製造業100万社のネットワーク構築へ さらなる海外進出目指す

NCネットワーク(本社:東京都台東区、内原康雄社長)は、日本で17,000社以上の会員を持つ工場検索エンジン「エミダス」(https://www.nc-net.or.jp/)や技術系Q&Aサイト「技術の森」(https://www.nc-net.or.jp/mori/)の運営のほか、それらのネットワークを基盤とした調達支援、リサーチサービス、自動化・省力化設備の導入支援などを手掛けている。設立はインターネット黎明期の1998年。インターネットを中心とする工場向けネットワークサービスの展開を日本で初めて開始した企業だ。

2018年4月1日をもって、「月刊U-MACHINE」事業はU-Machine International Co., Ltd.からFactory Network Asia(Thailand)Co., Ltd.(以下、FNAタイランド)に移管されたが、NCネットワークはそのFNAタイランドを傘下に持つ。今後はWEBメディアへの展開促進など、より多くの方へ情報発信できる状態の構築を図る。今回、NCネットワークの内原社長に同社創設の経緯や製造業への思い、将来像などを聞いた。

●NCネットワークおよびエミダス創設のきっかけとは?

1995年、ネットスケープ(Netscape)の日本語版が発売され、日本でもインターネットが活用できるようになりました。当時の僕は、町工場の3代目として、大学を卒業してからの10年間は製造現場で過ごし、その後内原製作所の専務として、金型設計・製作・営業の仕事をしていました。

 

金型製作は、製造業の中でも総合芸術に近い仕事です。200点以上にわたる部品を合わせて、マシニングセンター、ワイヤーカット、放電加工機、NC旋盤など、多くの工作機械を利用して、ものづくりを行っていきます。

中小零細企業が抱える悩みの一つは「営業」です。特に金型屋の受注は、得意先の景気の波に左右され先が見えません。忙しい時期と閑散期が繰り返される中で、閑散期には仕事を探さねばならず、忙しい時には協力企業を使って、納期を間に合わせなければなりません。

例えば協力企業を探さなければならない時、インターネットが普及する前では、組合の先輩や行政を頼り探していました。インターネットが誕生したことで、いろいろな企業の情報がサイトを通じて効率的に検索できるようになる、と考えたのがエミダス創設のきっかけです。

●設立からの20年余りを振り返って

NCネットワークは、そういった中小零細企業同士が、設備や技術を共有して、お互いの仕事を活性化することを目的として作りました。

僕は音楽が趣味ですが、当時、米国のamazon.comや、オークションサイトe-bayを見て、レコードやCDを検索し、実際に購入もしました。そこでわかったことは、インターネットでは、たくさんの商品が集まったサイトに人が集まるということでした。

NCネットワークも「エミダス工場検索エンジン」を作り、たくさんの製造業が集まっていただくことを考え、当時、大田区や葛飾区の仲間を集めて、セミナーを開催しました。無料で登録できるインターネットのサイトに加入を促進しましたが、結果は全然だめでした。50人の製造業来場者で、5人ほどしか加入していただけないこともありました。

そこでまったく別のアプローチを開始しました。FAXを利用して、多くの会員を募り始めたのです。

1998年から1999年9月頃までで、1,000社に会員登録していただきました。そこで一回目のTV放映が民放でありました。さらに2000年5月にNHKが大きくNCネットワークを取り上げていただき、そこから急激に会員が増加し、一カ月で4000社以上の会員になったのです。2002年には、NTTコミュニケーションズと提携し、中小製造業のIT活用をテーマに全国を行脚し、会員を増やしていきました。

現在日本では17,000社、中国20,000社、タイ1,000社、ベトナム700社に会員登録をいただき、多くの方に出会いを提供させていただいています。

●子供の頃から製造業に対して、 どのような思いを抱いてこられたのでしょうか?

僕の幼少時代は、工場の2階に自宅があり、玄関は工場の事務所でした。大田区、葛飾区では多く存在した町工場です。小学2年生の頃、学校から家に帰ると、「じいちゃんが、指を落とした!」ということで大騒ぎになっていました。

しかし翌日、祖父は指に軽く包帯をしてプレス作業を行っていました。ついでにお話するとオヤジも、オヤジの弟も、どこかしら指が欠けていました。昭和のプレス屋の実態です。そんな環境ですから、油の匂いは、今でも懐かしく感じます。

僕が内原製作所に入社した頃には、自動化が進み、危険な作業はほとんどなくなっていました。僕も、自分が操作するプレス機には安全装置を必ず付けて作業するようにしていました。趣味でキーボードをやっていますから、絶対に指は落としたくありませんでした(笑)。

●現状の日本の製造業をどのように見られていますか?

量産品の製造が中国や東南アジアに移り、現在では、試作・開発・少量量産品・設備・金型などが、日本製造業の仕事の中心となっています。日本は高齢化社会となり、社長の平均年齢は65歳というデータもあります。

今後の日本では、東南アジア(タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン)の方々を積極的にエンジニアとして受け入れて、一緒に働く時代になってくると考えます。30年前は、FA(Factory Automation)、CIM(Computer Integrated Manufacturing)と言っていましたが、現在では、IoTということになっています。

しかし、やっていることは一緒です。人が働くべき場所では、人が働き、ロボットや工作機械にできる仕事は自動化する。これをひたすらやっていくだけだと思います。

●タイまたは東南アジアの製造業への期待

ポスト中国として発展をしているタイは、日本にとっては、ベトナム、フィリピン、インドネシアと並ぶ、経済同盟国として、重要な拠点となります。自動車産業だけでなく、ありとあらゆる産業がタイに進出しています。タイが東南アジアの見本となって、東南アジアの発展に寄与すると思います。

今後は東南アジアの高速鉄道網、高速道路網などの発展に伴い、ミャンマー、カンボジア、ラオスなども、タイと経済圏が一緒になっていきます。その中で日系企業の役割は、技術の蓄積をしっかりとしていくことと考えます。

●今後、NCネットワークが目指すものとは?

NCネットワークは、これまで、中国、タイ、ベトナム、米国に進出してきました。今後は、フィリピン、インドネシア、さらに欧州にも進出していきたいですね。

NCネットワークのビジネスモデルは、製造業向けのPR事業としてのエミダス事業、部品加工の技術商社部門としての加工事業、雑誌・広告・商談会などの媒体を企画するメディアリサーチ事業、さらに製造業の省力化・自動化のお手伝いをするスマートファクトリー事業があります。人財事業も間接的に、いろいろお手伝いをさせていただいています。製造業にとって、なくてはならないインフラを目指して、一層努力をしていきます。

農業・漁業・牧畜業・食品・鉄道・電力・インフラ・建築・自動車・家電・弱電・通信・生活雑貨・IT・金融など、すべての業界に対しての効率化を提供していくのが製造業の役割です。

製造業は、人類が共存していくために必要な技術を共有するために存在しています。ある一社が開発した技術は、普及段階で汎用技術となります。その汎用技術を世界中で共有化していくことで、平和で個人個人が尊重される社会が実現していきます。

NCネットワークは、世界の製造業の知識を共有してくために100万社のネットワークを目指しています。

 

 

内原康雄

1964年生まれ、東京都出身。専修大学経営学部卒業。日本中空鋼、吉野電機勤務を経て1990年、内原製作所入社。1991年、同専務取締役就任。1997年NCネットワークグループ発足、1998年エヌシーネットワーク(現・NCネットワーク)設立、代表取締役就任。

  • Facebook
  • twitter
  • line

関連記事