泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第38回『TNI生と日系企業幹部との懇談』  

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、6月28日に本学で実施したTNI日系企業勉強会の中で行われた、日系企業の代表者33人とTNI生5人の懇談内容を紹介します。学生の簡単な自己紹介の後、日系企業のイメージ、就職などの意見交換がなされました。言葉は日本語を中心に、英語・タイ語(通訳付き)で行い、学生側の率直な意見を聞きました。

5人のTNI生の自己紹介(発言順)

 ワラーリー(W):経営学部日本語・経営学課程(BJ)4卒業。日本語も経営も習えるTNIで勉強し、日本語は高校から勉強してN2(日本語能力試験)に合格しました。父は経営者で、将来父の会社を継ぎたいと思っていますが、10月に新潟の事業創造大学院大学に進学予定です。

ナットスパー(N):経営学部日本語・経営学課程4年生。TNIでは、日本語だけでなく、経営と英語も学べました。日本語はN3を取得しました。将来大学院に行き、TNIで教員になり、学生に教えたいと思っています。

ポンサコーン(PO):情報技術学部情報技術学課程(IT)4年生。プログラミングが好きで、プログラマーになりたいと思っています。

パッタラポン(PA):工学部経営・ロジスティックス工学課程(IE)4年生。工学部でIEとロジスティックを習っています。AEC(アセアン経済共同体)が今年末に成立してタイはハブになるので、将来ロジスティック会社で働きたいと思っています。

スメート(S):経営学部工業経営学課程(IM)4年生。日本語はN4を取得しました。TPS(トヨタ・生産システム)の勉強や診断を学んでいます。工場で働きたいと思っています。

 

企業の方の質問1:上手な日本語に感心した。でもこの中で、製造業で働きたい人が少ないのは残念だが、日本企業について知っていることと、その情報をどこから得たか?

W:まだ決めていませんが、父が中古車の販売業なので、車の会社に勤めたいと思っています。経営の経験を増やすため、日系企業で経験を積みたいと思います。日本の情報は父からもありますが、TNIでいろいろ教えていただきました。

N:この3~5月に日系企業で研修しました。通訳や翻訳、アシスタントの仕事で温かい雰囲気でした。日系企業は時間を守るし、規則などもきちんとしている印象です。大学1年生のとき、日本語と経営を学び、先生になりたいと思いました。

PO:ソフトウエア技術、システム・マネジメント・プログラミング、SEに関心があります。父がまず日系会社に、のち大使館で働きました。父の影響があるのか、日本人は責任感が強く、丁寧という印象です。日本企業は良い会社で、インターネットで会社を調べて就職したいと思います。

PA:日系企業で8週間エアコンの研修を受けました。その結果、日本人は安全を重視するのを理解しました。また人を大事にし、オペレータの行動は、機械より人間に重きを置いています。一生懸命、厳しく働く印象です。私も日系のロジスティック関係で働きたいと思います。

S: 私は、バンコク郊外ミンブリのトリアムウドム高校出身で、日本語の勉強もその時からで、タイの日本企業も多くなっていることを知りました。日本の会社で働きたいと思っています。インターンシップでいろいろな日本の情報を得ました。

 

質問2:TNIで学んで一番良かったことと、TNIで日本と日本人の印象はどう変わったか?

W:以前はほとんど知りませんでしたが、TNIで日本企業について良い情報を学びました。日系企業にコネクションがあり、日系企業就職率が高く、希望者は就職センターに連絡することになります。特にTNIで2年前の短期留学は勉強になりました。日本人は仕事などで厳しいが、優しく教えてくれます。

N:私の専攻は経営学と日本語で、日本語授業で、先生は優しく教えてくれます。TNIに入る前は知りませんでしたが、日本文化を知り、生き方・働き方が変わりました。

PO:入学前は日本語を知りませんでした。でも皆フレンドリーで、先生もフレンドリーで良かったと思います。日本人の行動は手本になり、洗練されていると分かりました。結果として日本語勉強は良かったです。

PA:友情と文化です。言葉は嫌いでしたが、TNIに来て抵抗がなくなりました。日本人のイメージは前から良かったです。卒業はチュラロンコン大など他と比較しても難しいです。

S: 文化、工場のモノづくりとやり方、たゆまぬカイゼン、常に良いものを追求する姿勢、自分の会社を愛する気持ち、従業員との雰囲気。一緒にスパイラルアップ・発展、会社の向上と自分の向上が一体的、精神面での成長が大事などです。タイ人も良いものを持っていますが、日本は素晴らしいです。

質問3:就職(仕事)の決め手を1つ言ってください。

W:好きな仕事と気持ち

N:自分の能力とマッチすること。

PO:①その仕事が好きか嫌いか、②会社の将来性、③福利・厚生

PA:①通勤、②給与、③仕事仲間

S:人間関係、サラリー、仕事の内容を含め総合的に幸福と思える環境で働けるかが大事です。

質問4:日本の終身雇用について、どう思うか?

W:タイ人にとって良いと思います。しかしタイ人の性格はずっと同じ仕事だとつまらなくなります。私は起業したいので、終身雇用は合わないと思います。

N:安定して、一緒にがんばるのは良いことです。

PO:良い面は、安定していることで、弱点はずっと働くと効率的にならないことです。

PA:良い点は安定していて、経済的に社員には良いです。弱点は、モチベーションの維持が難しいことです。

S:会社に良いと思います。つまり同じ人間で、ノウハウが残ります。弱点は雇用保障で、ルーチンワークは非効率になります。

(筆者注:社内異動、ジョブローテーションなどと関連付けての概念はそれ程知識、経験があるとは言えません)

中村氏(YN2-TECH社長、勉強会の講師):TNI出身者は交流機会が多く、ビジョンが開けている一方、やや飽きやすい感じです。HIDA研修や展示会での発表など、彼らの成長を考慮して常にチャレンジする環境を持たせる会社の努力が必要です。

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