世界市場の3分の1
成長する 中国の金型産業(下)

かつては金型王国とされた日本が沈み、中国が圧倒的な世界最大の金型大国になったのは自動車に限っても年3,000万台もの自動車を生産する国になったことが背景。そして生産大国中あ国を支えている基幹産業が金型。  去る6月、上海・虹橋にある国家会展センター(NECC上海)を会場に中国金型工業協会(CDMIA)と上海市国際展覧有限会社が中国最大の金型展(DIE&MOULD CHINA2019=DMC2019)を開催したが、来年の「DMC2020」(2020年6月10日から14日まで今回と同じNECC上海で開催)に合わせ、6月9日から13日まで、国際金型協会(ISTMA=イスタマ、本部ポルトガル)が「DMC 2020」会場であるNECC上海内のインターコンチネンタルホテルを会場としてアジアで初の総会を開催する。国際金型協会を重視するCDMIAではすでに総力でISTMA上海総会の成功に向けて準備を開始した(www.istmaworld2020.com.cn)。  DMCが毎年開催されているNECC上海は世界最大のコンベンションセンター・国際見本市会場で、バンコク国際貿易展示場(BITEC)の10倍規模。今月(11月)5日から10日まで、米中経済摩擦の中で「輸入大国中国」であることを世界に知らせる「国際輸入博覧会(China International Import EXPO)=CIIE2019」がNECC上海のほぼ全スペースを使って開催される。中国の商務省と上海市人民政府が主催者で、日本もJETROが昨年に続いて出展窓口となり「日本パビリオン」を構える。2018年に初めて開催された第1回の「CIIE2018」に次ぐ開催。保護主義に走る米トランプ政権に対してだけでなく、世界に対して、共産党が支配する中国が米国に代わって世界の自由貿易の騎手になったとアピールするつもりだ。そして同会場で2020年の「DMC2020」に合わせて開催する国際金型協会(ISTMA)の総会も中国が進めるモノづくりの高度化を世界に知らせる場として最重視している。

『製造強国』を目指す中国は製造業の基幹産業と言える金型を重視している。中国の金型産業は自動車産業向けが中心だが、電子、OA、家電向けなどでも質の高い金型づくりを目指して技術革新を進めている。具体的には生産システムのデジタル化、ネットワーク化、3D積層造形、レーザー、ロボットなどと組み合わせた自動化を推進、金型製造でのスマートデザイン、クラウド製造体系の構築などで金型加工の高品質化だけでなく効率の改善も同時に進めている。そしてこれを実現するため、欧州などの金型産業との連携、国際的な調達マッチングの強化も図っている。すでに今年の「第19回中国国際金型技術と設備展示会(DIE&MOULD CHINA2019=DMC2019)」に出展した中国の金型・装置などのメーカーの多くが「世界品質である」ことを各ブースでアピールしていた。

中国初の 国際金型協会(ISTMA)総会が 「DMC2020」に合わせ開催

中国金型工業協会(CDMIA)は中国政府の国家民政部の承認団体。社団法人資格を持つ中国金型業界を代表する団体として1984年10月に発足している。中国各地の金型業界団体など現在の団体会員は1280。15の専門委員会と専門家委員会、顧問委員会がある。CDMIAはアジア金型協会連合会(FADMA)の発起団体で国際金型協会(ISTMA)のメンバーでもある。  創立46周年になる国際金型協会(ISTMA)は第16回総会を初めて中国で開く。当初は、欧米だけによる「金型」関係の親睦会からスタートしたISTMAだが、これまでに金型製造で世界を代表する20の特殊工具(金型)及び加工協会で結成する国際団体になっており、参加している金型企業数では8000社以上、年間の金型売上高は700億米ドル以上とするISTMA資料もある。  第16回ISTMA総会の開催プログラムもすでに決まっており、計4日間の会議の初日は2020年の「ISTMA総会」が非公開で開催される。2日目から第16回ISTMA世界大会として第1部は産業発展、第2部は技術革新、第3部は人材育成などをテーマに開催され、上海近郊の金型工場の見学会も開催し、世界の金型産業の最新動向を集中して知り、金型技術の最新の研究成果と技術応用をアピールできる場、金型加工、素材応用、技術設備などで国際交流が図れる場にしたいとCDMIAは考えている。  第16回ISTMA世界大会のテーマは「連互 変革 相補 互恵」。CDMIAでは第16回ISTMA世界大会で各国の経験を披露しあって業界で必要な国際協力関係を構築し、金型業界の進むべき道、グローバルな相互利益の道を探りたいとしている。

ISTMAメンバー国は アジアからは 日本、中国、イランの3か国

ISTMAメンバー国はアジアからは日本、中国、イランの3か国。ISTAMA傘下とも言えるアジア金型協会(FADMA=ファドマ)にはシンガポール、マレーシア、フィリピンなど東南アジア各国の他、台湾も正規メンバーである。  ISTMA総会を成功させるための組織委員会がすでに結成されており、議長にはFADMA現会長で南アフリカ金型産業協会会長であるBob Williamson氏とCDMIA名誉会長である褚克辛(チュー・ケシン)名誉会長が就任した。CDMIAの前会長でアジア金型連盟(FADMA=ファドマ)会長の武兵書会長がISTMA2020年総会の執行議長を務める。同執行副議長にはCDMIA副会長の常世平氏(天津汽車模具株式有限公司董事長)、同副会長の胡作寰氏(深セン市銀宝山新科技株式有限公司副董事長・総裁)、CDMIA秘書長である秦珂氏。第16回ISTMA総会秘書長にCDMIA副秘書長の李玉華氏が就任した。  第16回ISTMA総会の大会指導委員として国際金型協会副会長で同欧州部副会長のJoaquim Menezes氏、国際金型協会副会長でブラジル金型工業協会会長のChristian Dihlmann氏、ISTMA理事で米国金型協会会長のDean Bartles博士、ISTMA理事でドイツ機械工業連盟精密機械部門マネージャーのMarkus Heseding氏、ISTMA秘書長でポルトガル金型工業協会秘書長のManuel Oliveir氏。中国側からはCDMIA副会長の李建軍氏(華中科技大学材料成形及び金型技術 国家重点実験室主任)、同趙震氏(上海交通大学金型CAD国家工程研究中心主任)、余秀慧氏(上海賽科利汽車模具技術応用有限公司総経理)ら6人の副会長、秦珂CDMIA秘書長、同副秘書長の李玉華ら7人が就任している。  ISTMA総会の大会指導部では大会での使用言語は英語とし、発表者には英語による講演と論文提供をお願いしている。中国人の講演者は中国語と英語による論文提供が必要で、大会の場で英語の同時通訳を行う予定。2019年11月30日に講演原稿締め切り、2020年2月末日が外国人代表者のオンライン登録期限にしている。

『一帯一路』での 講演、論文も募集

大会組織委員会では世界各国地域の金型企業、科学研究機関、大学、工業協会、関連政府部門団体等の金型専門家、学者、技術者、上級マネージャー等の参加を募っている。請負団体の選考により論文と講演者を決定する。  講演・論文のテーマについては、第1部は「国際金型産業の報告とシステム研究」で(1)ドイツ、イタリア、日本、米国、中国の金型産業の優位性(2)国際金型業界市場分析(3)IT金型産業チェーンに関する研究報告(4)IT計画と設備システム化産業チェーンの統合(5)国際金型市場ルールと産業クラスターパークのあり方(6)金型標準の国際比較対象と融合(7)企業管理システム、サプライチェーン管理、スマート物流管理研究(8)IoTシステム、ビッグデータ、クラウドコンピューティングアプリケーション、共同設計及び製造プラットフォーム、クラウドソーシング・アウトソーシングのシステム保証。  第2部は「技術革新」で(1)高品質キャビティの金型素材新技術、(2)先端金型加工技術との一体化、生産工程のスマート化(3)3D積層造形金型応用技術と大規模個別カスタマイズ(4)ビッグデータ処理及び品質管理と検査(5)金型自動化、スマート化、仮想化、現代化製造工場(6)CAD/CAM/CAEのスマートデザイン(7)ERP/MES等金型ライフサイクル管理、情報システム技術(8)サプライチェーンマネジメントとカスタマーサービスシステム(9)「インダストリー4.0」での産業統合、中国の「2025」における次世代情報技術と製造業の融合。  第3部は「人材育成」で(1)人材管理評価及び資格評価(2)専門職訓練及び個別カスタマイズ訓練(3)ネットワーク化(金型プロフェッショナルと『一帯一路』(4)国際的な職業教育における相互利益を講演・論文のテーマに決めている。

2019年11月1日掲載

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