タイ版 会計・税務・法務

第128回「移転価格税制の本格的施行/付表の様式」についてです。

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

今回のテーマは、 「移転価格税制の本格的施行/付表の様式」についてです。

Q: 2019年の決算期からの移転価格税制の実施について、法人税納付時の付表明細が発表になったと聞きましたがどのようなものでしょうか?

A: 本稿(2018年10月号)でもお伝えさせていただいた通り、2019年の1月以降に開始する事業年度についての法人税申告から、タイにおいても移転価格税制が「本格的」に実施されることとなり、それにともなって、年次申告書においても、関連会社取引に関する付表提出義務が発生することになりましたが、その内容について、今般税務当局からようやく発表されました。以下では、主要項目について、簡単に解説させていただきます。  まず、当該年度における取引の有無にかかわらず、国内外の関連会社リストを作成し、かつ、取引の有無を明記します。  2018年10月号でお伝えしたように、関連会社の範囲はほぼグループ企業全体をカバーするようなものになっており、かつ、取引の有無にかかわらず全社記載することが要求されているようですので、グループ企業数が多い会社様にとっては、このリスト作成のみでもそれなりの負担になるかと思います(また、タイ国内におけるグループ企業も対象になっています)。この一覧表の作成については、本社と連携して進められることをお勧めします。  次に、取引のある関連会社との「取引明細」を作成しますが、項目としては1)主たる事業からの収入(売上)、2)その他の収入(売上)、3)原材料・製品の仕入れ(購入)、4)土地設備の購入、および、費用支出の項目として5)ロイヤルティー 、6)役務支払い、7)利息、8)その他、とわかれ、最後に9)借入金残高、10)貸付金残高の数値を記載することになります。  この項目は、1)と3)が経常的な事業における関連会社との取引をカバーしており、会社全体の利益率との関連が高い一方、他の項目は独立して移転価格税制の対象になる可能性のある項目とも考えられます。したがって、会社全体の利益率に加えて個別取引についてもモニタリングできるような付表となっています。  上記に加えて、特殊要因の有無について、a) グループ内事業再編の有無、b) グループ内での無形資産譲渡・移転の有無についても報告義務が加えられました。  グループ内での事業再編や無形資産取引は、利益移転や節税の温床になりやすいことから、こうした取引があった際には、税務署としてより注意深くチェックができるように、このような項目を設定したものと思われます。もっとも、ここでいう事業再編や無形資産譲渡がどのようなものまで対象になるのか、やや不明瞭な点もあるかと思われます。  なお、この他に連結会計を行っているかどうかもチェックする項目もありますが、これは主としてタイ上場企業が対象になるかと存じます。  今回の付表の制定により、税務当局としては、移転価格に関する税務調査を行う対象先が、より簡単に選定することができるようになるかと思います。当地において、赤字が続いて税金の納付がなく、関連企業取引が多い会社様は、移転価格税務調査のリスクが高くなってきますので、十分な対応が必要と思われます。

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

小出 達也 (Tatsuya Koide)

Mazars(Thailand)Ltd. ジャパンデスク パートナー

1987年京都大学法学部卒業。旧東京銀行入行。中小企業事業団 国際部、東京三菱銀行 マニラ支店(1997年12月から2001年3月)、同行国際業務部勤務(国際財務戦略業務)を経て、2005年4月に公認会計士資格取得。2008年からMazarsタイにおけるJapan Desk責任者に就任。国際財務戦略に関する豊富な実務経験をもとに、総合的な視点からタイにある日系企業の指導にあたって、現在に至る。公認会計士(米国)、公認金融監査人。

連絡先:02-670-1100; Email: Tatsuya.Koide@mazars.co.th

ホームページ:http://www.mazars.co.th/Home/Our-services/Japanese-Desk

2020年01月01日掲載

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