泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第90回 『タイの中小企業政策と日系企業』

タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号ではタイの中小政策について、スワンチャイ・ローハワッタナクン中小企業振興庁前長官に最近話していただいたことを要約・紹介させていただきます。元京都大学留学生で、日系企業の社長をされたことがある同・前長官の日本語でのタイ政府の中小企業支援、スタートアップ支援や日本企業への期待などの話は、日系企業に役立ちます。

本日は、このパワーポイント資料を含め、OSMEPとしてタイ政府の中小企業政策と中小企業への協力、ビジョンなどについてお話しします。今月からPTGエナジー社に転職しましたが、OSMEPでの2年間の活動についても紹介させていただきます。

1. OSMEP(新たに作り直す中小企業の未来)

OSMEP(中小企業振興庁)は首相府の下にある政府機関の一つで、中小企業振興法(西暦2000年施行)に基づき設立。OSMEPは中小企業がタイ経済の支柱と確信しています。

OSMEPは、中小企業が強さと持続可能性を踏まえて成長するために、中小企業振興の政策と戦略を策定する主要機関であり、官民両部門の連携システムを調整する中核機関です。 1‐2. OSMEPの役割

1‐2. OSMEPの役割

図にあるように、300万中小企業のため、より効率的にマスタープランを策定・実施、信頼性・効果を重んじ、総合アドバイス、データベース、民間・国内外の協力で振興システムを開発し、中小企業振興を推進しています。円グラフは、真ん中は目的で、統合機能と共に、300万社のデータベースを基に中小企業振興のメカニズムを発揮して、この2年タイの成長に取り組んできました。

2.タイ経済

2‐1. 働きやすさ:2018年度ランキングでは、タイは26位

この図表では働きやすさは26位ですが、今は21位で、外国企業はやり易くなっています。アセアンではシンガポール1位、マレーシア2位の次に来て、ラオス154位、フィリピン95位、インドネシア73位です。

2‐2. 世界で確立されたタイの立場

•タイは、ASEANで2番目に大きな経済

•農業生産高:14位

•製造業生産高:19位

•購買力から見た経済力:20位

•輸出力:23位

•経済力:27位

•サービス生産高:30位

➡タイは、農業国として世界14位、製造業も19位だが、サービス業もアセアン2位と多くなっています。

2‐3. グローバルサプライチェーンにタイが積極的役割

•自動車生産:世界13位

•HDD輸出:世界2位

•コンピュータ機器輸出:世界7位

•ゴムタイヤ輸出:世界5位 ➡上記4つの主要業種が挙げられます。

2-4. タイの地政学的優位性

•世界の経済大国に囲まれた地域

•戦略的な立地

・ASEAN地域のほぼ中心

・ASEANの玄関口

➡ロジスティックの国としてもアセアンの窓口になっています。

2-5. 地域統合の拡大が、 より多くの機会を提供する

•ASEAN経済共同体

•東アジア地域包括的経済連携(RCEP):ASEAN+中国、日本、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド。GDP:22兆4000億USドル(世界のGDPの30.6%)世界最大の自由貿易協定(FTA)。

・市場規模(16ヵ国)

・域内サプライチェーン

・直接投資(地域内・外)

➡RCEPは、16か国35億人で、世界1/2の人口、1/3のGDPを占め、タイはそのゲートウエイです。 (次号に続く)

2020年3月1日掲載

  • Facebook
  • twitter
  • line

関連記事