日本一の鋼材プレートメーカーが事業拡大 アユタヤに新営業所、工場も設備増強へ

特殊鋼などの加工、販売を手掛ける藤巻鋼材などを傘下に抱えるF&Cホールディングス(本社:名古屋市東区、藤巻秀平社長)。多数の機械設備導入と24時間365日の製造体制により、顧客から図面で指示されたサイズ、精度の鋼材を、求められた時間と場所にスピーディーに届けるFFP(FUJIMAKI FREESIZE PLATES)と名付けたオーダーメイド鋼材プレート製造サービスを手掛け、国内No.1シェアを誇る。2011年に進出したタイでも現在、積極的な事業展開を進めようとしている。その内容を追った。

タイでもオーダーメイドに対応

F&Cホールディングスは1948年に愛知県名古屋市瑞穂区で創設された鋼材販売の藤巻鋼商店をグループの淵源とし、藤巻鋼材や藤巻工範、スチールポリッシュなど完全子会社を地域ごとに展開。中部・東海地方を中心に関東、東北、九州まで営業所、工場を設け、藤巻グループを形成している。自動車や産業機械、家電など幅広い業界に鋼材を供給し、縁の下の力持ちとして日本の産業界を支えている。

成長を後押しているのは、顧客の図面通りに面削り、仕上げ、二次加工などをしてから納入するFFPサービス。顧客は仕上げなどを行わずに済み、そのための設備、人員を抱える必要がない。特殊鋼以外にも、ステンレス、アルミニウム、銅などの鋼材に対応している。

藤巻スチール(タイランド)は日本が円高に見舞われていた2011年、タイのアマタシティ・チョンブリ工業団地に設立された。FFPを掲げる日本と同様に工場を構え、カッティング8台、ガス溶断機2台、フライス12台を現在揃えている。ラインは24時間稼働で、顧客が望むサイズの鋼材プレートを日夜製造している。

日本と異なる点は、タイでは在庫を抱えていること。日本はメーカー、問屋、小売りといった役割分担がはっきりしているが、タイには問屋のような企業がほぼ皆無。SS400、S50Cを中心に日本など各国から仕入れた鋼材を常時1,000トン近く、在庫している。自社のロジスティクスで、アマタシティ・チョンブリ工業団地からタイ全土まで配送。従業員は約100名。離職率は約3%という定着率の高さを誇る。

新営業所で顧客サポート強化 フライス盤導入でコストダウン

金型メーカーや設備メーカーを中心に、日系企業やタイ、韓国系など1,000社以上の顧客を抱え、黒字転換を果たした。これを機に、同社では攻めの経営に打って出ようとしている。一つが新たな営業所の開設。既にアユタヤに物件を確保し、7月にオープンする予定。さらにラヨーンへの進出も計画している。営業所開設で顧客へのサポートを強化し、需要の掘り起こしを進める。藤巻スチール(タイランド)の髙田三能社長は「私どものビジネスとして、お客様の近くにいて、頻繁に足を運んで信頼を勝ち取ることが大前提。ここから(上記のような場所へ)通うと一日に一社、二社というのが限界になってきます。近くに営業所を出すことで、お客様への訪問者回数を増やしていきたい」と狙いを語る。

また、工場内にも新たに日本製、台湾製のフライス機を計4台追加導入する。「機械が一日に削れる量は決まっています。私たちは24時間365日、稼働し続けるというのが強み。既存の機械はもうそれに近いくらい稼働しています。さらに生産量を増やしていこうとすると、機械の純増しかない。弊社が来て鋼材プレートのリードタイムが2日縮んだ、とお客様から言われます。それをさらに縮めていきます」。

少ない額ではない新たな設備投資。しかし、髙田社長はそれによって納期の短縮はもちろん、コストダウンも図れるという。「機械が少ないと、サイズが異なるものを一つの機械で作らなければなりません。それを、小さいモノは小型の機械で、中型のモノは中型、大型のモノは大型と分ければ、流れるペースが早くなります。そのため機械を導入して、さらに安くすることできます」とからくりを説明する。

日本人は髙田社長のほか、工場長の伊藤優一氏が駐在。また、英語が堪能な野沢衣里氏と業界経験豊富な石村謙治氏が営業を担当している。

新規分野の顧客やアルミ拡販も

沖縄出身の髙田社長はF&Cホールディングス傘下のスチールポリッシュに入社後、グループ内では一貫して製造畑を歩み、タイに赴任する前には製造部長、総工場長、工場長などを歴任した。現在はF&Cホールディングスの海外事業部長および2014年から稼働しているインドネシア法人PT.FUJIMAKI STEEL INDONESIAの社長も兼任している。インドネシアに関しては「日本企業の撤退が続いている」と状況を語る。

タイの景況は今後も堅調と見る。それは、タイの製造業の集積によるところが大きい。「メーカーが東南アジア各国へ展開しようとした時に、インドネシア、ベトナムという選択肢があったと思うのですが、タイで製造して、輸出して組み立てる傾向にある。まだタイに集まってきている。東南アジアのものづくりの中心になるのはタイ」と見る。

鋼材を大量に使用する建設業など新規分野の顧客獲得も狙う。髙田社長自身もかつて建設業界で働いていたことがある。「日本企業だけでなく、他の国からもタイに進出してきている。彼らは仕入れ先を持っていません。日本では敷居がまたげないところでも、ビジネスチャンスがあるのではないか」と機会を伺う。加えて、アルミの拡販も図る。

昨年9月からタイに赴任して約1年。「日系企業がこれだけ進出していますし、生活面も含めて3割くらいは“日本”。海外に居る気がしません」とタイの生活を表する。なにより、黒字化で様々な手が打てるようになった。「ようやくエンジンがかかった。より安く、より早く、より正確にお客様の元に届けられるようにしたい」。本社同様の顧客中心主義で、さらなる事業拡大に挑む。

会社情報

会社名 Fujimaki Steel(Thailand)Co., Ltd.
住所 700 / 744 Moo.1 Tmabol Panthong, Amphur panthong, Chonburi 20160
お問い合わせ先 Tel:038-185-429 Fax:038-185-430 E-Mail : info@fujimaki.co.th
担当者名
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