光洋機械工業がタイで工作機械事業拡大 研削盤の状態診断、オーバーホールも現地で

JTEKTグループ傘下にあって、センタレス研削盤や平面研削盤、各種専用研削盤などの総合研削盤メーカーとして知られ、同分野ではシェアNo.1を誇る光洋機械工業。タイでは、自動車のインターミディエートシャフトなどを生産するKoyo Joint(Thailand)(以下、KJT)内で、2011年から研削盤関連の事業を本格スタートした。当時、タイの納入台数が800台以上に達し、拠点の必要性が高まっていたのだ。現在は、研削盤の販売、サービス、改造、修理、オーバーホールに対応。2017年1月には、KJTでは初となる工作機械部門出身の前野泰一社長が就任し、より一層、研削盤事業に力を注ぐ体制を固めている。次の一手をどのように考えているのか、同社の展望を聞いた。

研削盤の健康状態を測定 数値による“見える化”

ミクロン単位の精度でコントロールされ、製品の仕上げ工程に使われる研削盤。万が一、機械が止まれば、生産計画に大きく影響する可能性もある。自動車や家電が在庫を削減する中、その影響は販売にも及びかねない。“故障後すぐに駆け付ける”では遅いのだ。

KJTがタイで進めている研削盤のアフターサービスは、言わば一歩進んだ予防保全と言える。状態をただ目で見てチェックするのではない。前野社長就任後に新たに導入した測定機を用いて、静的精度などすべての動きを確認。その研削盤の“健康状態”を数値として見える状態にするのだ。そうすれば顧客は、機械に問題はないのか、なぜ修理が必要なのか、より具体的なイメージをつかむことが出来る。前野社長は「機械が正常に動いているか、精度が維持できているか、そういう部分を診断しています。医師も患者がどんな状態なのか、何の病気に罹ったかなどをカルテに記録していきます。それと同じようなことを機械でも進めて行けば、より状況が見えてきて、お客様も安心していただけるのでは」と狙いを話す。

本格的なメンテナンスが必要となれば、オーバーホールとなる。同社では2015年からタイでメーカー保証を付けた研削盤オーバーホールおよび使用状況によるカスタマイズ提案を行っている。以前は日本で対応していたが、タイで行うことでコストと納期の削減に成功した。現地なら機械の状況も随時確認できる。OEMだが、光洋の技術を伝え、本社の認定も受けたという。

ドル高を是正するために結ばれた1985年のプラザ合意から、自動車メーカーらの海外進出が本格化。以降、ティア2、ティア3へとその動きは広がってきた。KJTのマシーンセールス部門の西岡康一GMは「それだけ時間が経つと工作機械の設備自体は悲鳴を上げているはず。その中でオーバーホールの依頼は必ずある」と見る。2017年の時点で光洋のタイでの納入実績は約900台に達している。両頭平面研削盤が5割、センタレス研削盤が3割ほどを占める。さらなるキャパシティーの拡大のため、自社でのオーバーホールもスタートさせる予定だ。今後、KJTのバンポー工場拡張時に専用スペースを設ける計画もある。「簡単なものから始めて、スピンドルなど中心部品のオーバーホールだけでも内製化できれば。2018年、19年までにはOEMと合わせて年40アイテムを手がけられるようにしたい」(西岡GM)。

使いやすさをさらに追求した 両頭平面研削盤「KVD350」

光洋機械工業は光洋精工の工機部門を淵源とし、蓄積したベアリング研削のノウハウから、研削盤の豊富なラインナップを構えるまでになった。タイで安心してメンテナンスを任せられるとなれば、新規の導入につながる可能性がある。光洋機械工業では、高い剛性と精度で世界的にベストセラーとなった両頭平面研削盤「KVDシリーズ」の主力「KVD300」の後継機として、使いやすさ、機能性、性能安定性などをさらに追求した「KVD350」を販売している。「KVD350」は機械側面からのといし、ツルア交換が可能となり、段取り性、操作性が大幅に向上。小ロット多品種の製造でも、高い生産性を発揮する。オプションとして、チルト量監視による段取りの数値化、下といし位置合わせの自動化も可能。また、新開発の高剛性ビルトインといしスピンドル搭載。といし軸のさらなる高剛性化に成功した。高速ローディング装置も新たに開発した。さらにクーラントパン標準装備によるベッドへの断熱を図り、ボックス構造のベッド形状によって高剛性と熱的平衡性を向上させた。ほか、流水路のフラット化と大型排水口でスラッジ堆積防止。制御盤の背面配置で機械幅のコンパクト化も行っている。

わずかながらタイの新車販売も回復の兆しが見えてきたとはいえ、かつての年間140万台に至る勢いが再び訪れると見る向きは少ない。一方で、家電、特にコンプレッサーは安定した需要があるという。「4割から5割は自動車関係に納入しており、自動車関連の設備投資に左右されやすい」(西岡GM)。だからこそ、日本と同等の手厚いアフターサービスを武器に顧客からの地道な信頼獲得を目指す。前野社長は「目標としては、オーバーホールも含めて、月一台は受注していきたい。タイには既に900台ほど入っているので、それらを診断してお客様に喜んでいただき、受注に繋げていきたい」と意気込む。西岡GMも「品質向上のための更新という面で功を奏しています。そこまで面倒を見られるのなら光洋を中心に更新していこうじゃないか、というお客様の声があるのも事実です」と語る。

 

前野社長は1973年の入社以来、工作機械の設計に延べ30年以上携わり、「はじめのころは油圧で動かしていた。それが電気に代わり、NCとなり、メカよりも制御の方が難しくなっている」と機械の進化をつぶさに見てきた。工作機械メカトロ事業部の事業部長、役員を経て、2017年にタイに赴任。先述した通り、自動車部品を主としたKJTにあって、初の工作機械部門出身の社長になった。「自動車部品の会社に行くことになって驚きました。本社の社長に理由を尋ねると、タイで工作機械をもっと広げてほしい、と言われました」と大きな役割を担っての就任だった。工作機械事業は前野社長含めて7人の少数精鋭。「自分が指示したことは、自分で確認することをモットーにしています。言ったまま放っておくのではなく、現地に行って自分の目で見る。あとはいかにタイ人の心をつかむかを一生懸命考えています」。

一方、西岡GMは日本で設計や調達などを担当。2011年からタイでの工作機械事業の立ち上げを任された。実は、前野社長はかつての上司にあたり、コンビネーションは抜群だ。西岡GMは「一番力を入れないといけないのはサービス系のグループ。自動車のような〇年間サービスパックのようなアイデアも考えています。見える化診断で安心をお客様に呼び、修理、部品、そして新規の拡販に繋げたい」と構想する。

タイでの事業拡大を着々と進める光洋機械工業。総合研削盤メーカーとして、タイのモノづくりにさらなる貢献を目指す。

会社情報

会社名 Koyo Machine Industries Co., Ltd.
住所 172/2 Moo12, T.Bangwua, A.Bangpakong, Chachoengsao 24180
お問い合わせ先 Tel:038-533-103~10 Fax:038-533-191
担当者名 西岡 Mobile:089-244-4514 E-mail:nishioka@koyo.co.th    Warangkana Mobile:081-682-7219 E-mail:warangkana@koyo.co.th
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