泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第45回 『第5期卒業生の日系企業就職等』

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。今回は、2015年11月に行った第5期卒業生の就職等を特集します。TNI卒業生は、他のタイ大学と違い多くは日系企業等に就職します。この5期を含めこれまでの学部生の就職希望者の100%が日系企業等に就職していますが、学部別日系企業等への就職、就職企業の業種、大・中小企業比率、奨学生の進路などをまとめました。

第5期卒業生の進路

  • TNI第5期卒業生の卒業式は、2015年11月15日(日)に行われました。バンコク・ラマ9世公園ラチャモンコンホールで行われ、修士課程卒業生を含む754人が学位を授与されました。以下は、TNI就職センターがまとめた学部卒業生648人の資料を編集したものです。
  • 図1は、第5期学部卒業生648人の進路を表したものです。今季卒業生は2011年6月入学が大半で、多くは2015年4-11月に単位取得した学生です(タイの入学及び卒業は、日本の4月入学-3月卒業とは違います。詳しくはTNIガイド「モノづくり教育―TNIストーリー」13頁をご参照ください)。
  • 希望者の100%(=図の就職活動中0)が、これまでと同様就職しています。
  • 進学は、概して日本の大学院や語学学校就学者です。これまでの追跡調査では、彼らは、進学後日本企業で働く者を含め、日系企業や、日系取引企業に就職する者が多いようです。
  • なお、その他の9%は、Work & Travel(アメリカへの遊学等)や、この11月の時点で連絡が取れなかった者です。

第5期卒業生の進路

図2・表1に見るように、就職した全学部卒業生463人のうち、日系企業就職は174人38%ですが、日系取引企業を含めると249人54%の就職になります。他の大学と違い、TNI卒業生は圧倒的に日系企業等に就職しています。

表1は、全学部とともに、学部別の日系企業等就職を見るものですが、情報技術学部卒業生の日系企業就職は低く、これはタイに日系企業が少なく、就職したくても就職できない現状を表し、それが全体の日系企業就職率の高さを抑えていることが分かります。一方、工学部と経営学部の日系企業就職は、最大比率を占め、多くが日系企業と日系取引企業に就職しています。

表1 学部別日系企業等の就職

 

就職企業 工学

情報技

術学部

経営

学部

全学部

合計

比率
日系企業 73 17 84 174 38%
日系取引企業 22 19 34 75 16%
非日系企業 48 99 67 214 46%
合計 143 135 185 463 100%

就職企業の業種

  • 図3は、第5期生の就職企業の業種を見たもので、製造業、情報・通信業、商業の順になります。
  • 製造業の内訳は、図4に見るように、自動車(部品を含む)、食品・生活、素材、電機・精密機器の順です。

大・中小企業の就職比率

  • 図5は、第5期卒業生の大企業・中小企業等就職を見るものですが、ほぼ半数が大企業と中小企業に就職し、TNI生は必ずしも大企業就職に拘っていないようです(聞き取り調査では、大企業で働くよりも、日本で働きたい、日本で研修を受けたいという意識が高いようです)。

TNI奨学金受給者の就職

  • TNI奨学金は、バンコク日本人商工会議所および会員企業等のご協力の下、タイ全国から意欲あって日・タイ関係に関心を持つ、優秀な学生を対象に一学年50人(全学年では200人)に支給されています。
  • 図6は、TNI奨学金受給者の卒業後の進路を見たもので、図7はこのうち就職30人の日系企業・日系取引企業・非日系企業就職を見たものです。
  • なお図6の未修了者は、日本の交換留学参加のため、2015年11月時点で卒業していない者を示します。
  • 図7に見るように、過半が日系企業・日系取引企業に就職していますが、情報技術学部は、図2同様に日系企業の就職が限定されて、非日系企業に就職する場合が多く、工学部・経営学部での日系企業就職はより高くなります。

 

筆者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

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