ジャストサイズの段ボールが製造可能 物流ソリューション事業を拡大へ

タナックス(本社:京都府京都市、田中一平社長)は、1907年創業で100年超の歴史を持つ老舗企業。筵(むしろ)や縄、油紙などの包装用資材から始まり、1962年には片面に段ボールの波を施して巻くことができる「クレダン」を開発して特許取得、事業の拡大に成功。その後、1972年に日本で初めてペーパーディスプレイシステム(紙製販促什器)を開発、商品化し、数々の大手企業が店頭でのプロモーションに採用していった。現在は「セールスプロモーション」「包装・梱包」の2つの事業が共に年間100億円近い売上を上げている。

ボックスオンデマンドが物流環境改善

同社では今、「物流ソリューション」を新たな事業の柱にするべく注力している。今年1月には従来あった組織が事業部へと格上げされた。同事業部の三浦衛副本部長は「今、まさしく欧米や日本ではEコマースがものすごく拡大しています。アジアもこれからだと思います。Eコマースを中心としたビジネスの成長に合わせて、我々としてはEコマース、製造業の事業者に貢献できるようなソリューションを提供していこうという目的で事業部を立ち上げました」と背景を語る。

物流ソリューション事業の核となるのが、様々な形状・サイズの段ボール箱を1個から製造できる「ボックスオンデマンド」だ。ボックスオンデマンドは入力された商品サイズを基に、適正なサイズの段ボールケースを即座に製造する、いわば究極の小ロットシステムとも言える。内部に入れる緩衝材の使用が最小限に抑えられるほか、箱の3辺サイズが縮小するため積載効率が向上し、配送コストも削減できる。

また、流れ方向にエンドレスに続く段ボールシート「パタダン」を使用し、必要な時に、必要な分だけケースを製造するため、多品種の段ボールケースを在庫する必要がなく、個々の商品に適したケースを探す手間も省ける。家具や建材など数mの大きさになる規格外のケースも製作可能で、特に、従来いくつもの箱を繋ぎ合わせるなどしていた長尺、異形商品の包装作業を大幅に簡略化する。「20人ほどいた包装ラインが5人になったというお客様もいます」と三浦氏。既に自動車部品や建材、家具など各国の各種業界で導入が進んでいる。

毎回異なるサイズのケースだったとしても1分間に3個から3.5個、同じ形状なら1分間に最大15個ほど作成可能だ。マシンにはあらかじめ標準的な100種類近くのケース形状が登録されているほか、新たな形状を登録することもできる。

「SCANPACK TABLE」を使えば、商品をテーブルにセットし、バーコードリーダーを当てるだけで3辺データを計測、ボックスオンデマンドマシンにデータが送られる。一方、「ハンディースキャナー」なら、あらかじめ商品情報と箱サイズが紐づけされたデータを登録しておくことで、バーコードを読み取るだけで適切なケースの切り出しができる。

ボックスオンデマンドマシンで切り出したA式のシートにホットメルトを塗布してA式ケースを製造する「E-GLUER」や、商品名やバーコードを印刷する「PRINT ON DEMAND」といったオプションマシンも用意している。

自動追従ロボットや次世代AGVも提案

ボックスオンデマンドは商品の包装・梱包過程のソリューションだが、タナックスではその他にも様々な物流環境の改善提案を行っている。

例えば、商品のピッキング。同社が取り扱う追従運搬ロボット「サウザー」は、レーザセンサーで前を歩く人を認識して自動で追従し、工場や物流倉庫、店舗での運搬作業をサポートする。積載量は120kg、航続距離20㎞(※使用条件による)。傾斜も乗り越えられる。移動機器も認識できるため、例えばサウザー同士を連ねることも可能だ。障害物を避ける衝突回避機能もある。リードで繋がったジョイスティックを使えば、人の手による細かな操作も可能となる。もちろん地面に張られた反射テープに沿って無人で動くAGVとしても使用できる。

また、ガイドレスAGV「S-CART」は磁気テープなどのレール敷設が不要な次世代のAGV。まずタブレットによる遠隔操作で「S-CART」を動かすことにより、自動的に経路周辺地図を読み込み、その後実際の経路を走行することで軌跡を記録、指示に基づいた経路を走ることができる。低床型なので潜り込みも簡単。複数台の運用もできる。レイアウト変更が多い現場の搬送や使用場所の移動にも柔軟に対応する。

その他にも、空気圧式の人工筋肉で重い荷物を扱う作業をサポートする腰補助用マッスルスーツも提供している。三浦氏は「これらを一体でトータルな物流ソリューションとして提供していく方針です。他にも取り揃えていきたい」と意気込む。

今年6月には、「お陰様で日本では物流ソリューション事業が無事立ち上がってきました。次は東南アジア」(三浦氏)と、タイのバンコク国際貿易展示場(BITEC)で6月14日から17日まで開かれた加工包装産業の国際展示会「ProPak Asia 2017」に初出展。「ボックスオンデマンドマシンMIDI COMPACK」を東南アジアで初めて披露した。タイをはじめ東南アジア各国から来場者があり、大きな反響があった。三浦氏は「多くのお客様に興味を持っていただけました。まずはボックスオンデマンドで認知していただき、それを中心として幅広い物流ソリューションを提供していきたい」と語る。

ボックスオンデマンドの展開と合わせて、近い将来にマレーシアの段ボール工場と協力して「パタダン」の製造も計画する。現地生産がスタートすれば、日本から輸出するより輸送コストを大きく圧縮できる。製造業を中心に日系企業が集積するタイも重要な市場だ。「メーカーには搬送、梱包ソリューションが欠かせません。また、多品種少量生産を行っているメーカーも多くいらっしゃる。ボックスオンデマンドを中心としたソリューションでコストダウン、省人化に貢献したい。またタイでもEコマースがこれから拡大していくと思われます」(三浦氏)。タイでのビジネスが大きくなれば、法人設立も検討する。

物流ソリューション事業部としては、今後3年ほどで年間売上50億円を目標とする。梱包コストの削減や省人化に大きく貢献する数々のソリューションで、物流ビジネスの未来を実現する。

会社情報

会社名 TANAX, INC. 物流ソリューション事業部
住所 東京都品川区大崎1-6-1 TOC大崎ビルディング18F
お問い合わせ先 Tel:+81-(0)3-3495-6055 Fax:+81-(0)3-3490-2240 
担当者名 成澤 E-mail:narisawa-y@tana-x.co.jp 増田 E-mail:masuda-h@tana-x.co.jp
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