泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第74回『タイの洪水再発の可能性と長期的展望』 

タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号と次号では、タイ政府の治水委員を務める、水資源工学の専門家であるスチャリット・チュラーロンコン大学准教授(講演時は、泰日工業大学(TNI)の親団体の泰日経済技術振興協会(TPA)会長とTNI副理事長も兼ねる)による6月13日のJセミナーでの講演をまとめたものをご紹介します。今年は、日本では40℃を超える一方、世界各地でも洪水被害が起き、タイでも1月から雨が降る天候異常でした。講演によれば、2011年の大洪水を踏まえた対策が採られて、同量の雨量に対しては、再発防止策がなされているとのことです。                編者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

洪水再発の可能性と長期的展望 スチャリット クーンタナクンウォン Dr. Sucharit Koontanakulvong

1.2011年のタイ大洪水
写真①②は、日系企業が多い工業団地の被害地域を写したもの。当時は、都市部や農村だけで、工業団地は政府などの意識対象になく、この大洪水以後に対象になった。
特に都市部、商業地域、工業地帯の主要経済圏のインフラを整備し、チャオプラヤー川の西は2,500㎞²の領域、東地区は3,860㎞²の領域を対象に運河の浚渫作業(写真③は、植物を整理し、海に流せるようにした)、道路のかさ上げと堤防化(写真⑤⑥⑦⑧)、堤防改修作業等を行った。

  1. 大洪水後の対策

①DYKE ( 堤防工事):図①のように、被害を受けた7つの工業団地は、水位3mから6mに対応できるようにした。2年で、バンコク都市周辺を含めかさ上げや、堤防、排水溝などの処理を完工した。

②また保水区域の整備、調整池・耕作計画の変更、ダム管理の調整を行った。図②のように、チャオプラヤー川の上流と下流の貯水、遊水を農水省が決断基準を作り管理をルール化した。またプーミポンダムでは、乾季の水不足と雨季の洪水対策、更に水管理のルールをつくり、中央で管理(農水省は3000百万mまでで、それ以上は大臣、3500百万m以上は首相権限で、毎年8月に貯水・放水量を決定)するようにした。結果として、2017年は2011年の雨量と同じであったが、バンコクでの洪水は防げている。

③スマート水処理センター(王立灌漑局): 2017年6月13日設立(写真⑨)。

④タイ気象局による気象衛星/気象レーダーで、雲の動きと雨量をオープンにした。

⑤また写真⑩のように2017年の干ばつ時におけるポンプ揚排水で対応した。

(次号に続く)

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