりタイ経済ミッションが行われ、日本から世耕弘成経済産業大臣をはじめ日本企業幹部約570名が来タイした。タイへの経済ミッションとして過去最大級の規模となった。6月にソムキッド副首相ら訪日した際に要望があったという。9月11日にはプラユット暫定政権首相と世耕経産相が会談。さらに日本企業訪問団がプラユット首相を表敬訪問した。
12日には日タイ修好130周年を記念し、タイ工業省、商務省、日本の経産省、日本貿易振興機構(ジェトロ)主催によるシンポジウム「コネクテッドインダストリーズ構築に向けたタイランド4.0シンポジウム」が行われ、世耕経産相、ソムキッド副首相ら両政府の重鎮が出席したほか、タイの日系企業関係者ら1,000名以上が参加した。
アピラディー商務相は「両国にとって計り知れないメリットが生まれる」と経済ミッションを歓迎。ウッタマ工業相は「タイランド4.0政策を進めるには、日本の協力が欠かせない」と期待し、「東部経済回廊(EEC)プロジェクトは政府の旗艦プロジェクトとも言える重要なプロジェクト」と強調した。一方、ジェトロの石毛博行理事長はタイの少子高齢化や高度人材の不足に触れながらも、タイランド4.0政策およびEECについて「タイが次のステージへ飛躍するための新機軸。EECはタイのみならず、タイと未来を共にする多くの日本企業の命運を握っている」と評した。さらなる政府のR&D支出の増加、インフラの整備の必要性なども訴えた。
基調講演に立った世耕経産相はまず「1990年代にタイに長期滞在した経験がありますが、その頃に比べタイの経済発展は目覚ましい」とタイの成長を称え、日本政府が目指す産業のコンセプト“コネクテッドインダストリーズ”を紹介。「サプライチェーンに参加するすべての企業がメリットを受ける。一つのプラットフォーマーが利益を受けるのではなく、みんながデータを出し合い、共有することでメリットを受ける産業の姿を目指したい」「サプライチェーンが国境をまたがって広がるアセアンこそ、コネクテッドインダストリーズの効果が大いに発揮できると確信している」と語った。
ソムキッド副首相は基調講演で「今後の10年、20年先はアジアの時代。世界経済の中心になっていくでしょう。そのアジアの中心となるのは、アセアンであり、GMS(大メコン圏)、BIMSTEC(ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ)です。その真ん中にタイがあることは否定できない事実です。中国の一帯一路構想もタイを通らなければならない」とタイの地政学的優位性をアピール。「日本がタイと一緒にメコン圏の人材を育成することが重要。メコン圏が成長すればタイの魅力も高まる」などと語り、RCEPなどにおける両国の協力の重要性を述べた。原稿に目を通さず30分近くに渡って熱弁をふるった。
同日にはタイ商工会議所、タイ工業連盟と日本経済団体連合(経団連)、バンコク日本人商工会議所の間でタイの10の重点産業の商業推進の協力に関する覚書が結ばれ、タイの工業省工業振興局と日本のJCサービスの間でバイオマス発電をはじめとするエネルギー政策などに関して覚書を締結した。その他、タイのEEC事務局と国際協力機構(JICA)のデジタル技術及び技術革新を通じたEEC開発に向けた協力覚書など計7本の覚書が結ばれた。その他、日タイの有力企業幹部によるパネルディスカッションや、日タイの企業による大規模なビジネスマッチングが行われた。13日にはレムチャバン港やウタパオ空港、イースタンシーボード工業団地など東部経済回廊の視察も開催された。
タイ政府が目指す産業の高度化。裏を返せば、タイの将来が懸かった取り組みと言える。それに日系企業も無関係ではない。着実な計画の進展を願わずにいられない。