現代の働き方に合ったオフィス構築を提案

28億冊を超える累計販売を誇り、日本人なら多くの人が手にしたことがあるだろうキャンパスノートをはじめ、文具、オフィス家具の製造販売を手掛けるコクヨ。タイのコクヨインターナショナルタイランドは2004年に設立され、オフィス家具、文具の販売に留まらず、移転・改装・新築の際のオフィス内装全般まで手掛けている。今年1月からは大幅改装されたオフィスで業務を開始、前任者に代わって小林祐夫MDも就任し、新たなスタートを切っている。

コクヨ自ら自社オフィスをリニューアル

取材のため会議室に通されると、会議用のテレビが置かれた側を除き、すべてガラス張りになっていることに驚かされた。そして訪問者はあえて下座に案内される。もちろん狙いがある。デスクで働く同社従業員の姿を目の当たりにできるからだ。

小林MDは「言わばライブオフィスです」と語る。ライブオフィスとは、コクヨが自らの製品を使って最適なオフィス空間を具現化し、社外にも公開する、言うなれば生きたショールームだ。日本国内でも同様のオフィスを各地に設けている。「社員が使用しているのはコクヨの家具です。打ち合わせ中にお客様から“あの椅子が良いねえ”となれば、すぐに見てもらうこともできます。そのためガラス張りにして、会議室もあえてオフィスの真ん中に置きました」と小林MDは話す。チーフデザイナーの藤井 智芳氏も「以前からショールームはありましたが、スペースが限られていました。それなら全体をショールーム化して、お客様にどこを見てもらっても良いようにしました」と狙いを話す。確かにインタビュー中も、パソコンと睨めっこしたり、外回りの準備をするスタッフの姿が垣間見えた。顧客からすれば、カタログを見ているだけではわからない、社員がそれらの家具を実際に使用している現場を見ることができ、より具体的なイメージをつかむことに役立つ。

昨今の情報技術の進化による働き方の変化にも合わせた構造になっている。まず営業職のメンバーの個別の机をなくした。彼らは出社すると、ノートパソコンや書類などが入った各自のモバイルバッグを収納庫から持ち出し、その日の仕事内容に合わせて座る場所を選ぶ。個別の机の代わりに、簡単な打ち合わせなどが出来るフリースペースをいくつも設けた。メール一本で連絡が済んでしまう時代だからこそ、よりリアルなコミュニケーションが図れるようにした。

書類も大幅に削減した。各自で持っていたカタログやサンプルは共有化し、昔からただ保管されていた資料なども処分。これらはタイ人従業員が率先して行っていった。「僕らの想定以上でした。心配になるくらい減らしていった」(藤井氏)と日本人も驚くほどだった。帰宅時には机の上にもなるべく書類を残さないようにしている。それらの結果、以前と面積は変わらないのに「広くなった」との反響が多々寄せられた。

改装後、社員の服装にも変化が表れたという。オフィスが改装されたことに加え、普段顧客と接する機会がない内勤のメンバーも顧客と接する機会が増え、意識の変化が生まれたのだ。

食堂リニューアルが工場の生産性に影響

タイには自動車、電機産業を中心に産業集積が進んでおり、古くから多くの日系企業が進出している。コクヨでは、それら製造業関連企業のオフィスや食堂、休憩室、会議室など、生産現場以外のスペースのリニューアルもサポートしている。

タイに長く進出している企業の中には、当初のままの施設を使用しているところも多い。その中で、従業員にとって魅力的な職場をいかに実現するかを重要視する企業も増えてきている。職場環境が従業員の定着率にも直結してくるからだ。従業員が長く働いてくれれば、それだけノウハウも蓄積できる。それは品質にも影響する。

メーカーにとって大きな割合を占めるのは、生産ラインで働く従業員。彼らにとって食堂や休憩室は疲れた体を休め、仕事への英気を養う貴重なスペースでもある。「機械加工を行う企業の食堂をリニューアルしたのですが、お昼になると近隣にある同社の別の工場からも従業員がわざわざ食べに来るようになりました。リニューアル後も食事の中身自体は変わっていないのですが、私から見ても以前よりおいしく見えますね」(藤井氏)。

それだけではない。別の企業からは、食堂をリニューアル後に工場の生産性が上がったとの声もあるという。「毎日の生産計画の120%ほどを達成するようになったそうです」(小林MD)。壁の色一つ変わるだけで、人間の意識に影響を与える。会社への印象も変化する。整った環境でよりリフレッシュできれば、仕事の効率、モチベーションは一層高まる。

会議室や応接室の改装は対外的なイメージの向上にもつながる。もちろん管理部門の社員にとってはオフィススペースも重要となる。コクヨは日本でのオフィス構築の実績が豊富。ヒアリングの上、具体的な事例も紹介しながら顧客のイメージを的確に導き出し、その企業の働き方に合った空間を提案する。

東京出身の小林MDはタイに赴任する前は、中国の上海や広州にのべ13年駐在。それも自ら希望しての海外赴任だった。「当時、お客様と一緒に中国の上海へ出張で行ったのですが、すごい建設ラッシュでした。ビジネスチャンスが一杯ある。こんな環境で仕事をしてみたい、自分を試してみたいと思いました。あの時、上海に行かなければ、手を挙げていなかったと思います」と小林MDは振り返る。文字通り文化の違いに苦しみながら、立ち上がったばかりの中国法人を拡大させていった。藤井氏も海外勤務を希望し、香港に約10年駐在と海外経験が豊富。「どうすれば現地の人が喜ぶかをずっと考えてきました」とは小林MDの弁だが、だからこそコクヨにしかできない提案がある。そして、事業に込める思いがある。「日本文化の良いところを生かしながら、タイにもっと社会貢献できる会社にしたい。現地に根付くにはそれが重要です。タイに居る以上、コクヨはタイに居てもらわないと困ると思ってもらえればうれしい」(小林MD)、「僕たちがタイに居られる時間は限られているので、その間に、コクヨの考え方を根付かせられるようにしたい」(藤井)。そんな両氏に引っ張られ、コクヨは今日もタイの職場環境向上に取り組む。

会社情報

会社名 KOKUYO INTERNATIONAL(THAILAND)CO., LTD.
住所 999/9 The Offices at Central World 9th Floor, Unit 912, Rama I Rd., Pathumwan, Bangkok 10330, Thailand
お問い合わせ先
担当者名 松野国明 E-mail:matsuno@kokuyo.com 大城裕香 E-mail:yuka_oki@kokuyo.com
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