泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第29回 『5種類の奨学金』 

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、前号、前々号で触れたタイでの奨学金の重要性とTNI生の利用状況を踏まえ、奨学金の具体的内容を紹介します。

5種類の奨学金

TNIでは、学生に対して5種類の奨学金を提供しています。図2・表2にあるように、奨学金の2013年度利用者は全学生の24.6%に当たる882人ですが、このうち政府奨学金(教育ローン)利用者が74%を占める一方、その他の奨学金も重要な意味を持っています。特に日系企業他の協力を得るTNI奨学金は、タイ全土から優秀な学生を集める戦略的意味を持つと位置づけています。なお奨学金の対象者は、大学支給基準に従い審査のうえ決定します。

 

 

TNI奨学金

TNI奨学金は、バンコク日本人商工会議所、日系企業、公益法人・団体、個人等からご協力いただき、学生に提供します。奨学金は、日本の企業文化に関心を持つ優秀な学生をタイ全土から広く募集するのに役立ちます。この奨学金で、特に学費・設備などで優遇される国立有名大学などに伍し、学費面などで経済力のない家庭からも募集できるようになり、全体学生レベル向上に寄与します。そしてタイの大学では革新的な、専門力、語学・コミュニケーション力、組織力に焦点を当てて人材育成します。

こうして日系企業など、産業界のグローバルニーズに合致した人材を育成するため、年間200人(全学部生の5%に当たる、50人×4学年の学生)の意欲を持った優秀な学生にTNI奨学金を提供します。なお奨学金は年間学費6万バーツと生活費3万バーツを提供するSS(Special Scholarship)、学費6万バーツのFS(Full Scholarship)、学費半額のHS(Half Scholarship)に分けて提供します。2013年度は188人に支給され、詳細は表3の通りです。

学業支援奨学金 Student Support Scholarship

経済的理由で学費を納めることが困難な学生に支給します。2013年度は31人に支給し、PAI-NET(産業分析人ネット)、住友電工グループ、タイ国立銀行、また個人ドナーからご協力いただきました。

タイ政府奨学金(教育ローン) Government Student Loans

政府からの財政援助を受け、教育省大学委員会を介して支給される2つの奨学金で、返済の義務があります。2013年度はTNI全学部生の20.5%に当たる651人が利用しました。

(1)コー・ヨー・ソー  กองทุนเงินให้กู้ยืมเพื่อการศึกษา((ศยก

政府奨学金の9割以上を占めるこの奨学金は、下記の3つの条件があります。支給対象費目は学費と生活費で、学費は直接大学に払い込まれる一方、生活費として月額2,200バーツが直接学生の口座に振り込まれます。

1)年間7万バーツまで借り入れが可能。

2)申請できる学生は世帯あたりの年収が20万バーツ以下が対象。

3)大学修了後2年は返済が免除されるが、3年目からは収入がなくても返済の義務がある。

(2)コー・ロー・オー  โครงการเงินกู้ยืมเพื่อการศึกษาที่ผูกกับรายได้ในอนาคต(กรอ)

以下の3条件がありますが、生活費は対象でなく、学費のみが大学に払い込まれます。
1) 技術系学生のみが支給対象で、年間7万Bまでの借り入れが可能。

2) 申請学生の世帯あたりの収入に制限はない。
3) 本人の就職後の月収が16,000バーツ以上になったときから返済義務が生じる。

海外留学奨学金 Scholarship for Study Abroad

TNIが国内外の機関と協力し、留学(交換留学)もしくは海外研修旅行のための奨学金3万バーツを年間3人(各学部1人)に支給いたします。提携機関からも学費・宿舎などの支援があります。2013年度は約50人が利用しました。

学部優等生奨学金 Scholarship for Excellent Students

各学部課程の最優秀者が基準で、2013年度は11人の学生に各3万バーツを支給しました。毎年、先生を敬う日(7月)に奨学金授与式があります。

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